戦場の悪魔
その両手に持った双剣が振るわれるたびに、美しい銀髪が揺れる
全てを飲み込むような人の波、耳をつんざくような人の声、それらがそこには存在していないかのように優雅に刃が舞う
「まさか……僕が二刀流なんて使うことになるとはね」
本当は徒手格闘だけで戦いたかったけど……僕は弱いから、武器に頼るんだ……また……
「ふぅ…とりあえず、隠れてた敵の隠密部隊はだいたい倒せたかな」
おそらくヘラクレス軍はロキとアヴァロンの兵もいる。数は膨大だし、ロキなんかは狂信者のアサシンが居たり、アヴァロンは卓越した魔法使いが多い。追い詰められる前に遊撃である僕が片付けておかないと……
「クレイ!」
クレイは戦場で聞こえるはずのない聞きなれた声に動揺し、即座に振り向く
「兄さん!?なんでここに……」
兄さんは兵士じゃない。なんで戦場に……その疑問を解消するかのように、左手の聖剣から声が流れてくる
「おい!あいつはお前の兄貴じゃない……多分……乗っ取られてるっぽい?」
「乗っ取り!?それって……」
その言葉に、兄さんの姿をした何かは答える
「んだよその剣は……弟の方はわりと簡単に騙せると思ってたのに。俺をぶっ倒してくれた剣も持ってんな……エクスカリバーだっけか?」
「お前は誰だ?早く兄さんの体から出て行け!」
「覚えてないのかぁ?俺の名前は道化の悪魔……お前の親父の体を貰った悪魔さんだよ」
……
………
…………
戦場に轟いた竜の声を聞き、その少女は安堵していた
「お姉様……無事でしたか…」
さて、私の仕事は遊撃……ですが隠れた兵はあらかた終わりましたね……中央に戻りましょうか
「ねぇ、待ってよ」
振り返り、戦場の中央に戻ろうとした時、突如そいつは現れた。吐息がかかるほど近く、虚ろな目をして
「……!?」
少女はとっさに距離を取る
「ねぇ、孤独ちゃん……同じ悪魔なのに…なんでディランの味方をするの?」
目の前の女が放った言葉に少女は驚愕する……こいつも、私と同じ存在だと……
「魔王様は居なくなってしまったけど……今はロキ様が居るわ……ねぇ、早く戻ってきてよ……孤独ちゃん」
昔の事は忘れてしまった……と言えば嘘になるだろう……だが
「お生憎様、今の私には私の居場所があるの……そんな気持ちの悪い勧誘はしないでください。被虐の悪魔」
私は過去を乗り越えた。お姉様のある場所が私の居場所だ……たとえそこが地獄であろうと
「あーあ……せっかく優しく話しかけてあげたのに………解体して新しく作り直す!この未完成のゴミが!」
2つの戦場で勇者と悪魔が…悪魔と悪魔が……ぶつかり合う




