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第二十三話 現人神、行き先を決める。

 




 白夜は文字が読めないことをひた隠しにした。


(あんだけ書斎行きたいとか言っておいて、今さら文字読めませ〜ん。とか言ったら笑われそうだしな……)


 故に、さっさと次の話題へと移ることにする。


「これらの国の中で、俺達が入れそうな国はありますか? 身分証とか無いんですが……」


 これはかなり重要だ。

 現実世界で言う所の『パスポート』が無い状態で入れる国が、果たしてあるのだろうか。


「ふ〜む……身分が無いというのは厳しいでしょう。今は各国とも少々睨み合っているような状況です。身元が不明な者は、どこへ行こうとも弾かれる可能性が高いかと……」


(むぅ……やはりか)


 それはこの世界でも同じことのようだ。

 しかも今現在抗争中となれば、スパイなどを警戒して入国検査を厳しくするのは当たり前だろう。

 さて、どうしたものかと悩んでいると――


「……しかし、温情が得られる可能性はあります。人間の国――ヒュマノ。そこへ行かれるのがよろしいかと」


 イルエスがそう補足してくれる。

 しかし――


(ヒュマノ……どれだ? さっぱりわからん)


 ヒュマノと言われてもどれか分からない。

 白夜がしかめ面をしていると――


「ブラドの下部にある国ですね」


 コウハクが助け舟を出してくれる。


(サンキューコウハク。いい子だ)


「なるほど。じゃあとりあえず、そこへ行ってみようかと思います」


(門前払いにされそうだが……)


 と、不安に思っていると――


「紅様。ご提案があります。よろしいでしょうか?」


 イルエスが白夜に提案があるらしい。


「――? なんです? どうぞ」

「……恐らく、その国へ行っても、門前払いされるのがオチでしょう」


(うん。だよな)


 白夜は諦めの表情を取ろうとしたが――


「そこで、我々吸血鬼に襲われたと伝え、何も持ってこれなかったという話を作るのはどうでしょうか」


 と、イルエスが提案してきた。


(ほ〜。なるほど)


 確かに悪く無い案に思えた。

 だが――


「それは……貴方達の名前を汚すことになります。止めておきましょう」


 白夜はそう、真剣な顔で言った。――悪役に使うなんて失礼だろう。


「ははは。紅様はお優しいですね。大丈夫ですよ。――もう我々は、とっくの昔に汚れていますから」


 イルエスはそう言った。


(……あぁ、そうか。昔のこともあるし、イルエスの奥さん、『大魔王ブラッド』なんて言われてたんだしな……)


「それは……」


 白夜は少し言い淀んでしまう。


「大丈夫です。それに、この名が貴方様のお役に立てるのであれば、いくらでも使ってください。恨んだりなんてしませんよ」


 イルエスはそう微笑む。


(これは……)


 白夜はイルエスの表情を見る。

 そこには確かに負の感情は見られない。

 とても柔らかな表情をしており、困っている相手に対して手を差し伸べるかのごとき慈悲深い念を感じる。


 白夜はこうまでされて断るのも失礼かと感じ、諦める。


「……分かりました。伝えておきます。とてつもない吸血鬼の娘に襲われ、圧倒的力によって、地に伏せられたと」


 そう言って、白夜はイルミナの方へと顔を向ける。

 ――ギョッとしている。


(あはは。面白い顔だ)


「あはは! ……おほん、失礼。そうですなぁ……それはそれは、恐ろしい吸血鬼が居たものですな!」


 イルエスが悪ノリに乗ってくる。

 ――やはりこのおっさんとは気が合いそうだ――と白夜は思うのであった。

 イルミナは羞恥のあまりか、顔を伏せてしまう。


「――さて、この近辺には、潰れてしまった人間の村がいくつかあります。出身はその村であるということにして、吸血鬼に襲われ、命からがら逃げ延びて来た、ということにするのが良いかと。そうすると温情が得られ、入国できるやもしれません」


 イルエスはそう提案してくれる。


「ありがとうございます。お気遣い感謝します」


 白夜はそう行って、頭を下げておいた。






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