第四話 転生者一行、ステータス確認する。
(さて……ステータスの確認でもしてみるかね)
お互いに軽い自己紹介を終えた後、白夜はまず各々のステータス確認が出来ないかと考えていた。
というのも、自分のステータスは体感的に何となく感じることが出来るが、他人のものは聞いてみないと分かりそうもない。
異世界だからと言って、雰囲気やオーラ、ユーザーインターフェイスで相手の強さが分かる感じでは無さそうだ。
「ゲームとは違うのか〜ちょっと残念」と白夜は思う。
「君のステータスみたいなものは分かるか? どのくらいの強さなのかとか、何が出来るのかとか、色々と知りたいんだが……」
「はい! わたくしのスキル<解析>を使用すれば、主人さまと共有が可能になります!」
(なんと! 便利なスキルじゃないか! だが……)
スキルを使用すると分かるらしい。
この世界には白夜の持つスキルの他にも別のスキルがあり、この発光体のように、スキル持ちもまた別に居ると言うことなのだろう。
白夜のみが特殊ということではないらしい。
「スキルを持っているからと言って無双もできないか〜これも少し残念」と白夜は思う。
「……よし。じゃあ俺に君のステータスを見せてくれ」
「かしこまりました!」
そう言うと、発光体がこちらへとふわふわ近付いてくる。
「恐れ多いのですが……主人さまのお体に触れさせてもらってもよろしいでしょうか? 情報の共有には、接触が必要でして……」
発光体がそう問いかける。
「あぁ、構わんよ。じゃあ手の平を上に向けておくから、ここに乗ってくれ」
「かしこまりました! では、失礼します!」
白夜は右手の手の平を上へと向ける。
すると、その上に発光体がやってきたので、ふわっと乗せてあげることにする。
(……ふむ。ただの発光体と思いきやふわふわと柔らかい。この感触生きてた頃に体験したような……なんだっけな? ふわふわで……丸っこくて……柔らかい……あっ、うさぎのしっぽだ。うさぎみたいな動物とかこの世界に居るのかな? 居るなら是非もふりたいなぁ。もふもふ……うへへ……)
そう思っていると、白夜は無意識の内に右手をワキワキと数度発光体を握ったまま開閉してしまっていた。
「ひゃうっ!?」
「――あ!? ごめん! 大丈夫か!?」
(いかん! 潰してしまったか!?)
「は、はい〜。大丈夫です。申し訳ございません。少しびっくりしてしまいました」
「あ、あぁ。謝るのはこっちの方だ。ほんとごめんな。ついうさぎを愛でるかのようにもふってしまって……申し訳ない」
「――え!? め、愛でるだなんて……そんな……」
発光体が赤く光っている。
それと妙に温度も熱くなっている気がする。
――どうやら怒らせてしまったのかもしれない。
(初対面だというのに怒らせるとは……いかん。猛反省だなこれは……)
「ほんとごめんな……。そ、それで、スキルは確認出来そうか?」
「……えっ? あ! いえいえ! 大丈夫です! それでは共有しますね!」
発光体の色と温度が正常に戻り、スキルを発動したのだろう。
二人の目の前に、突如ブゥンとスクリーンに映し出したかのような映像が映る。
(――何これ!? すげぇ! ゲームみてえ!)
白夜は先ほど少し残念と思っていた事がすぐさま叶ってしまい、テンションをぶち上げる。
「おぉ!? すごいな! これは!」
その光景に対してつい、目をキラキラさせながら精霊に対して絶賛する。
「――えっ? そ、そんなにすごいことでしょうか?」
「めちゃくちゃすごいじゃないか! お前やるな!」
「え、えへへ……。ありがとうございます!」
(現実世界で言うと、ARだろうか。スマホやメガネ無しで見られるとは……異世界だとこれが普通なのか? すごいな)
白夜はしばらく物思いにふけ込んでいた。
(……ハッ!? いかんいかん。ステータス確認をせねば)
慌てて本来の目的を思い出し、空中に浮かぶ画面を確認する。
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名前:賢者の精霊
性別:女性
年齢:十二歳
種族:精霊
ステータス
LV:10
HP:10
PW:10
MP:20
DF:10
IN:60
SA:5
種族特性
<飲食不要>
<光属性魔法適性>
保有スキル
ハイパースキル<解析>
触れたものを解析する
解析結果を触れた者と共有できる
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画面にはこのようなデータが表示されていた。
(ほほう。ハイパースキル<解析>。かっこいい。触れたものを解析して、結果を誰かと共有することも可能。探索係として、これはいい人選だ。いや、精霊選か? アースもたまにはやるじゃん)
ステータスパラメータは体力、筋力、魔力、防御力、知力、特殊能力の6つだろう。
異世界ではこの六つが個人の能力を示すものなのだろうか。
(MP――魔力。ロマンがあるよな〜。ようやく俺の左腕に封印されし、力が解き放たれるときが来たかもしれん。フフフ。テンション上がって来た!)
