第三十三話 吸血鬼の娘、種族変更する。
「それじゃあさっそく本題に入ろうか。コウハク、今まで<全知>で得て来た種族を表示してくれ」
白夜はコウハクに指示を出す。コウハクは「かしこまりました!」と言って、種族情報をスクリーン状に表示させる。
そこには『人間』、『吸血鬼』、『現人神』、『精霊』、『吸血鬼の王』、『吸血鬼の女王』の六つが表示された。
「ありがとうコウハク。さてイルミナ。少ないかもしれんが、この中から自分がなりたい種族を選んでくれ」
「わかったわ」
白夜はそう言って選択をイルミナに託す。ちなみに、現在のイルミナのステータスはこうなっている。
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名前:イルミナ・ヴラッド
性別:女性
年齢:十六歳
種族:吸血鬼
ステータス
LV:10
HP:20
PW:20
MP:20
DF:20
IN:30
SA:3
種族特性
<自動回復(小)>
<闇属性魔法適性>
<聖属性耐性弱化>
保有スキル
スーパースキル<吸血鬼>
吸血したものを眷属とする
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レベル10でこれだとすると、INとSA以外の能力値は各々1レベルごとに2ずつ上がっているのだろうか。白夜達『現人神』の上がり幅よりかは幾分も小さそうだ。
種族スキルも心優しいこのお嬢さんには向いていないだろう。――これは改造のやり甲斐がありそうだ。
(強くなりたいと考えるなら、『現人神』を取ってパワーアップだろうか。だけど、イルミナのことだし、母親に憧れて、ここは『吸血鬼の女王』な気がするな〜)
白夜はイルミナが何を選ぶのか予想して楽しみにしていると――
「……ねぇハクヤさん。これって――とかできないかな?」
「……ほう? 面白い」
白夜はイルミナから創作意欲を刺激される言葉を聞き、俄然乗り気になるのであった。
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「それじゃあ、始めるぞ」
白夜はイルミナの要望を全て聞き終え、スキル<創造>を発動していた。
種族変更に必要な情報をコウハクからインプットし、スキルに対して情報を与える。すると――
(……ほう! これは……面白くなりそうじゃないの)
スキル<創造>から面白そうな反応が返ってきた。
白夜はついニヤリと笑みを浮かべる。これはきっと、物凄いのが創造出来そうだ。
「イルミナ。オッケーみたいだ。これはスゴイことになりそうだぞ」
白夜は嬉々として語る。
「あら、そう? ふふふ。楽しみね」
イルミナも同じ思いのようだ。
「それじゃあ……創造るか」
今回は準備万端。二度目ともなると慣れてくるものだ。
白夜はイルミナに近づき、頭にポンと左手を乗せる。
「……ちょ、ちょっと緊張するね」
イルミナは緊張しているのだろう。そわそわとしている。
「……」
その様子をなぜか羨ましそうに見つめるコウハク。
(お前はもうやっただろ……また種族変更したいのか……?)
白夜はコウハクの様子に少し呆れつつ――
「……じゃあ行くぞ? この世界に姿を現せ! <創造>!」
スキルを発動し、イルミナの体は一瞬で光に包まれた。
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「「……」」
――声が聞こえる。
「「イ……ナ」」
――この声は……。
「「イルミナ」」
――お父さん……お母さん……。
「「イルミナ。強くなくてもいいなんて言って、ごめんね(な)」」
――そんな……私あの言葉に救われて……。
「「私達は、イルミナの強さを信じてあげられなかった。その言葉が、イルミナの成長を妨げてしまった」」
――そんなこと……。
「「そんなことあるんだよ。だから……イルミナの『強さ』に、私達を加えておくれ」」
――……うん。
「「私達は、いつでも貴女(お前)と一緒よ(だ)」」
――ありがとう。お父さん。お母さん。
「「強き『真祖』たる、貴女(お前)と共に……私達の願いを……」」
――……そうだね。
「「「誰もが安心して暮らせる、平和な世界を……創造ろう」」」
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光が治まってきた。
そこには以前<創造>が発動した時と同じように、祈るようなポーズをして座った美しい女性が存在した。
顔や髪型は変わらないが、ゴスロリ風の衣服に紅の模様が追加され、身長が十センチ程伸びている気がする。
前は慎ましかったバストラインも、今では服がきつそうでかなりの存在感を放っている。
「イル……ミナ?」
白夜はその変貌振りに対してつい、本人かどうか確認してしまう。
するとその美女は目を開き、こう語る。
「――えぇ。そうよ。ハクヤさん。……突然だけど、あたしも貴方達の仲間に加えてくれる?」
「……はい?」
白夜は言っている意味がよく分からず、聞き返してしまう。
「――世界平和。あたしもやらなきゃいけなくなったから」
彼女は覚悟を決めた顔でそう言って、白夜達の仲間になることを宣言した。
一体なぜ、彼女が急にそのような覚悟を決めてくれたのかは分からなかったが――
「……喜んで。一緒に平和な世界を目指そう。イルミナ」
白夜は仲間が増えたことに喜び、満面の笑顔を見せるのだった。




