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第四十三話 真祖と現人神、仲直りする。






「ふぃ〜さっぱりしたわぁ」


 白夜は朝風呂を終え、疲れがすっかり吹き飛んでいた。


「……さて、あの二人娘を拾いに行くか」


 貴賓室を出て、先ほど放り出したあの二人――コウハクとイルミナを拾いに行くことにする。

 扉をガチャリと開き、廊下を見てみると――


「……また貴女のせいで、主人さまに嫌われました……」


 と言って、体育座りして落ち込んでいるコウハクと


「あはは……今回はそうかも。えっと……ごめんね?」


 と言って、隣で体育座りして申し訳なさそうに謝るイルミナが居た。


「――っ! そうかもじゃないですよ! そうかもじゃあっ! これはわたくしにとって、死活問題なんですよっ!?」

「はいはい。嫌ってないから。二人共、さっさと貴賓室に戻っておいで」


 白夜は貴賓室から姿をひょっこりと現し、二人にそう語りかけ、貴賓室へと戻る。

 するとコウハクが即座に隣にやってきた。――はやい。


「主人さまぁ!」

「はいはい。もう全部許してるから。いつもみたいに元気になりな」


 取り敢えずコウハクに慰めの言葉をかけておく。


「……さて、イルミナもこっちに来な。話があるんだろ?」


 入り口付近でもじもじと固まっているイルミナに対し、白夜は問いかける。


「……うん」

「……じゃ、こっち来て話そう。ほら、座って座って」


 白夜はそう言って、自分の座っているソファの対面にイルミナを座らせる。

 白夜の横にはすでにコウハクが座っていた。――すごくはやい。


「……さて、じゃあ俺から――」

「ごめんなさいっ!」


 白夜が先に謝ろうと思ったら、イルミナの方から頭を下げ、謝ってきた。


「あたし……お父さんが亡くなって、冷静さを失ってて……ハクヤさんに酷いことして、酷いこと言った。……本当にごめんなさい」


 イルミナは白夜に対して頭を下げ続ける。


「……顔を上げてくれイルミナ。悪いのは俺だ。決断を急ぎすぎた。普通に考えると、すぐに仲間やイルエスの亡骸を跡形もなく消滅させるなんて、とてつもなく辛いことだってのに……」


 白夜はイルミナに頭を下げ――


「本当に、悪かった」


 そう一言謝罪した。


「いやいやあたしが」

「いやいや俺が」

「いやいやいやあたしが」

「いやいやいや俺が」


 などといつまでも続きそうな問答を繰り返していると、どちらともなく「ふふっ」と笑ってしまう。


「……じゃあ、こうしよう。今回はお互いに悪い所があったから、それを許し合うことでチャラにしないか?」


 白夜はそう提案する。


「……そうね。そうしましょっか」


 イルミナも提案を飲んでくれた。


「――ただ、あたしはハクヤさんのこと、ビンタしちゃった……。だから、それをチャラにするためにも、あたしを殴って!」


 そう言って、イルミナがすっと立ち上がる。


「えっ? い、いや、いいってあれくらい。体はあんまし痛くなかったし」

「『体は』ってことは、ハクヤさんの心を傷つけてしまったんでしょ?」


(――ぐっ、こいつ、なかなか痛い所を突いてくるじゃないか)


