第3話 生きる気持ち
――昼休憩終了後、午後の作業開始。
つつがなく作業員達は全体ノルマを達成してゆく。
なお、コウのエアカーは大破してしまい、保障も『カンパニー』側でしてくれる訳も無く自分の手と足で作業を行っていた。ロッソは仕事終わりまでのんびり装甲車内にあるソファーに寝そべっていた。
午後16時00分、正式に作業が終了し全員が装甲車へと戻る。
個人のノルマを達成できなかった者もいるようで、暗い顔を浮かべているものがそれだろう。
コウは順調な結果を出し掘り出した遺物を並べる、一応ロッソも呼び出されてコウの隣に並んだ。
「えっと、班長・・・ロッソは・・・」
恐る恐るコウは班長にロッソの「物」としての分類を聞く。
「ああ・・・『レアモン』だよそいつは、お前さんのモンだ。・・・大事にしてやれよ」
「お、何?アタシってなんか貴重なカンジ?いやー照れるぜー♪」
「あ・・・はいっ、有難うございます」
ロッソは余り分かってない様子だったが、上機嫌だったのでよしとした。
「くそぉ」「コウの奴女なんか手に入れやがって」「十年はええぜ」
朝とはまた違った羨望と嫉妬の声が聞こえたのであった。
――午後16時20分、装甲車が作業員の集合場所である駐車場に到着し、作業員が降り、それぞれの家へと帰って行く。
「チニヴィさん、それじゃあっ」「バーイッ!じゃねーん♪」
「ああ、お二人とも気をつけてな」
コウとロッソがチニヴィに手を振って挨拶し、別方向へと別れる。
午後の作業時間中にチニヴィが『中型』を掘り出し無事「継続」してもらう事が出来、別れ際のその表情は希望が見えた物であった。
無論コウも「継続」し次の作業は三日後の予定であることを通知されている。
チニヴィは駐車場すぐ近くの町に住んでいる為家は近い。
ロッソとコウは駐車場の反対方向のやや遠くに見える町に向かって歩んで行った。
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二人はのんびりと町を目指して歩いている、が、会話らしい会話はお互いにしておらず、コウは何か言いたげにするも切り出せず、ロッソはロッソでマイペースに白衣をマントのようにたなびかせ髪を弄り鼻歌をすさみながら歩いていた。
(うーん・・・ロッソは大変な目にあっていたから何となく話しかけづらいな・・・今の移しかえられているその体を気に入ってなんか無いだろうし・・・)
「ロリード」である事を考えるとロッソは非道な事件の被害者である為、休憩時間の時のように気軽に声をかけづらい存在に思えていた。
「なーにぶつくさしてんだー?」
「えっううん・・・なんでもないよ・・・大丈夫だから」
「ふーん・・・」
そう思っているとロッソが様子を伺って声をかけ、慌ててはぐらかした。
その反応にロッソはつまらなさそうにする。
(うう・・・機嫌損ねちゃったかな、あんまりしゃべらないでいるのも駄目なのかな~)
ますます萎縮するコウ、歩くペースが少し遅くなるがロッソは何処吹く風でハイテンポで進んでいく。
「あ・・・待って」
置いてけぼりにならないよう慌てて走るコウ。
その時、足元の砂が低くなりズドンっと音が立ち、その直後コウの体が5メートル空中に浮いていた。
(えっ・・・?)
訳が分からぬ状態のコウにめがけて砂の中から大型の管状の姿が現す。『砂芋虫』だ。
砂中から衝撃を与えて相手を無防備な空に吹っ飛ばし、無数の牙を携え円状の口を大きく開きコウを喰らおうとする。
(・・・そんな・・・普段この辺には生息していないのに・・・)
もう駄目かとコウは目を瞑り、体を丸める。
「おりゃあっ!!」
「くっ・・・う・・・はっ?」
ロッソの掛け声が聞こえた後、何かに受け止められていた。
『砂芋虫』の口内であればもっと狭く滑っているはずだから違う。
恐る恐る目を開けるとロッソがいた、彼女に受け止められていたのだ、いわゆるお姫様抱っこで。
「あ・・・ロッソ・・・ありが、あうっ」
礼を言おうとすると手を開かれて地に落とされてしまい、ロッソはUターンしてまた歩き始める。
はっと気付くと『砂芋虫』が二つに切断されていた、先程のロッソの掛け声と共に鋭い蹴りの一撃で仕留められていたのだ。
コウは汚れを払い、ロッソに追いついて改めて声をかけた。
「ロッソ、その・・・ありがとう・・・ごめんね、手間かけさせて・・・」
「んー・・・別に」
謝辞も特に受け取らず、適当に返して歩み続ける。
コウは今度は離れないよう小走りしつつ続けて声を掛ける。
「ええと・・・すごいよロッソ、あんな大きな奴をやっつけるなんて」
「まー・・・アレなら元のアタシも捕まえて食ってたよ・・・ずっとちっさいヤツだったけど」
誉めてみても特に喜ばないが、過去の体験を話してはくれた。
ロッソの過去をコウは知りたくなったが今は聞くのをやめず町に向かった。
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『ジャリー』地区、町の一つ「セク・エー」。
コウの住んでいる町にようやく到着した。
「・・・ほーん」
もの珍しそうな目でロッソは町をキョロキョロと見回す、少なくともさっきよりは上機嫌になっていた。
「ロッソ、こっちだよ」
コウが声を掛けてロッソを連れ、町の中を歩き十字路を左に曲がる。
先には市場があり、多いとはいえないが人々が売り買いを行っている光景が広がっていた。
