表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/107

第十四話 現人神、もう一つのスキルを発動する。






 塔内はもっと酷い有様だった。

 元は大層豪華な作りであったろうこの城も、今となっては一つ歩けば死体、一つ歩けば壁や床に破壊の痕跡が残っている状況だ。

 死体を見て何も思わないのかと言われると、少し気分が悪いと白夜は思っていた。

 生前だと流石に耐えられず、身動きが取れないどころか入り口の時点でうずくまって嘔吐していただろう。

 神になるとメンタルも少々強くなれるらしい。


 白夜達は塔内の階段を進み、奥へと続く広い部屋へとたどり着く。


(……むむ? 何やら音が聞こえるぞ)


 すると何やら部屋の奥から物音がしてきた。

 白夜は足を止め――


「コウハク。奥に何かいるみたいだ。俺の後ろに少し下がってろ」

「――はい。主人さま」


 右手の人差し指を一本立て、唇の前にスッと持って行き、静かにするようにと合図を出しながらコウハクに語りかけ、ススっと自身の背中にコウハクを隠してゆっくりと進む。


 広いフロアを死体や破壊の跡を避け、進んでいくと、音は次第に大きくなっていく。

 ドンドンという何かがぶつかるような音や、ガヤガヤと何やら騒ぎ立てている音だ。


「これは……話し声と……爆発音か?」

「そのようですね」


 その音のする方へ少しずつ、そろりそろりと近づく。


 すると白夜の背丈の倍以上はある大きな扉が開きっぱなしになっている部屋がある。

  顔だけを覗かせると、外周には何やらいかにも神殿に立てられていそうな芸術的細工が施された柱がいくつか立てられており、床には赤い絨毯が広々と敷かれ、中央奥には数段の階段の上に、キラキラと金色に輝く大層豪華な椅子が置かれている。

 ――玉座だろうか。


 それよりも一層目を引くのが床に絨毯が敷かれてある場所――中央部で一人の男性が五人の男性に群がられ、何やら派手な襲撃を受けている光景だ。

 光が飛び散ったり、火が舞い上がったり、稲妻が走ったりしている。もしかするとあれは――


「あれは……魔法か……? 奴らは一体……」


 白夜がそう疑問を口にすると――


「そのようです。主人さま。解析結果を伝えます。

 ……周りの五人は、冒険者チーム『吸血鬼狩り(ヴァンパイアハンター)』のメンバーのようです。

 聖属性魔法<ホーリーライト>レベル4を使っている者が、スキル<記憶メモリー>持ちの白魔道士『アッシュ』。

 記憶しておきたいことを魔力を込めた紙に書くと、一週間はどのようなことでも覚えておくことができるようです。

 それを利用し、高度な魔法陣を描こうとしたようですが、字が汚く、上手く書けないことの方が多いようです。

 火属性魔法<ファイヤーボール>レベル3を使用している者が、スキル<把握グラスプ>持ちの赤魔道士『レオルド』。

 スキルを使って、上手く結界のほころびを把握し、攻撃しているつもりかもしれませんが、その箇所よりも前方右斜め前付近等、計三箇所の方が綻びが強いです。

 雷属性魔法<サンダーボルト>レベル3を使用している者が、スキル<視覚ビジョン>持ちの黄魔導師『ムーサル』。

 視力が倍良くなるそうですが、両目とも視力0.1なので、役に立っていないようです。

 結界に殴りかかっている者がスキル<分析アナリスト>持ちの戦士『タック』。

 触れた物の構造がある程度まで分かるようですが、頭の質が悪く、理解できない物の方が圧倒的に多いようです。

 団長の『ロズウェル』は、相手の魔法をある程度認識するスキル<魔法探知マジックディテクション>を使ってサポートしているようです。

 最近彼女に振られたようです。

 真ん中の男性は吸血鬼の王『イルエス・ヴラッド』。

 闇属性魔法<ダークオーラ>レベル4を防御結界として使っているようです。――ただ、もう長くは持たないでしょう」


 と、コウハクが解析結果を伝えてくれた。――素晴らしい仕事振りだ。


(ふむ。コウハクは見ただけで解析出来るからな。あいつらは丸裸も同然か。……あと、なんか襲ってる奴らのスキル、微妙だな〜。多分あそこの奴らのスキル全部足しても、<全知アンニシャス>の方が上だろうな……)


