私は特別じゃない。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
ベチンッ!
——⁉
何かが跳ね返るような衝撃音のした方を見てみると、窓ガラスにほっぺたをべちっとくっつけたクソ犬がいた。目線はこちらに向いている。
「んで、何で戻ってきたのよ?」
クソ犬を保護してから正座(?)させて私は脅すように聞いた。
さっきの独り言が聞かれてたらと思うと……なんだか負けたみたいで嫌だ。
戻ってきてくれて嬉しいのも、秘密よ。
「……やっぱり、僕は美鈴ちゃんと魔法少女をやりたいんだプ……他の魔法少女候補の子たちの様子を見てきたけど、キラキラ輝いているのは——明確な目標とそれに見合った努力をしている小学生というのは、美鈴ちゃんしかいなかったんだプ」
明確な目標とそれに見合った努力をしている……ね。
当然じゃない。
「夢だけ語って何もしないなんてバカの極みじゃない?当たり前よ」
……でも、キラキラ輝いてると言われるのは嬉しいわね。
「ただ……美鈴ちゃんは、魔法少女になるには性格に問題がありすぎるプ」
「何ですって?まさかの人格否定?」
技術うんぬんじゃなくて、私そのものを……流石に凹むわよ。
「だって美鈴ちゃん、道徳とかくだらないって思ってるプでしょ?
魔法少女は正義の味方プからね、ひねくれてる心の持ち主はその資格がないプよ」
「ひねくれてる言うな!……ただ私の感性が世間と異なっているだけよ」
「……」
冷めた目でこちらを見てきた……何なのよ、さっきから褒めてきたり貶したり。
「……言っておくけど、別に美鈴ちゃんは特別な子ってわけではないプよ。……そんな睨まないで、もう少し大人になったら、この言葉の意味が分かるプ」
”何言ってるのコイツ”と思う反面、”そうか……”と少し見透かされてる感じがしてハッとした。
周りが子供に見えて見下していたのは事実なんだから。
道徳の授業で言っているのはきれいごとで、忌み嫌っていた。
他の子の悪口を言ってクスクス笑っている女子や、何かをからかってバカにする男子を見て、
”自分はそうじゃない”と安心し、”アイツらは子供だからそんなことをして楽しいんだ”と勝手に思い込んでいた。
でも——私も一緒だったんだ。そうやって自分を特別視している時点で。
「……ふふふっ」
心の中のもやの中にあったガラスがパリっと弾け飛び、光が見えた気がした。
「あれ、もしかして理解できたプか?……顔つきが変わったプね。今なら、素質もあって資格もある……成長したプね。その思い、捨てるんじゃないプよ!」
「……分かってるわ」
「ただ……一時的なものじゃ困るプから、その光を保つために授業を始めるプ!」
「授業!?」
「そう。理解をしたら問題を解いて練習——これ、基本プよ☆」
「そうだけど……今から?何の?」
「あ、そこは時間を止めるから問題ないプ。……さあ、美鈴ちゃんの苦手な道徳を克服するプよー!!」
そう言われた瞬間、部屋が青く染まった……。
「キラキラと光を放つ星になるために、今は頑張るプよー!」




