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第四十二話 現人神幼女、白状する。






「主人さま! イルミナさんにお手紙渡してきました!」


 貴賓室の部屋のドアを開き、コウハクが仕事の完了報告をしてくる。


「お〜。ありがとなコウハク。じゃ、俺は風呂入ってくるから」


 そう言って、白夜はすぐに風呂場に行こうとする。

 すると――


「――っ!? そ、そんな! ご褒美をいただけるのでは無いのですか!?」


 と言って、ガーンと落胆の表情を浮かべているコウハク。


(は? ご褒美? そんなもん、約束したっけ……?)


「ご褒美? なんのことだ?」


 白夜がそう尋ねると、コウハクの表情は更に暗くなる。


「……先ほど、考えていただけると、おっしゃったではないですか……」

「考える? 何のことだ?」


(なんだ……? 本当に分からないぞ?)


「……朝に……わたくしの体を……撫でてくださったでは……ないですか……」

「体を撫で……あぁ! くすぐったことか?」

「そうです! それです!」


 コウハクはキラキラとした期待の眼差しを白夜に対して向けている。


(なんてこった……あれは撫でるとか、ご褒美とかじゃなくて、お仕置きのつもりだったんだが……こいつにとっちゃご褒美だったのか? 失敗したな……)


「あれはご褒美じゃなくて罰。お前がなかなか目を覚まさないから、ちょいと懲らしめただけだ。今回お前は良いことをした。よって、罰としてお前のことをくすぐったりはしないぞ?」


 白夜がきっぱりそう宣言する。

 すると、コウハクは口をあんぐりと開いたかと思うと、次に悲痛な表情を浮かべて目のハイライトを無くし、しばらく経つと何かに気付いたかのようにハッとした表情となり、今は何やらニヤリと笑みを浮かべている。


(あ、こいつまさか……)


「ちなみに、今お前が『何か悪いことしちゃおうかな〜』って考えている場合、俺はお前の頭を一生撫でないという罰を与えるつもりなんだが……良いな?」

「――っ!?」


 コウハクが流石にそれはまずいと言う表情を顔に浮かばせて、ブルブルガクガクと震えている。――何もかも分かりやすい。


「……も」

「も?」






 申し訳ございませんでしたああああああああ!






 コウハクが大きな声でそう謝罪し、一瞬で地面に頭を擦り付け、土下座する。


「あ、主人さまの施しが、つい極上だったもので……わたくし、罰とも気づかずに、つい自分勝手に、ご褒美かと思ってしまいましたああああ!」

「あぁ……うん」


 白夜はコウハクの豹変ぶりに若干引きながらも、冷静に対応する。


「ど、どうかお許しを! わたくし、つい魔が差してしまい、少し悪いことをして、お情けを頂こうかなどと考えてしまいましたああああ!」

「あぁ……そう」


(うわぁ……)


「い、一生頭を撫でてもらえないなんて、辛すぎます! わたくし、寂しくて死んでしまいます! せめて一週間……い、いや、一日で!」


(罰の期間短くなってるじゃん……君それ、普通逆じゃない? 交渉術って知ってる?)


 白夜はコウハクの暴走ぶりを見て、なぜか自分が悪いことをしているような気分になってしまい――


「……はぁ。はいはい、分かったよ。さっきのご褒美も兼ねて、今回のことは不問にしてやろう」


 と言ってコウハクのことを許すと――


「ははぁっ! ありがたき幸せにございます!」


 と、一瞬顔を上げて宣言し、すぐにまた頭をブンと振りながら下げる。


「……おう。そうか」


(……いつの時代のセリフだよ)


 白夜はドッと一気に疲れたので、今度こそ朝風呂を浴びて疲れを取ろうとすると――


 ガチャ。


「あ、あの〜。なんだかものすごい喧騒が聞こえてきたんだけど、何かあったの――」


 貴賓室の入り口。そこにはイルミナの姿があった。


(……君、ノックすらしなかったね?)


「って! コウハク! 何してるの!?」


 イルミナが見つめる先には――コウハクの土下座姿。


(うん。普通そう思うよね)


「あ、貴女っ! またこのようなタイミングで――」

「ハクヤさんっ! もしもコウハクのこと怒ってるなら……やめて上げて! 悪いのは全部っ! あたしなんだから!」


(……おいおい、何か勘違いしてるぞこの子……嫌な予感――) 


「はぁ!? 何言ってるんですか貴女! 悪いのはわたくしなんです! わたくしが主人さまに対してよこしまな考えをしてしまったがために、このようなことになっているのです! 貴女には関係ありません!」

よこしまな考えって……ハッ!? ま、また貴女達、そんなことを……!」

「またとはなんですか!? またとは! わたくしは主人さまに対してよこしまな考えを抱いたことは、今まで数え切れるくらいにしかありません! これからはもうしないように気をつけますし!」

「えぇっ!? 数えられるくらいにはしてるの――」


 ガッ!


 白夜はコウハクとイルミナの手を引き、貴賓室の前にポイと放り投げ、扉を閉めた。

 二回目ともなると手慣れたものだ。

 一言も発さず、発させず、まるで水が川に流れて行くかの如く、ごく自然的動作で行うことができた。


 白夜は今度こそ――今度こそ、朝風呂を楽しみに行くのであった。






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