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20話「謀略」

いよいよ20話連続投稿の最後になります。

後書きに今後の予定について書きます。

「我ら一同、忠誠をお誓いいたしまする」


 庵原忠胤いはらあにに続き、多くの家臣たちが頭を下げてくれた。よしよし、なんとかいい流れになってくれたようだ。まあ中には葛山氏元(キツネ)のオヤジみたいに内心では納得してない奴もいるんだろうが、とりあえず形だけでも従ってくれればいい。その為にもここでいよいよ最後の仕上げに掛かろう。





「みんなの忠誠、有りがたく思う。だがここで残念な知らせがある。この混乱に乗じて俺を殺し、この国を我がものにしようとする者がいるという情報が入った」


「ナ、ナント。殿ヲ亡キ者ニシヨウト企ムトハ。ドコノ誰ニゴザルカッ」


 えーっと三浦正俊オッチャン、緊張しすぎ。セリフが棒読み過ぎるだろ。ここ大事なところだぞ。オッチャン役者は絶対向いてないな。


「大殿がお亡くなりになったこの隙に、という訳か」「武士の川上にもおけぬ。いったい誰だ」「そのような卑劣な男、許しておくわけにはいかぬ」「殿、我らに討伐をお命じ下され」


 大根芝居にも関わらず乗ってくれたみたいで大騒ぎだ。効果的なタイミングを待って話を続ける。





「みんな、聞いてくれ。今川の転覆を謀っているのは――田中城にいる武田信虎だ」


「――な、何ですと」「信虎様と言えば殿の外祖父ではありませぬか、それがまさか」「いや、有り得る。信虎様はとかく噂の絶えぬお方。武田を追い出された後も常に捲土重来を期しておられたと聞く」「駿河に来られてからも常日頃より周りに、今川に隙あらば立つ準備はいつでも出来ておると豪語されておったそうな」「ワシの知り合いの友人は一たび事を起こした際は内応せよと誘われておったらしいぞ――」


 俺の言葉に一瞬場を静寂が包み、その後怒号が飛び交った。やっぱり名前にインパクトがあったみたいだ。衝撃は受けても、みんな大体信じてはいるようだ。最後の話なんてどう考えても嘘っぽいけどな。やっぱり日ごろの行いって大事だなー。発案者のばあちゃんはそんな様子を見ても表情一つ変えず、しれっとした顔で座っている。怖い人だよ。


「殿、それでいかがなされまする」


 朝比奈信置(イヤミ)の言葉にみんなの視線が俺に集まる。


「信虎は俺の外祖父だとはいえ、放っておく訳にはいかない。直ちに田中城に向け兵を出す。ただし、殺すには忍びない。同盟相手の武田の手前もあるしな。丁重に国外にお出でいただくさ」


「武田信虎、殿の姻戚という立場にありながらの某略、許せませぬ。ぜひこの庵原忠胤いはらただざねに討伐をお申し付けくださいませ」


 庵原(兄)が真っ直ぐ俺の顔を見てそう言った。決めてやるから俺にパスをよこせ、アイコンタクトでそう伝えるエースストライカーの目と似ている。いい目だ、こういう奴は頼りに出来る。





「いや、今回は相手の不意を衝くんだ。戦いにはならないだろうから俺も出る。正俊オッチャン、兵をまとめ準備をしろ。信置イヤミ、軍監として俺に付け。忠胤いはらあに、先鋒を命じる」


「ははっ、直ちに」「お任せ下され」「有り難き幸せ」


 三人が声を上げ、周りも一緒に頭を下げた。なんか場に一体感が出てきたぞ。やっぱり仮想敵を作るってのは効果的だね、ばあちゃん。信虎(ジジイ)には悪いけど、ここはひとつ役に立ってもらおう。


「では準備が出来次第すぐに出る。みな、抜かるなよ!」


「おおう!」





 ――同日夕刻、田中城


「では、義元が死んだのは間違いないのだな」


「家中が慌ただしくなっておりますし、今朝から急に評定が開かれております様子。まずは確かかと」


「ふっふっふ、あの義元が織田の小僧に仕留められるとはな。あの男もつくづく運の無い」


「信虎様ならこの機にこの遠江、駿河を手にすることも容易いのではございませぬか」


「口に気を付けよ。それではまるで儂がこの今川を乗っ取ろうとでもしているようではないか。儂はの、可愛い孫の氏真の力になってやりたいと思うておるだけよ。あ奴はちいと頼りない故な。ほれ、ただの孫可愛さじゃ。ふっふっふ」