 白夜はウグッと顔を歪めてしまう。


「……ハクヤさんも、案外分かりやすいんだね」


 イルミナは顔を指差してクスクスと笑う。――失態だ。


「……はぁ。わかったよ。そんじゃこっち来て、歯を食いしばりな」


 白夜はソファから少し離れ、イルミナにこちらに来るよう促す。


「う、うん……分かった。覚悟は出来てるから、思いっきりやって」


 イルミナがゴクリと唾を飲み、白夜の前にまでやって来る。


「……それじゃあ、行くぞ?」


 白夜のその言葉とともに、イルミナが目を瞑り、下方向に俯き、歯を食いしばる。


 白夜はイルミナに対して右拳を向け、思いっきり――






 ぽふり。






 ――イルミナのことを殴りはせず、頭に手を置く。


「……へ……?」


 イルミナは何が起こっているのか分からないというような表情をしている。


「どした?」


 白夜は構わず頭をスリスリと撫でる。


「な、なんで、頭撫でて――」

「あらら〜? 吸血鬼の真祖さんには、俺の全力が頭を撫でるくらいにしか思えないか〜。辛いなぁ」


 そう言って揶揄からかい、ニヤリといたずらな笑みを向ける。


「――っ! も、もうっ! 揶揄からかわないでよっ!」

「あはは。ごめんごめん」


 白夜は謝罪の言葉を述べ、それと同時に――


「またいつでも、撫でてやるよ」


 と言って、イルミナの頭を撫でながら微笑みかける。

 イルミナは最初に驚き、次に焦り、それから――喜びの表情を浮かべる。


「……あぁ、お前を殴るのは勘弁な? だったら、殴られた方がマシだ」


 白夜はまた、ニヤリといたずらな笑みを浮かべると――


「――っ! あ〜もう! ハクヤさんはずるい!」


 そう言って、イルミナは涙を流しながら抱きついて来た。


「ははは。何を言うか。俺ほど善良な一般市民はなかなか居ないぞ?」

「ハクヤさんみたいな一般市民なんていないよ!」


 しかし、コウハクと違って背が高いから若干苦しい。――そしてイルミナの立派なモノも、諸に体に当たっている。


(ふむ……なるほど。素晴らしい感触だな)


 白夜がそうよこしまな考えをしていると――


「主人さま……? 何やら、お楽しみのようですが……?」


 と、冷え切った視線を向けて来るコウハクの姿が。


「いやそんなことはないぞ? 決してコウハクと違って、立派なモノを持っているな〜などとは考えていないぞ?」


 白夜は真顔でそう言い切った。


「――っ! やはり……大きい方が良いと言うのですか!? わたくしでは満足していただけないのですか!?」


 コウハクは心底悔しそうに言葉を切れ切れに発し、白夜を見つめる。


(……何言ってんだ? こいつ)


「――? 何の話?」


 イルミナは白夜に抱きつきながらコウハクに顔を向け、不思議そうに顔を傾げて問いかける。


「貴女……分からないんですか……? 貴女のその無駄に色々大きい体で、主人さまを誘惑しようったって、そうはいきませんからっ!」


 コウハクからゴゴゴというような凄みのある気配を感じる。


(すごいな。どうやってんの? それ)


「誘惑って……ハッ! ち、違うの! これはそういうつもりじゃ……ちょ、ちょっと! 離れてよハクヤさん!」

「え? 俺? お前から抱きついて来たんだろうが。お前が離れろよ」

「そうです! 主人さまはわたくしを抱きしめたいんです! 早く離れなさい!」

「いや、別にそう思ってないけど……」

「――なっ!? そ、そんな……! わたくしよりも、やはりその娘の方が良いというのですかっ!?」

「だからなんでそうなるの……? イルミナ。そろそろ離れろ。コウハクがうるさいから」

「――へっ!? あ、うん……分かった……」

「ちょっと貴女! 何名残惜しそうにしてるんですか! ダメですよ! もう貴女は今後、未来永劫、金輪際、主人さまに接触することを禁じますから!」

「――ちょっ!? ちょっとお!? それは幾ら何でも酷いんじゃないの!?」

「じゃあ俺から接触する分には問題ないな」


 白夜はそう言ってイルミナを引き剥がし、頭を撫でておく。


「――あっ……えへへ」


 イルミナは惚けている。

 よっぽどお気に召されたようだ。――イルエスにも散々こうやってもらっていたのだろうか。


「あぁっ!? 貴女という女は――」

「はいはい。お前もやっとこうな〜」


 白夜はコウハクもこっちに来るようにとちょいちょい手招きする。――手招きしてから来るスピードが尋常じゃなかった。

 白夜は思わず身構えた。

 しかし、衝突することはなく白夜の目の前でピタリと止まったので、恐る恐る頭を撫でる。


「ふあぁ……本日初の頭撫でです〜」


 さっきまでの喧騒がどこに言ったやら、二人はようやく落ち着いてくれた。


(やれやれ。困った娘達だな)


 白夜はまた二人娘の父親気分となり、――元に戻れて良かった――と、心底喜ぶのであった。






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