「解析結果を共有します。どうぞご覧ください」


 コウハクはそう言うと目の前にスクリーンを表示し、連中のステータスを表示させる。


————————————————————————————————————————————


名前:アッシュ

性別:男性

年齢:二十四歳

種族:人


ステータス

LV:50

HP:100

PW:100

MP:150

DF:100

IN:35

SA:3


種族特性

吸血鬼狩り

吸血鬼族に対するダメージアップ


保有スキル

スーパースキル<記憶メモリー

記憶しておきたいことを魔力を込めた紙に書くと、一週間はどのようなことでも覚えておくことができる


————————————————————————————————————————————


————————————————————————————————————————————


名前:レオルド

性別:男性

年齢:三十歳

種族:人


ステータス

LV:55

HP:165

PW:110

MP:165

DF:110

IN:33

SA:3


種族特性

吸血鬼狩り

吸血鬼族に対するダメージアップ


保有スキル

スーパースキル<把握グラスプ

あらゆるものをある程度探知する


————————————————————————————————————————————


————————————————————————————————————————————


名前:ムーサル

性別:男性

年齢:二十五歳

種族:人


ステータス

LV:52

HP:156

PW:156

MP:104

DF:104

IN:33

SA:3


種族特性

吸血鬼狩り

吸血鬼族に対するダメージアップ


保有スキル

スーパースキル<視覚ビジョン

視力が倍良くなる


————————————————————————————————————————————


————————————————————————————————————————————


名前:ロズウェル

性別:男性

年齢:三十二歳

種族:人


ステータス

LV:58

HP:174

PW:116

MP:174

DF:116

IN:35

SA:3


種族特性

吸血鬼狩り

吸血鬼族に対するダメージアップ


保有スキル

スーパースキル<魔法探知マジックディテクション

発動した魔法をある程度認識できる


————————————————————————————————————————————


————————————————————————————————————————————


名前:イルエス・ヴラッド

性別:男性

年齢:八十二歳

種族:吸血鬼


ステータス

LV:80

HP:400

PW:320

MP:320

DF:320

IN:50

SA:5


種族特性

<飲食不要>

<闇属性魔法適性>

<自動回復(小)>

<聖属性耐性弱化>


保有スキル

ハイパースキル<|吸血鬼の王(ヴァンパイアキング)>

吸血鬼をある程度従わせる

吸血した者を眷属とする


バッドスキル

<|十なる英雄の楔(イクスチェイン)>

対象者の生命力が無くなるまで永続ダメージを与え続ける

イクスブレイブ以外解除不可


————————————————————————————————————————————


「うぉっ……全員今の俺たちより随分とステータスが高いな……」

「そのようですね」

「……やばっ、この<把握グラスプ>ってスキル持ってる奴、俺たちのこと把握してるんじゃ――」

「その心配はございません主人様。わたくしのスキルでカモフラージュしておりますので、向こうに情報は一切渡しておりません」

「わお……優秀……」


 白夜はコウハクの容赦ない仕事ぶりに感心する。

 ――しかし、こちらとしてはもう一つ、大事な情報が欲しい所だ。


「ありがとうコウハク。じゃあもう一つ教えてくれるか? ……心が清いのは、あの五人と吸血鬼の内、どちらだ?」

「それは……あの五人は全員が全員、かなり下衆な精神を抱いているようです。比べて吸血鬼の王の方は、気高く優しき精神をお持ちのようです。――差し詰め、主人さまのような」


 と、コウハクが答えた。

 ――じゃあ、決まりだ。


「吸血鬼を助けるぞ。俺がやる。コウハクは少し下がって見てな。俺のもう一つのスキル、<削除デリート>の出番だ」


 連中と自分たちのステータスの差は歴然としている。

 今無防備に飛び出ると、こちらが一瞬でチリとなる未来が簡単に見える程だ。

 とても勝てるような相手ではないだろう。

 

――しかし、この男には神より授かったスキルがある。


 白夜は五人の姿を認識できる場所に移動し、右手を広げ、五人の方向へと向ける。

 すると、視界に入る全てが<削除デリート>の対象に出来ることがわかる。


(ふむふむ、なるほど……こう使うのか)


 スキルの使用感を確認し、今回はあの五人だけを<削除デリート>の対象とし、手に持っている物をグシャリと握りつぶすかの如く、広げていた右手をグッと握り込み、スキルを発動させる。


「――この世界から消えて無くなれ! <削除デリート>!」






 その瞬間、『吸血鬼狩り(ヴァンパイアハンター)』の五人全員は、この世界から姿を消した。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
 
閲覧頂き、感謝致します!
 
↓連載中小説↓
『紅 白夜、神になる。』

『ヒトリボッチの保智一人』
 
お気に召された方は
ブックマーク評価感想
などしてやって下さい。
筆者が大層喜ぶそうです(爆)
 
また、こちらのランキングにも参加しております!
―小説家になろう 勝手にランキング―
こちらもポチりとしていただくと筆者が(以下略。
 
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