道化の悪魔と色彩魔女
(前の体も良かったが、この体は最高だなぁ……流石だぜ勇者様よ)
「僕の中から…出て行け…」
(嫌だね。あと少しでお前の意識は消える…それまで必死にお喋りするんだな)
(じゃあ手始めに、王都に攻め入るか……)
「やめろ!やめるんだ!」
(あっははは!必死だなぁ勇者様ぁ!)
……
………
…………
そこそこ距離があったが、この体はスペックが高い…全然疲れてねぇ
「お帰りなさいませ!勇者様!」
(外壁の警備兵か?とりあえずこいつから殺すか)
「逃げろ!」
(まだ意識があったのかよ勇者様……でも遅い!この聖剣で首を撥ねとばしてやる!…!?)
「ガハッ!」
(あ?この体が吹き飛ばされた?誰だ?殺す)
「気味の悪い魔力を感じて、全速力で走ってきたらお前かよ。グレイス……何の冗談だ?いきなり一般兵に襲いかかるなんて」
(クソが!あの兵士に逃げられちった。なんだこの女……この体の知り合いか?)
「答えろよ」
(!……痛ぇ、一瞬で間合いを詰めて全力パンチ……勇者の体でも痛いってのは相当じゃねぇのか?)
「クレール!僕の体は悪魔によって乗っ取られている!一度撤退して対策を……」
「うるさい!私がお前に負けるわけないだろ!」
(ちっ!こいつで体を馴染ませるか……ぶっ殺す)
……
………
…………
まさかグレイスが悪魔に返り討ちにあって体を奪われるなんてな……
「おい悪魔!そんな動きじゃグレイスどころか私の足元にも及ばないぞ!」
グレイスは勇者に任命されるほどの実力者だが、私よりは強くない。それに純魔法戦闘の私ならグレイスの動きをコピー出来ない悪魔程度は倒せる……魔力を隔離させないと
「クレール!僕はどうなってもいい、悪魔を倒してくれ」
「お前がどうなってもいいわけないだろ!」
私の心臓めがけて聖剣が突き出される。危ない!
「ごめんグレイス!前言撤回!お前の体どうなっちゃうか分からない!」
……
………
…………
(はっ!最初は動きに戸惑ったが、体も馴染んだしこの女の動きにも慣れた。これでお終いだ!)
「ぐぁっ!」
(心臓を刺し穿つ……あ?肉の感触がしない?)
「はぁい、簡単に騙されたな悪魔」
(後ろ!……体が動かない?)
「お前が刺し殺したそれは私の魔法で出来た人形。それには拘束効果がある」
(まずい!くそが!動け!)
「白は虚無の色」
「黒は無限の色」
「灰は私の色」
「虚無と無限の神秘」
「記憶と色彩の剥離」
「カラーズアウト!」
これは……意識が…おかしく……な、なんだ?これ……
「これは潜在的な意識をぐちゃぐちゃにする洗脳魔法。本当だったらグレイスが狂って終わりだけど、中にいるお前はどうなるんだろうな?」
(お、俺はこんな……と…こ……ろ…で)




