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25話「信長」

いよいよ、あのお方が登場です!

と言っても氏真君と会うのはまだまだ先になりそうですが。



今日も早めに、というかだいぶ早い投稿です。

というのも、昨日の話を投稿してから、ガクンとPVの伸びが悪くなりました。

ブックマークも評価も増えない。

そんなに受けなかったのかとちょっと涙目。

そんなの気にしなきゃいいんでしょうが、書いてる当人にはどうしても気になるんですよね。

喜んでいただいている証拠、というか。

もし読んで面白いと思われたらブクマ、評価などよろしくお願いします!(必死かw)

「このたわけがぁっ」


 信長は高い声で叫ぶと同時に手にした盃を梶川高秀に向かって投げつけた。辺りに酒が飛び散り、杯が高秀の額に当たって血が滲む。それでも平伏し続ける高秀を見る信長の目は憤怒に燃えていたが、次の瞬間スッと冷めた眼差しに変わった。


「も、申し訳ございませぬっ」


「もう良い、去れ」


 信長はそう言うと右手を横に突きだした。傍の女が慌てて新しい盃を手渡し酒を注ぐ。


「平に、平にご寛恕を賜りたく――」


「くどい。去れと言うたが聞こえなんだか」


 なおも許しを請う高秀にもはや目もくれない。代って側に控えていた佐久間信盛が声を掛けた。


「梶川殿、殿の仰せにござる。ここはお下がりなされ」


「は、ははあっ」


 梶川高秀は何度も何度も頭を下げた後、部屋を辞した。





「たかが鳴海の城一つ、使えぬ奴よ」


「岡部元信と言わば勇猛と知られた将でございますゆえ」


 主の機嫌をこれ以上損なわぬよう、言葉を選びながら佐久間信盛が話しかける。


「尾張一国、平らげるのにどれほど時間を掛ける」


「今川は大国、言うてもその力は侮れませぬ。しかしいずれは南尾張も殿の掌に落ちましょう」


 信長の目がスッと細まる。整った顔立ちに切れ長の目をしているだけにより表情が冷たく見える。


「美濃を一日も早く攻略せねばならぬ。尾張で手をこまねいている暇はないのだ」


「承知しております。滝川一益からも北畠を抑えるために桑名長島を取るべしと言ってきております。その為にも速やかに南尾張に残る今川勢を除かねばなりませぬ」


 すると信長は信盛に顔を向けた。その眼差しのあまりの冷たさに信盛は背筋の凍る思いがする。だがそれを表に出すわけにはいかない。信長は家臣が自分に対し馴れ馴れしくすることも嫌うが、必要以上に恐れることをさらに嫌うのだ。信長はそのまま目を逸らさず告げた。


「分かっているなら良い。手段は問わぬ、鳴海を手に入れよ。首尾よく行けば鳴海を与えても良いぞ」






 ――恐ろしいお方だ。


 退出し居室に戻った佐久間信盛は、ふうっと息をついた。信長の目を思い出すと改めて震えが走る思いがする。あの日の評定の時にも見た目だ。家臣の誰もがもはや籠城、あるいは勝ち目のない野戦を挑んで討ち死に以外ないと覚悟を決めたあの日。今川の二万を超える兵を相手に誰が勝てると思ったであろうか。


 ――だが殿だけは違った。


 結局結論の出なかった評定の間、信長は一言も話さずただひたすら家臣の言い合いを聞いていた。織田が思いつく事は今川も思いつく。その裏を掻く為には表の全てを知る必要がある。今考えればそれを知る為にただひたすらに聞いていたのだろう。その時の眼差し。


 ――そして、桶狭間で見事に今川治部を討ち取られた。


 運命のあの日。わずかな供を連れて城を飛び出した信長を家臣たちは必死に追った。そして途中の熱田神宮での戦勝祈願、その時も同じ目をしていた。


 ――おそらく殿は神も仏も信じてはおられぬのだろう。


 戦意鼓舞の為の祈願の間も、信長は表情を変えずにずっと何かを考えていた。その時信盛は思ったのだ。この方は自身の目に見える物しか信じておられぬのだと。この御方の下で働くためには結果を出さねばならない。どんな手段を取ろうとも結果が全てだ。


