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2話「転生」

2話目の投稿です。やっぱり転生物が好きなんですよね。でもチート過ぎても飽きちゃうというワガママ。そんな感じ、分かります?

だからその辺微妙な線で行きたいと思います。

 誰かに体を揺すられて目が覚めた。体中寝汗でびっしょりだ。


「ああ、夢か――」


「ずいぶんとうなされておいででした。どのような夢をご覧になっておられていたのですか?」


「今川義元が桶狭間で織田信長に首を取られた。その首が仇を取れ、信長の首を墓前に捧げろと言ってた」


「まあ、そんな不吉なことを。ご自身のお父君のことをそんな風におっしゃるなんてとんでもない」


 朝のまだ薄暗い光の中で眉をひそめて俺を見ているのは俺の奥さんだ。そして俺は……俺は?




「俺は、俺は誰だ?」


「まあ、これはまた異な事を。殿はこの今川家の頭領にあらせられます」


 そうだ、俺は今川家の頭領、今川氏真だ。それは何となく分かる。分かるけど――違うんだ。俺は氏真じゃない。この時代の人間じゃない。俺は品川真司、戦国の世のはるか未来、21世紀の人間だ。戦争なんて映像とゲームの中でしか知らない人間なんだ。結婚だってしていない。なのに俺が今川氏真で、俺の顔を怪訝そうに見ているのが奥さんの早川殿だってこともなぜか理解できる。訳が分からない。俺はおかしくなっちまったのか?


「ここはどこ?」


「駿府のお城にございます。殿のお城でございます故、ご安心召されて」


「今は何年何月何日? 今川義元は、いや父君は今どこにいる?」


「そんなこともお分かりにならぬとは、余ほど恐ろしい夢をご覧になられたのですね。今日は永禄三年皐月の十九日、大殿さまは尾張のあたりにおられると聞き及んでおります」


 早川殿が気の毒そうな表情で俺を眺める。上品で綺麗な顔立ちの女の子だ。永禄三年五月といえば西暦では1560年6月のはず。信長が好きな俺にとって忘れることの出来ない、まさに桶狭間の戦いが起こった月。なんてタイミングで、しかもよりによって――氏真かよ! 歴史に残る能無しボンクラ。蹴鞠しか取り柄の無い完全にゴミキャラじゃねえか。これが仮に転生とか転移とかだとしても、もっと他に選択肢があっただろうが。チクショウ、なんでこうなった? 責任者出てこい!


「きっと今ごろは大殿さまの大軍が織田を散々に打ち負かしておいででしょう」


 早川殿はニッコリと俺に微笑む。そりゃそう思うよな、この時代の誰だってそう思っていたはずだ。だが俺は夢の中の出来事が歴史的事実だという事を知ってる。桶狭間が起きれば今川家は破滅だ。坂を転がり落ちるように徳川と――いや今は松平か、それと武田に喰い潰されて滅亡へ一直線だ。まあ唯一の救いは氏真が今川家滅亡後も生き抜くはずだって事だな。確か長生きで江戸時代まで生きたんだっけ? よく知らんけど。でも一生負け犬で生きて行くってのもつらいよな。なまじ歴史知っちゃってるだけに余計そう思う。




 でももしかすると……まだ桶狭間は起きていないのかもしれない。確か義元が討ち取られたのは昼過ぎだったはず。もし昨日以前に義元が討ち取られ、今川が負けたのなら今ごろその一報はこの駿府に伝わっているんじゃないだろうか。桶狭間さえ起きなきゃ今川は大国だ。なんとか桶狭間のイベントさえ止めれたらなんとでもなる。それこそ京に上って日本統一だって夢じゃない、ってそれは難しいか。まあ仮にそれが出来るとしても義元であって氏真(オレ)じゃないな。


「大殿に急ぎ使いを出したいんだ。誰か呼んでくれないか」


「まあ、夢とはいえあまり不吉な事はおっしゃらない方がよろしいかと」


 俺が妙なことを言いだすんじゃないかと早川殿は不安げな顔をする。だが時間がない!


「頼む、急ぐんだ。信用のおける人間をすぐに呼んでくれないか」


「かしこまりました。それでは三浦正俊みうらまさとし殿がよろしいでしょう――誰か、殿がお呼びです。急ぎ三浦殿を呼んでおくれ」


 早川殿がふすまの向こうに声を掛けると、ハイと答えて人の動く気配がした。隣の部屋にずっと誰かがいたってことか、ちっとも気が付かなかった。

さあ、転生しちゃいました。しちゃったものは仕方ないですよね〜。

明日は18時と20時に投稿予定です。

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