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眼鏡を掛けたおかげで、死んだ恋人が蘇りました。  作者: 近藤近道
君がいるせいで、物語が始まってしまう。
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君がいるせいで、物語が始まってしまう。(4)

「立て、走れ、逃げろ!」

 朱里の方が立ち上がるのが早い。

 僕の体は非常事態に素早く動けるようには出来ていないみたいで、のそのそと起き上がる。

 異変に気付いたクラスメイトたちや先生が逃げている。

 僕もそれに続くべきなのだろう。

 朱里は逃げろと僕に言った。

 なのに落ちてきた巨大生物と対峙する朱里が気になってしまう。

「朱里、なにやってる」

「いいから逃げて」

「指名手配犯の真上に異世界転移をするとは。俺にもツキが回ってきたらしいな」

 サイのような巨大生物の頭の上に、男が立っていた。

 男は拳銃よりやや大振りの、短機関銃のような武器を持っていた。

「兆華朱里。私はナリ討伐隊のケールラー。メガネフレイム及び転移用ドラゴンを強奪した罪でお前を逮捕しに来た」

 と男は朱里に呼びかける。

 男と巨大生物は、朱里を追ってきたらしい。

 強奪、罪。

 朱里はなにをしたんだ?

 男の持つ武器の銃口が僕に向けられた。

「そこの男子はお前の知り合いと見受ける。彼の命が惜しくば、素直に投降していただ」

 男が喋っている最中に、巨大生物が突然走り出した。

 不意のことで男は頭の上から振り落とされる。

「くおおお!?」

 巨大生物は前肢で朱里を踏み潰そうと、どしどしと左右の前肢を踊らせる。

 砂埃が舞う。

 朱里の体と比較してみると、巨大生物はおよそ四メートルの高さがあるように見える。

 どうやら朱里は機敏な動きで攻撃を避け続けているみたいだ。

 焦れた巨大生物は、体ごと顔を上に向けて大きく息を吸った。

 そして口を開くと火の柱を放出する。

 まるでガスバーナーで地面をあぶるみたいに、朱里を追って顔を動かす。

 桜の木を燃やした炎が、砂を焼いているのかもしれない。

 砂埃に混じって白い煙が立ち上る。

「ハッハッハッ、そのままではドラゴンのブレスに焼かれてしまうなあ! 抵抗をやめれば止めてやる」

 と起き上がった男は大声で意気揚々と言った。

 朱里はドラゴンと呼ばれた巨大生物の周囲を回るように走りながら怒号を返す。

「お前が止められないからこうなってんだろ!」

「そうかもな。だが大人しく私に捕まれば助けてやろう」

「お断り!」

 ドラゴンは頭の方を軸に、後肢を大きく動かして少しずつ体の向きを変える。

 朱里は、ドラゴンが男の方を向くように誘導しているのだ。

 目論見どおりにドラゴンの向きを反転させると朱里は大きくジャンプし、綺麗に後方宙返りしてみせた。

 朱里の着地地点はドラゴンの背中だ。

 まさに形勢逆転。

「さあ、焼かれるのはお前だ!」

 と朱里は男を指差した。

 しかし朱里を見失ったドラゴンは口を閉じてしまい、周囲を見回している。

「都合良く動くわけないか。でも、もうこっちが有利でしょ」

 改めて勝ち誇る。

 男は銃のような武器を構えるが表情は苦しげだ。

 彼の持っている物が、僕の知っている銃と同じかは知らないけれど、それでも小型の武器では巨大生物相手には不足することには変わりなさそうだ。

 しかしこの場面で、僕たちの方に向かってグラウンドを走ってくる女子が現れた。

「ドラゴンにメガネフレイム、ついに見つけたぞっ!」

 と彼女は叫ぶ。

 僕のクラスメイト、体育館でバレーをしているはずの、藤原璃子さんだった。

 藤原さんはさっきの朱里に劣らない超人的な跳躍をして、ドラゴンの上の朱里に襲いかかった。

「その眼鏡を私によこせえぇ!」

 彼女は跳び蹴りをかまし、朱里をドラゴンの上から突き落とした。

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