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幸運なロッソ  作者: 天有酢(テンアリス)
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第5話 灰色の男と番号無し 前編


バイクの男と二人乗りで岩壁地帯の西側に移動しているロッソ。

二人の間に言葉は無く、ただ目的地へと進んでいた。

時折後ろ側に乗っているロッソが悪戯半分で巨乳を押し付けても動じないのでなんとなくつまらない表情で溜め息を付いている。


「・・・年若い子がそんなこと覚えるモンじゃない」

それどころか3回目に予想外のお叱りが来てしまった、別に媚を売ったつもりもないがこの身体になって初めての叱責にロッソはなんとなく気まずい表情になってしまう。


―先刻の岩壁地帯から離れて10分後、足場が完全に「砂漠」に戻る辺りでバイクが急停止する。

「着いたぜ・・・」

男がバイクから足を下ろし眼前にそびえ立つ物の方向を向く、ロッソも同様の方向に目を向けると7メートル程度の岩山が佇んでいた・・・



――――――――――――――――――――――――――――――――――


時は戻り12分前、オード達『砂賊』を倒した直後にバイクの乗り手がやってきてオード達の「仕事」を知った風な台詞を吐いた直後。


「アンタ誰?こいつらの仲間?」

ロッソが怪しみ、オード達の仲間かと問うた。


一旦その言葉には答えず、バイクから足を下ろして地に降り立ち、ヘルメットを脱ぐ。

後ろで縛っている黒みがかった灰色の髪、服装はワイシャツの上に黒いベストに自然なダメージの入った灰色のジーンズ、20台後半といった面持ちで身長182cm程でそれなりに筋肉のついた偉丈夫であった。

「知らない・・・そんな奴は・・・ッ」

オードが血走った目と食いしばった歯を見せながら男の変わりに返答し、態度からして仲間であることを否定する。

ロッソはますます怪しげに思い、身構える。


「心配するなお嬢さん、俺は敵じゃない、少なくともあんたに対してはな」

「おれはあんたの探している情報を知ってる、教える代わりに手伝ってほしい。もっとも当たりとは限らないがな」

口を開いたかと思えば男は自分が敵ではないと主張し、

続けて情報提供の変わりに協力の要請をロッソに請い右手を差し出す。

ロッソ自身は一瞬困惑したが、警戒は解かず腰に自身の右手、左手を口元に当ててから少し話そうとする。


「バカなッ・・・どうやって僕達の仕事を探った・・・っ!?」

直後、縛られた状態でもがき、怒りつつ狼狽えた様子でオードが男に問いただすが、

男は意に介さず手を差し出したままロッソへ声を掛ける。

「いきなりで信じられないかもしれないが、俺は秘密裏にあんたと同じ存在にされた者、されそうな者を救出しているチームのリーダーだ」

「!・・・」

「ロリード、だろう?さっきの走りと戦いぶりを見て確信した」

「フン・・・、それで・・・ロリードを作ってる所を知ってるから案内してくれるワケ?」

自身がロリードである事を把握し、さらにそれを助ける組織のリーダーであると素性を明かす男に対し、ロッソも自身の用件を聞く。


「ああ、そういうことだ・・・もっともさっきも言った通りあんたの望んでいる「本体《当たり》」がそこにいるとは限らんがな」


ロッソの本体がそこに無いかもしれないと前置きしつつ男は肯定し右手を一旦降ろす。

ロッソ自身も少し思い留まる。


「聞けよ、オイ!殺すぞ・・・!!」

(・・・アタシ達を助けるチームがホントかはワカンネーけどこいつら(砂賊)が話さない以上、このおっさんに頼る他無いんだよなー)


オードのがなりを無視しつつ考えたが、どうにも道標がこの「灰色の男」にしかない事は彼女にも理解でき、決めることにした。


ロッソはパッと澄ました表情に切り替え、口元に笑顔を浮かべながら男に歩み寄る。


「決めてくれたか?」

改めて手を差し出した右手にロッソは軽く左手でパシンと叩き彼の横を通り過ぎる。

お断り。ではなく彼女なりの了承を表しており、男もそれを理解して鼻で笑った。

「あんたの名前なに?」

「グレイ」

「アタシロッソ、よろしくグレイ。」


シンプルに名前だけを教え合い、二人でバイクの方に歩んでいく。


「そーいやこいつらどーする?マッポに言っとく?」

「既にしておいた、30分ぐらいで来るだろう。まあどの道口は割らんだろうがな」


『砂賊』の取り扱いについてももうお縄になることが決定付けられており、意識の有る面子が愕然とするのであった。


「フン・・・僕達を捕まえたところで組織はどうもしませんよ・・・代わりの区長とメンバーが補填されるだけです・・・僕が区長だったのも人員整理によるたまたまでしたからね」

先程までがなっていたオードも拗ねた口調で話し、『砂賊』の脅威が減ったという訳でもないことをロッソ達に伝え、そっぽを向いた。

そんな彼らを尻目に二人はバイクに乗り、走り出す。


――――――――――――――――――――――――――――――――――


そして時は今に至る。


砂漠に佇む岩山の前に二人は並び見上げ、ロッソは感心しているような表情で驚き、グレイはややけわしい面持ちでいた。


「ほえーデッカイねぇ。んでどっかに研究所か工場への入り口でもあんの?てっぺんとか?」

「いや・・・下だな・・・」


小さい段差下にバイクを隠すように停車した後グレイは音を立てずに走り出し、ロッソも続いて岩山の後ろ側へと向かう。

周囲に監視機器などもなく岩山をグルリと周って行き、グレイ達のやってきた方向とは逆の位置までたどり着くが扉等も無く岩肌が見えるだけであり、研究者連中の機材、車など特に周りには見当たらないものであった。