しかし、ふと疑問が浮かんでくる。
(……ん? よく見ると、俺のステータスよりも高くね? 詳しくは分からんが……体感的にそう感じる。あれ? この子意外と強いの? 俺の封印されし左腕より? それとも単純に俺が弱いのか……)
白夜は左腕をまだ封印しておくことにするのであった。
――まだ本気を出すべき時じゃない。
「……ついでに俺の解析結果も出してもらっていいか?」
(俺のステータスも、視覚的に確認しておく必要があるだろう……)
「はい! かしこまりました!」
そうすると、隣に別画面が出て来て、情報を映し出す。
(ほんと便利だなこれ。二窓構成だ。いや、デュアルモニターか? まぁいい。俺のステータスはっと……)
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名前:紅 白夜
性別:男性
年齢:十八歳
種族:現人神
ステータス
LV:1
HP:5
PW:5
MP:5
DF:5
IN:50
SA:25
種族特性
<飲食不要>
<天使系魔法適性>
<自動回復(中)>
保有スキル
マスタースキル<削除>
認識したものを削除する。一日一回のみ使用可能。
マスタースキル<創造>
理解したものを創造する。一日一回のみ使用可能。
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(うわ、俺のレベル、低すぎ!? まぁしょうがないか。転生したばっかりなんだし。――ってちょっと待て待て待て待て! 種族『現人神』ってなんだよ!? 俺神様になっちゃってる!? うっそだろ……アースの奴、とんだ魔改造施しやがって……! 俺、生きとし生けるもの導けないぞ! 導けるのは精々交番までの距離だけだ! ……あれ、交番ってどこだっけ? てかここどこ? 誰か、俺を導いてくれ……)
――落ち着け俺。
ここは異世界だ。
(……もう種族について考えるのはやめよう。あのボケ……覚えてろよ。てか、ステータス全体的にひっくいな。発光体に勝ってるのSAだけか。俺ちゃんと生きれんの? この世界で……)
あと種族特性により、飲食不要となったらしい。
自動回復(中)に天使系魔法適性というのも付いている。
(これは……しかし案外当たり種族なのかもしれんな。ダメージ受けても回復されるっぽいし。どれほどのダメージなら回復できるのか分からんが……。あと、天使系魔法適性。これはなかなかワクワクするな。適正ってことは上手く使えるってことだよな? 天使系ってのがこれまたよく分からんが……)
スキルは白夜の思った通りだった。
一日一回だけというのがネックだが、十分チート能力の範疇だろう。
――実際使用しないと、どんな感じかまた分からないのだが。
「さすがは主人さまです!」
白夜がステータス確認をしながら考え込んでいると、発光体がいきなり大声で話しかけて来た。
白夜はつい体をビクつかせる。
「これほどの力をお持ちだとは……! わたくし、感激で胸がいっぱいです!」
発光体はピカピカと体を光らせながら、大きな声で絶賛する。
(――君の方がステータス高いじゃん。どこに感激する要素があるんだ? 俺分からないんだけど……しかもまたなんかキラキラし出したぞこいつ。見え見えのお世辞言いやがって……慰めはやめてくれ……あ、泣きそう……)
「そ、そうか……嬉しいな。ハハハ……」
白夜は力なく笑う。
「はい! ありがとうございます!」
何やら嬉しそうにする発光体。
(うーん。悪い子には思えないが……)
「もしかするとこの子は笑顔で毒を吐くタイプなのかもしれない」と白夜は勝手に不安に思う。
(……大丈夫かな。俺とこいつ)
白夜は先行きの不安を感じながらも、ステータス画面をじっと見つめるのであった。