4話「説得」
歴史小説って、読むのは好きだけど書くのは難しいですねえ。
はっきり言って言葉とか適当なんで、おかしいところがあっても許してください。
「お呼びだと伺いましたが」
目の前にいかつい感じのおじさんが座ってる。この人が三浦正俊らしい。見た感じ頑固でしかもちょっと偉そう。苦手って言うか、好きになれなそうなタイプ。こういう人が監督とかコーチだったら嫌だよな。
「よく来た正俊、いま大殿はどの辺りにおられる?」
「そうですな、恐らく尾張に入られようという頃かと。まあ織田の子倅風情など大殿の相手ではござりませぬ。殿はごゆるりと吉報をお待ちあれ」
自信満々に言い放つ。マズイ、それってまさに桶狭間直前じゃね? 時間がない。
「実はな、今朝がた夢を見たんだ」
「ほう、いかなる夢ですかな?」
「大殿が桶狭間という処で兵を連れてお休みになっておられるところに、突然大雨が降った」
「桶狭間……たしかそのような名の地が尾張に在ったかと。殿は良くご存知ですな」
「知らん。夢に出てきただけだ」(嘘だけど)
「それは面妖な」
「そう、不思議なんだ。そこへ雨に紛れて織田信長が奇襲を仕掛けてきた」
「――なんと」
「不意を突かれて、なす術無く大殿の首が取られた。その首が俺に言うんだ。氏真、仇を取れ。我が墓前に信長の首を捧げよって」
「それは不吉な……ただ古より『悪夢は吉兆の兆し』とも言います。あまりお気になされず、ワハハ」
正俊は話の内容に眉をひそめながらも笑い飛ばした。だがそれじゃまずいんだ。急いで使いを出さないと間に合わない。なんとか説得して信じさせないと。
「正俊、聞いてくれ。俺はこれをただの夢とも、吉兆だとも思ってない。それにしてはあまりにリアル――いや鮮明過ぎた。この夢は今川を守護して下さっている天のお告げだと思うんだ。このままではこうなるぞ、それを何としてもくい止めろというな」
「……りある? いやしかし我が今川の兵は二万を超え、織田の兵は五千に足りませぬ。上総介は嫌も応もなく籠城いたす他ありますまい。すなわちさような事は起こり得ませぬ」
三浦正俊は信じようとしない。そりゃそうだ、こんなこと言われて信じれる訳がない。でもなんとしても義元にこれを知らせなきゃ今川はジ・エンドだ。まあ氏真はたぶん死なないけど。
「そんなことは俺も、信長も分かってる。だが籠城したところで他所から救援が来る訳じゃないし、それでは織田の負けは間違いない。誰もが籠城すると思っているからこそ奇襲が有効なんじゃないか」
「なるほど、籠城しても負けは必定、とあらば上総介が運を天に任せ討って出るも無きにしも非ずと。殿、よくお考えになりましたな。立派にお育ちになられ、御守り役としては鼻が高いばかり。ですが大殿を御支えする大人どももそれは重々分かっておりましょう、どうかご安心下され」
安心なんかしてられるか。っていうか分かってたらあんなに見事にやられないっつーの。でもこの三浦のオッチャンは俺が自分の思い付きを披露していると思ったらしく、どっちかというと氏真がそれを考えついたことに驚いている感じだ。まあそうだよな。氏真は蹴鞠は上手くても戦略的・戦術的な才能があったとは思えない。
「お世辞はいらない。俺は大殿にくれぐれも桶狭間にて休まれないように、一刻でも早くお伝えしたいんだ」
「いやしかし、そのような不吉な夢を元にご注進をされたとあっては……。要らぬことをと大殿がお怒りになられるやも知れませぬ。それがしとてお傍におりながら何をしておるかとお叱りを受けましょう。どうかおやめ下され」
「念には念を、というじゃないか。お叱りは覚悟の上だ。出来るだけ早く伝令を用意してくれ」
叱られるぐらいなんだっていうんだ。これはお家の一大事。まさに存亡がかかってるんだぞ、と言いたいところだけどそこまでは言えない。未来を知ってるなんて言っても信じてもらえないだろうし、イベント回避に成功したらそれ以降の歴史は俺が知ってるものと全く違うものになるだろうから証明しようがない。
「殿がそこまで仰せとあらば、うーむ……」
オッチャンも押されて腕を組んで悩みだした。よし、あと一歩だ。押し切るぞ!
「……それがしでは判断が付きませぬ。つきましては尼御台様にご相談なさってはいかがでしょうか」
尼御台って、寿桂尼おばあちゃんの事かよ?!
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