「これはこれは。お気持ちも知らず差し出がましいことを申しました」


 信虎が家臣と談笑しているところに、侍が駆け込んできた。


「信虎様、駿府の氏真公より文が届きましてございます」


「おや、あの頼りない孫がさっそく泣きついてきたか。見せてみよ」





「なんだこれはあっ」


 手紙を読み進めた信虎が、途中で血相を変えて怒りだす。怒りで手が震えている。


「いかがなさいましたか、信虎様」


「氏真め、何の証拠も無いにも関わらず儂に謀反の疑いありと申してきおった。申し開きがあるなら直接申せ、さもなくば直ちに攻め滅ぼすと」


「何と、それでいかがなさいます」


「行く訳が無かろう。赴けば、自らこの首を差し出すようなものだ」


「まさか、氏真公がそこまでなさるとは……」


「ふん、画を描いておるのは奴ではあるまい」


 そう言うと信虎は顎に手を当てて考え始めた。


 ――この機に乗じてあわよくば、と考えぬでもなかったが、よもや先手を打たれるとはな。しかしこの大胆な策、画を描いたのはあの婆あに違いない。


 信虎は寿桂尼の顔を苦々しく思い浮かべていた。


 ――女大名だのと言われていい気になりおって。時さえあれば織田と渡りをつけ内外打ち合わせて同時に兵を挙げるなど、いくらでも手はあったものを。小癪な真似をしおるわ。





 するとそこへまた別の知らせが届く。


「信虎様、この城に向かって軍勢が押し寄せて参りまする」


「何がなんでも早すぎるわ。誰の馬印だ」


「先頭に見えるは庵原いはらの紋、その後には二つ引両の旗も見えまする」


「……何だと、氏真が自ら出向いて来おったというのか」


 その考えられない早さに一瞬茫然とした信虎だが、すぐに立ち直って頭を働かせる。


 ――義元が尾張で討たれたのは昨日の昼と聞いた。なれば駿府へ知らせが届くのは早くとも夜更け。明けて朝から評定を開いたとしても策を練り、兵をまとめてここまで差し向けるにはどう考えても早すぎるわ。予め準備しておったとしか思えぬ。まさか、義元が討たれたという事自体が儂を陥れるための虚言か?


「軍勢は間もなくこの城に着きまする。いかがなされます」


 城の侍たちは浮足立っている。信虎に仕えてはいるし、氏真を軽く見てもいるが信虎に巻き込まれて謀反の疑いで攻められるなど真っ平御免というところだろう。

いかがだったでしょうか。

ここまで自分でも全く予想していなかったほど多くの皆さんに読んでいただき、ブックマークや評価、感想など多く頂いて本当に嬉しいです。


それでここからなのですが、数日お休みを頂きたいと思います。

何話か書き溜めてはいるのですが、この作品ではある程度先まで書いてから戻って伏線を引き直したり、

先の展開に沿って前の話を書き直したりと何度も行ったり来たりを繰り返しながら書いています。

ですので書くたびにそれを小出しにする、というのは厳しいのです。


せっかくこれだけの皆さんに読んでいただいてひょっとしたら早く先が読みたいと楽しみにしていただいている方もいらっしゃるかもしれないと思うと心苦しいですが、同時にこれだけの皆さんの目にとめて頂いたのだから、無力ですが自分なりに納得したものを書きたい、という思いが強いのです。


ですので何日かお待ちいただいて、その後は一日1話ペースで投稿していく、という形で行きたいと思います。

それもまたストックがなくなるとお休みを頂くのでしょうが(汗


ということで、大変大変申し訳ないのですが、しばらくお休みを下さい。

それほどお待たせはしないと思います。

そして再開したあかつきには、ぜひまたご愛読いただければと思います。

大変勝手なお願いですが、どうぞ今後もよろしくお願いします。


最後に、もしお待ちいただいている間暇だという方は

『作者が転生?!~りっぱな悪役になってやる!』

http://ncode.syosetu.com/n6735cy/

という作品も連載中ですので、目を通していただけると嬉しいです(宣伝w)

こちらは現在81話で止まってますが、エターなってる訳ではないのでこっちも書かなきゃいけないと今これを書いていて思いました(汗)


長くなりましたが、頑張って書きますので今後もよろしくお願いします!

……ひょっとしたらこれ書かずに小説書いたらよかったのではっ?!

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