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第一話 高校男子、死亡する。






 くれない 白夜はくや十八歳。

 彼は高校最後の夏を幼馴染と過ごしていた。


「あっついな〜ほんと」


 温度は夏日を軽く超え、肌にべったりと張り付くような汗をかきながら白夜は言う。


「ちょっと本気出しすぎよね……アイスが溶けるのが早いこと」


 横断歩道の信号待ちをしている間、白夜におごってもらったアイスをチロチロ舐めながら、幼馴染が返答する。


「そうだな。本気出しすぎると、アイスだけじゃなくて地球が溶けんぞ? おーい聞いてんのか?」

「あはは。誰に言ってんの?」

「太陽とか?」

「聞こえるわけないじゃん!」

「だよなー」


 などとつまらない会話をしていると、ようやく信号が変わりそうだ。

 幼馴染が「信号、変わるよ」と言って、すぐに歩き出そうとする。


 だが彼女は周りをよく見ないタイプなのだ。

 赤信号なりたてでブレーキを踏まずに走ってくるトラックの姿など、目に見えてはいなかった。


「――っておい! お前! ちゃんと周り見ろ!」


 そう言って白夜が強引に手を引っ張り、歩道へと引き戻す。

「ひゃわっ!?」とかいう情けない声とともに、白夜は自分の体へと幼馴染を引き寄せた。


「びゃ、びゃっくん!? ちょっと! い、いきなりそういうのは……まだ心の準備が……」


 などと意味の分からないことを言って白夜の服にアイスをへばり付かせている彼女の声は、彼には届かなかった。


 「ろくに確認もせず、横断歩道を渡るんじゃねー!」とか、「服汚したなバカヤロー!」などと、普段なら幼馴染に対して叱責するのだろうが――






 彼が見つめる先、そこには少女が居た。

 まだ信号が変わりきっていないのに、走り出してしまったのだろう。

 その少女は横断歩道の真ん中辺りに達していた。






 十数メートル先にトラックが来ていることにも気付かずに。






 プーッ!






 トラックのクラクションが鳴り、ようやく気づいたその少女はトラックの方向へと顔を向け驚き、身動き一つ出来そうも無かった。


「――っ! おいおいっ!」


 白夜は幼馴染の手を離し、走り出す。


「――わっ! って、ちょっと! びゃっくん!?」


 何をしているのかと驚く幼馴染を無視し、走る。


「くそっ!間に合――」


 もう目の前にまで迫っているトラックが、少女を跳ね飛ばそうとしたその瞬間――


「――くっ! うおおおおおっ!」






 ――トンッ。






 白夜は無理やり身を投げ出し、なんとか少女を突き飛ばすことに成功する。






 プーッ! キュオオオ! ドンッ!






 しかし、次の瞬間横からとてつもない衝撃を感じ、白夜の体は跳ね飛ばされ、宙に浮き、やがて地面へと強く叩きつけられ、十数メートル先へと転がって行った。






 ――ぐはっ……痛え……あぁ……ありえねえ……。






 体が動かない。

 全身に想像を絶するほどの痛みを感じ、白夜は早くも意識が無くなりつつあった。






 ――あぁ……これはもう……ダメだな……今回は……確実に死んだわ……。






 パタパタパタ……。






「――!」






 ――あぁ……なんか、聞こえるな……そういや、あいつも一緒に居たか……すまん雪音……グロいの見せちまって……。






 白夜の眼前の世界が完全に閉ざされる寸前。


「……また今度……何か奢ってやるから……許してくれ……」


 二度と訪れることの無いそんな未来を想像し――


「――びゃっくん!」


 白夜は意識を失った。






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