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18話「豹変」

氏真君がメインだと会話が書きやすくて捗るw

「葛山殿、先ほどの言葉をお忘れか。お控えなされっ」


「うるさいわ内匠助。氏真公に取り入り偉そうにしおって。大殿がお亡くなりになればこの今川の命運も危うい。これが黙っておられるかっ」


 三浦のオッチャンが止めてもキツネの葛山は聞く耳を持たない。それに周りからもチョロチョロ同意するような声も聞こえる。ここら辺が潮時かな。





「正俊、葛山氏元を叩き出せ」


 俺が声を張ってそう言った瞬間、場の空気が凍ったのが分かる。キャラ的に氏真がそんなことを言うとは思わなかったのだろう。言われた当人の葛山も目を丸くしている。フッ、驚いたかこのキツネめ。今までの氏真オレとは(中身が全く)違うんだ。実は言った俺の方が内心ガクブルってるんだがそれを見せる訳には行かない。ここが正念場だ、ガンバレ俺。


「氏真公、何を言わるる。この氏元、今川の行く末を案じればこそ――」


「うるさいのはお前だ、氏元。黙ってまずは話を聞けと言ったろう。大殿が亡くなればこの今川を誰が率いるのか、だと? 俺に決まってるだろう。この今川氏真の他に誰がいるんだ? お前はそれに不服なのか?」


「い、いや、無論それが至極当然にございまする。なんら異存はございませぬ」


 葛山氏元キツネは慌てて膝を折り、平伏した。明らかに氏真オレの豹変ぶりにうろたえている。まさか氏真がこれほど強い態度に出るとは思っていなかったんだろう。周りの家臣どもも水を討ったように静かになった。正直緊張でちょっと震えてるけど上手く行ったかな?


「異存がないなら、なぜ俺が命じたのに勝手に騒ぐ? ――まあいい、話を続けるか。いいか、大殿が織田の奇襲を受けて討たれたのは間違いない。だが心配するな。元々俺が今川の当主だ。すでに隠居した大殿が亡くなったところで問題はない。俺が今川を率いる。この通り、寿桂尼さまも俺を後見して下さる。北条、武田とも同盟を結んでいる。今川は盤石だ」


 



 俺がそう言うと、ばあちゃんはゆっくりと頷いた。ここからは寿桂尼ばあちゃんのターンだ。


「みな、義元殿がお討たれになったと聞き、さぞ驚いたことでありましょう。この尼も胸が潰れるような思いが致しました。みなも知っておる通り、義元殿はこの今川の支柱であった。その義元殿を失うた今、みなが今川の行く末を案ずるのはよう分かりまする」


 静かに、柔らかな口調で話すばあちゃんの言葉に、この部屋に居る全員が聞き入っている。いかにこの寿桂尼ばあちゃんが今川の家中から信頼されているのか良く分かるな。


「しかし心配は不要です。この氏真殿がおられますゆえ。見ての通り、氏真殿はお変わりになりました。父を亡くされ、お目覚めになられたのです。氏真殿には武家の当主として今川を率いていく覚悟がお有りです。この尼から見るに、十分なご器量もお持ちです。尼は全く心配しておりませぬ。みなもよく氏真殿を支え、これからも今川に尽くしてくだされ」


 皆黙ってはいるが、あちこちでお互いに目を合わせている。ばあちゃんの言葉も半信半疑と言ったところだろう。それは仕方ない、今までの氏真の行いが悪かったんだ。俺のせいじゃないし。




「発言をお許し頂けましょうや」


 そこで突然一人の男が声を上げた。30過ぎくらいの痩せてクールな感じの男だ。現代なら細身の高級なスーツに銀縁のメガネなんかが似合いそうな、如何にも出来るキザで嫌味なタイプ。


 ――朝比奈信置あさひなのぶおき殿です。


 ノリくんの囁き戦術でカンニング。ああ、これが三浦のオッチャンがライバル視してた人か。いかにも頭が切れそうだ。結構有名な軍略家だそうだけど、何を言うつもりだろう。


「信置か、許す」


「有り難き。氏真公もさすがは今川を率いられるお方、頼もしい限り。まあいささかこれまでのお姿とは違っておられるようではありますが。クックック」


 そう言って軽く笑いやがった。麻呂化粧をやめたことを皮肉ってやがるな、嫌味な奴め。イヤミって呼んでやる。


「武家を率いる者としてこの方が相応しいと思っただけだ。それでなんだ?」


「先ほど氏真公は、今川は武田北条と結んでおるゆえ盤石だと申されました。しかるに織田はどうされるおつもりでござりましょうか。ご存念をお聞かせくだされ」


 信置イヤミがそう言うと、聞いていた家臣の何人もがウンウンと頷いている。対織田戦略か、やっぱりそこが問題だよな。義元の首を取られている以上、すぐにでも仇を取れという家臣が多いだろう。夢の中の義元も信長の首を墓前に捧げろと言ってたし。ただ信長好きの俺としては、正直敵対したくはない。って言うかあのウルトラチート軍団に勝てる気がしねえ。全国統一にも興味はないし。俺はサッカーがしたいんだ。





「織田か、いいだろう。ここに居る者の中には、すぐにでも兵を出して大殿の仇を取るべきだと思っているものも多いと思う。だが俺はすぐに織田を攻める気はない。まずは家中をまとめねばならん。なんせ俺が今川を率いるのに不満のある奴もいるようだしな」


 そう言って言葉を切り、氏元キツネの顔を見てやったら慌てて目を逸らしやがった。


「実は俺も初めは織田を攻めようかと思っていた。だが夢を見た。大殿が尾張桶狭間で織田に奇襲され、首を取られる夢だ。そこで大殿が俺に言ったんだ。織田を攻めようと思うな。まずは家中をまとめ力を蓄えろ、と。俺はそれに従おうと思う」


 俺の言葉を聞いて前に座っている三浦正俊オッチャンがあんぐりと口を開けている。前に聞かせた夢の内容と真逆だから驚いたらしい。嘘も方便ってやつだよオッチャン。悪いな義元、化けて出るなよ。


 

ああ、明日でいよいよ10日目。。。

20話の書き溜めもあっという間ですね。

どうしよう(泣

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