 ――如何にしても鳴海の城を手に入れねばならぬ。しかしどうやって。


 岡部元信は強敵だ。動員できる兵数も限られている。信盛はなかなか寝付けそうになかった。





 ――数日後、善照寺砦


「初めてお目にかかります。今川家家臣、岡部正綱と申しまする」


「よくお出でになった。佐久間信盛でござる。岡部と言えばあの元信殿のご子息ですかな」


「いえ、甥に当たりまする。本日は岡部元信の名代としてまかり越しました」


 正綱マサッチは佐久間信盛の元を訪ねていた。鳴海城と義元の首を交換する下交渉の為である。


 ――よいか、弱みを見せてはならぬ。あくまで強気に押すべし。


 正綱は元信に散々言い聞かされていた。


「叔父上である元信殿はこの尾張にも名の轟く勇将。この度も見事に城をお守りになられましたな」


 信盛の言葉には単なる賞賛ではない、棘のような物が含まれている。守った相手が織田なのだからそれも当然だ。だが正綱は敢えてそれに気付かぬ様子で明るく返答した。


「お褒めに預かり恐縮でござる。ですがあれしきの事はわが叔父ならば容易いこと。もう少し歯ごたえのある相手はいないものかと叔父が申しておりました。いい年をして落ち着かぬのには困ったものです」


 そう言って正綱は大きく口を開けて笑った。





 ――敵の砦に乗り込んでこの態度。この男、若いがなかなか肝が据わっておるな。それにしても何が目的で参ったのであろう。


 佐久間信盛は内心思いながら相手の出方を探っていく。


「しかし此度は治部大輔殿には痛ましい事でござった。これも戦の常、御恨みなさるな。されどさぞかし御家中も大変でござろう。お察し申す」


 これは中々強烈なカウンターパンチだ。しかし正綱はそれに軽く頭を下げながら答えた。


「お気遣いかたじけない。しかし我が今川には当主氏真公がおわしまする。ご心配は無用に願いまする」


 ――ほう、あの氏真・・・・がいるから心配はいらぬと申すか。大きく出たの。





「して、本日は何用にてわざわざお越しになられた」


「実は織田上総介様にお願いがございまして」


「どういった事でござろう」


 ――さあ、これよりが正念場ぞ。


 岡部正綱は軽く息を吸って背筋を正した。


「上総介様がお持ちになっておられる、治部大輔様の御首級を当家にお返し頂きたい」


「それはまた大胆な。とてもお聞きする訳には参りませぬな」


「氏真公は御心を痛めておいでになりまする。なにとぞお返し下さるよう上総介様にお伝え下され」


 正綱はそう言うと深く頭を下げた。





 ――わざわざその為に参ったのか。ご苦労な事よな。


 佐久間信盛はやや呆れる思いがした。せっかく取った大将首を相手に返す者などいない。すんなり通る要求ではない事は岡部元信も分かっているだろう。だからこそ自身では来ず甥を使者にしたに違いない。


「あいや、頭をお上げくだされ。お気持ちは重々分かり申すが、これは無理にござる。義元公の御首級は当方にて丁重に弔わせて頂きますゆえ、どうか御安心召されよ」


「もしこの願いがお聞き届け頂けぬとあらば、再び戦となりましょう」


 岡部正綱は顔を上げると、きっぱりと言い放った。


 

いかがでしたでしょうか。

この辺りは嫌というほどあちらこちらで取り上げられているシーンでしょうが、

この後にどうしても必要なので入れました。

あまり一般的な話は入れたくないんですけどねえ。

文章力が無い&考証がいい加減なのがばれるw

明日も投稿します。

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