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第百一話 現人神、休暇を取る。






 ホブゴブリン達をクリーニングした翌日。

 メシアの仕事場は彼ら彼女らで一杯になっていたので、白夜達は金貨を渡した村人の家で世話になっていた。

 クロヌスとギンは外でも大丈夫らしいので、敷布団を三つ貸してもらい、一行は泥のように眠っていた。――白夜以外。


「「すー……すー……」」

「さすがにせっまいわ……なんでこいつら普通に寝てんだよ……」


 いつものように両脇に居る二人娘が白夜を抱き枕にして寝ているせいで、寝返りすら打てない。

 今まで寝てきた寝具の内で最小記録を更新するこの敷布団では寝苦しさ倍増だ。――こういう場面でも疲労が募ってしまうのではないだろうか。


「はぁ……親離れ出来るように、明日からは別々の場所で寝るよう促してみるか」

「「すー……すー……」」

「……寝よ」


 こうしてこの日は疲れが取れた感じがあまりせず、白夜は朝を迎えるのであった。






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






「ぐえぇ……疲労が抜けてない……」

「大丈夫ですか……? 主人さま」

「ハクヤさん……大丈夫?」

「……あぁ。また働きすぎたせいかな」


 いつもの朝のルーティンを終えても疲れが抜ききれていない白夜は椅子に座って机に突っ伏し、まるで学校で爆睡するかのような体制へと移る。


「はぁ……でも今日もやること多いしなぁ……」


 昨日はクリーニングに手一杯で、ホブゴブリン達から話を聞く事が出来なかった。

 メシアのことを話したり、何か知っている情報を聞き出したり、やることは山積みだ。

 白夜は疲労体に鞭を打ち、ガタリと椅子から立ち上がり、メシアの仕事場へと向かおうとする。


 すると二人娘が入り口の前にドンと立ち、白夜を通せん坊する。


「……なんだ? どした?」

「主人さま。主人さまの歩みを止めた無礼を承知で懇願します。……本日はどうかお休みください」

「ハクヤさん……目に見えて疲れてるでしょ? 駄目だよ。ちゃんと休まなきゃ」


 二人娘がここは絶対通さないと言わんばかりの覚悟を決めた表情を浮かべる。


「しかし……あいつらを一日放ったらかしにするのも悪いし……」

「大丈夫です。主人さまのお仕事はわたくしが代わりに致します。……そ、その……こういうのも……妻の仕事……です」

「大丈夫! ゴブリンさん達からお話聞くと良いんでしょ? 任せといてよ! ……ほ、ほら! こういうのも……その……お、お嫁さんの仕事だし?」


 二人娘は大層恥ずかしげに顔を赤らめ、俯きがちにそう答える。――しかし、すぐに互いが互いを睨み合い、また一悶着起こりそうな雰囲気を醸し出している。


「……はぁ。分かった分かった。今日はゆっくり休ませてもらうよ。しばらく横になれば回復するだろ。体調が戻り次第そっちに行く。その間よろしくな?」


 そして二人の目の前にまでスタスタと歩み寄り、頭に手をポンと乗せサラサラと撫でる。


「ふぁ……にへへ」

「あっ……えへへ」


 二人娘はポワポワと惚けているが、白夜は御構い無しにしばらく撫で続け――


「それじゃあ頼んだぞ」


 そう言って手を離し、少し寂しそうにする二人娘を心配しながら見送るのであった。






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「すー……すー……んむ?」


 白夜はあれから三時間ほど仮眠を取り、目が醒める。

 布団からのそりと上半身を起こし、右手の肘を左手で掴んでグッと上に伸ばして肩甲骨を持ち上げ、体をパキパキと鳴らしながら「ふわあぁっ」と大口を開けてあくびをする。


「――っと……ふぅ……大分疲れが取れたな」


 今は昼を過ぎたくらいだろうか。

 晴れ晴れとした天気だ。太陽の光が窓から差し込んで来ている。


「……それじゃあメシアに行くか」


 白夜はガチャリとドアを開け、階段をスタスタと降りて玄関まで辿り着き、村人の家を出る。

 すると家の前で家庭菜園を整えている村人が居た。

 この家の主人の奥さんである、ミローネという夫人だ。

 白夜はミローネと挨拶を交わす。


「ミローネさん。こんにちは。本日はどうもお世話になりました」

「あら、白夜さん。こんにちは。もう体は平気なのかい?」

「えぇ。長い間お邪魔してすみませんでした」

「いいのいいの。気にしないで。今ちょうどお昼時だろう。何か食べていくかい?」

「お気遣いありがとうございます。ですが仕事がまだ残っていますので失礼します。本日はお世話になりました。ありがとうございました」

「あら、そうかい? じゃあくれぐれも体調には気をつけるんだよ」


 白夜はミローネにペコリと礼をしてスタスタとメシアの仕事場へと向かう。


「……まだ若いのに仕事熱心だねぇ。内の旦那にも見せてやりたいくらいだよ」


 ミローネは汗を拭いながら苺をプチリと取りつつ、そう呟くのであった。






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