「これを使うか」

グレイがポシェットからなにやら市場で商品を検品する為にあるような機械を取り出し、岩肌に近づいてゆく。

ロッソがとりあえず周囲を気にしながら続くとグレイが機械を壁の辺りにゆらりとかざし、探っているような素振りを見せる。

「・・・ハックキーだ、安い作りだが性能そのものはなかなかだ」

気になりはしたが質問してもいない機械が何かを答え、ロッソは目を丸くしてふーんと注目する。

するとハックキーなるものが岩肌に反応してピコピコと小さく反応する。

「このあたりか」

グレイが強くなっていくピコピコ音の反応先に近づき、ハックキーを動かすと別の音が鳴り機械から声が出る


<チェック中・・・・・・・・・OK、ロック・オープン、ステルス・リリース>


その抑揚の無い声が再生されると岩肌が見る見る内に金属板の組み合わさった壁に変わってゆき鍵の解除と共に立体ホログラムによる化けの皮が剥がされていった。

ロッソはあんぐりと口を開けて自分にとって未知の技術に驚くほか無かった。

「連中はどうも最近工場兼研究所をあちこちに作っているようで、空間を有る程度手軽に造れるキットで急ごしらえしているらしい。ここがその内の一つだ」

姿を現した研究所についてをグレイが語り始める。

「造ってから二週間ちょいで自爆装置とかで無理矢理引き払っちまうらしい、だからロックの出来も必要以上に複雑にする暇もないからウチの技術屋のハックキーでロックが外せちまう」

そういいながらハックキーをそのあたりにポイと捨てるとハックキーが余り音を立てずに小さく自爆して少量の破片を残していく。

「一応使い捨てだ、足が残らんよう内部が特に自壊するよう作ってもらっている」

グレイは言い捨てると堂々とドアから入り中にすぐ見える階段を下りて行き、ロッソもハックキーの燃え跡を一瞬見ながら降りていった。


長い階段をカツンカツンと二人が下って行く道すがらグレイがロッソに話していく、理解をしてもらう為に。


「急ごしらえの研究所は当然ロリードを造る為に存在している、が、二週間ちょいの短い時間で出来るロリードの数はたかが知れている、1、2体・・・多くて3体かな」

「手間がかかるから?」

「そう、小さな女の子を一々攫って本体の頭脳と心を移し変えるだけじゃなく、『発案者』サマの所為でロリードの「身体」の出来に拘る必要もあって、容姿、能力等も一々考えなきゃならんそうだ、とんでもなく非効率なお人形さんだな」

「このタイプの研究所が出来るようになったのはそれが手軽にできる「大規模な研究所」が2ヶ月ぐらい前に何者かにぶっ壊されて使いモンにならなくなったからそうだ、」

ロリードの造り方をロッソは初めて聞き、その製造工程の気持ち悪さにばつが悪くなる。

研究所の破壊に関しては心当たりがあるのだが目をそらした。


「あんただろう?・・・『スリーセブン』さん」

グレイは気づいていた、自身がロリードであるだけでなく逃げ出した『777体目』であることも。

「・・・なんでわかったん」

「記念すべき『777体目』が出来る事は掴んでいた・・・その時の俺達は何にも手出しが出来ん弱い集まりでな、どうすることも出来ず悔やんでいたら研究所がぶっ壊されてロリードが一体逃げ出したと知ったのさ。その辺をうろついてるロリードなんてあんたしかいない、だから直ぐに分かった・・・遭えたのはほぼ偶然だがな」

自身の行動が知られていることに、やれやれとロッソが肩をすくめ溜め息をつき歩くペースを落とす。

「おしゃべりはここまでだ・・・ここは出来てから恐らく6日程度、ここで女の子が攫われて製造が行われる前に破壊する」

「あのさ、一つ・・・いやふたつ聞いていい?」

足を完全に止めたロッソからの突然の質問にグレイは振り向く。

「アンタは今日ココをアタシと会わなくても一人で攻め込むつもりだったワケ?」


ロッソは自身と遭わなかった場合の研究所を侵攻するか否かを質問。


「・・・今日は本当はこの周辺の様子見だけのつもりだったんだが、あんた・・・いや、君と出会って仲間を呼ばずにすぐにでも侵攻を開始できると思い、そのまま実行してしまった・・・そんな理由さ」

グレイは一転して申し訳なさそうにし、ロッソに遭って気持ちがはやってしまった事を吐露する。

「そんでさ、アタシがロリードって分かってるってことは中身はいたいけな女の子って事もわかってて戦いを手伝ってもらってるってコトだよね、いややめたりしないけどさ」

ロッソは痛いところを突く様に自身の精神が幼女であることを理解しているかの質問を行う、士気を下げるつもりも無いのだがどうしても聞きたい事を最悪のタイミングといえる時に聞いてしまう。

グレイは階段下の方を向き、俯き気味になって口を開く。

「毒を持って毒を制す・・・」

「なにそれ」

「何処かのコトワザさ・・・ロリードの生産を止める計画をロリードである者に手伝ってもらう・・・・・・外法とは承知している・・・」

グレイがコトワザにすがっている様子を見て流石に罪悪感を感じ、ロッソはグレイと同じ段まで駆け寄る。

「だからこそ協力して欲しい! 君の本体を取り戻す為にもこっちは手を尽くす」

が、グレイは強い目でロッソの方を振り向き、意志を示し再び階段を降りて行き、

あっけにとられるもロッソも下り進みグレイにぴったり近づき続く。


「悪かったね」

「気にしなくていい、それよりもうすぐ着く、気を引き締めてくれ」

「あーいよっ」


ロッソが雑に謝るがグレイは流し、

二人による侵攻が始まるのであった・・・








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