「おうコウ、お帰りぃ、どうしたんだいそのベッピンさんは」
「コウちゃんお帰り!女の人なんか連れちゃってまあ」
「意外とオメェも隅に置けねえなあウラヤマしいぜオイ」
「あはは・・・ちょっとね・・・しばらく一緒に暮らすんだ」
「!・・・うーっす♪」
市場の店主達に声を掛けられてコウは困り笑顔で返す。
ロッソも本物ではないとはいえ自身の容姿の賞賛とコウの言葉に更に上機嫌になり、人々に軽い挨拶を返す。
「あ、ロッソ。ちょっとここに寄ってこうよ」
歩いている途中、服屋に気付きコウが誘う声を掛ける。
決して大きい店ではないが手作りの華やかな外装が目をひいた。
「んー何、服買ってくれんの?」
「あっその、なんというか、ね」
やや期待したロッソに対しハッキリしない態度のコウだったが、とりあえず服屋に入る。
「いらっしゃ・・・あらコウ珍しいじゃないウチにくるなんて、・・・女の人までつれて」
店番のお姉さんが声を掛け、コウが来た事自体に驚くしかも女連れで。
「あーその、帽子コーナー見せてもらっていい?」
藪から棒なコウの注文にお姉さんが案内する。
ロッソは店内を歩き回り、自分の体格にあった衣服を勝手に物色し始める。
その様子を見てもう一人の店員の女性が声を掛ける。
「・・・コウくんのお知り合いですか?」
「んーまあそんな所かな、ついさっきあったばっかりだけど」
適当に返しつつハンガー付の服を体に重ねて鏡を見るロッソ。
ちらちらと見える本来の痴女同然の格好に店員が頬を赤く染める。
「あ、あの最近導入したサーチコーディネートシステムがございまして、お客様のお体に合わせた当店にございますお勧めの商品を絞ることも出来ますが・・・如何でしょうか」
最新鋭の便利なシステムを紹介し、勧める店員。
昔ながらに見えて客の為に使えるものを取り込み利用しているようだ。
「あー・・・それ気になるけどさ、服はなんか買って貰えないカンジだったからいいや、見るだけっ」
「左様でございますか・・・(子供に服買って貰う気だったんですかこのお姉さん・・・)」
一応コウを察して断るロッソに心の中で店員は傍目から見れば当然なツッコミを入れるのであった。
「ロッソー、これ・・・被ってみてっ」
「ん・・・?」
コウが走って何かを持ってくる、その手に握られていたのは大きめの茶色いテンガロンハットだった。
ロッソも手に取り初めて見る様子で手に持ち、少し触ったりひっくり返してみたりとした後、被ってみせた。
「・・・へぇ・・・ふん・・・ほーう」
「よくお似合いですよ」
鏡を見て、自分の見た目に少し足された帽子がなんだか不思議と似合っているように感じ、店員の後押しもあってか自然と笑みがこぼれていた。
「うん、いいんじゃね?貰っとくよこれ」
「よかった、気に入って貰えて」
コウも安堵し、店員達も嬉しそうな笑顔を浮かべる。
「でもなんでこれ買ってくれる気になったワケ?」
疑問に思った彼女にコウは返す。
「今日、2回も助けてもらったお礼・・・としては足りないかもだけど、僕からの感謝の気持ち・・・したいと思ったんだ」
「そう・・・・・・さんきゅ」
自分の意見は言わなかったがロッソはその気持ちをとりあえず素直に受け取ることにしたようだった。
「ふふ、それじゃあ私からもちょっとサービスでこれをプレゼントするわ」
お姉さんが横から取り出したるは白いミニスカートだった、それもかなり短い。
「さっきから見てたけどいくらなんでも狙いすぎてるわ、これを履けばちょうどいい塩梅よ」
「好きできてるんじゃねーやい、貰えるもんは貰っとくけど」
「えっ・・・じゃあコウくんがこれを・・・」
「ちっ違うよ、ロッソにはちょっと事情があるんだよ」
ロッソの格好についてひと騒ぎ起こりかけるもコウが必死の否定をし、「またまたーホントは好きなんでしょうと」お姉さん達がからかうが、ロッソは悪い気にはなっていないようだった。
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「ありがとうございましたー仲良くねー」
「また来てくださいねー」
購入したテンガロンハットとプレゼントしてもらったミニスカを身に付け外を闊歩するロッソの後をコウは
店員達の弄りに照れながら追い抜いていく。
「さっ僕の家にいこうっ」
気分を意気揚々とさせコウは自分の家まで案内する、ロッソはその言葉に「ん」とだけ返し、マイペースに付いていく。
服屋から左に曲がり、更にその先を右に曲がる。
すると2階建て屋上付、塀で囲まれたの四角いフォルムの白い石造りの建物が見えてくる。
「あれだよ」
「ほーん・・・」
ロッソは意外そうな表情でコウの自宅を見上げる。
コウは小さいリモコンを取り出し遠距離からドアのロックを解除し、足早に玄関の前に向かいドアを開ける。リモコン施錠だったことにロッソは驚いていた。
家の中に入り、靴を脱いで奥へと向かうコウを追いかけるようにロッソもヒールを脱いで続く。
玄関から軽く見回すと屋内の壁も白く、額縁入りの写真、小さいサボテンなどのインテリアが飾られ、亀裂なども入っていない立派な石造りであった。
「えーと、ようこそロッソ、我が家へ!といってももう僕以外いないんだけどね」
「!・・・そう」
部屋には中央に丸テーブル周りに一人用ソファー二つと三人掛けソファー一つ、床には丸く大きな絨毯が敷かれており、三人掛けソファーの正面にビジョンモニターが壁に取り付けられている。
コウはすでに上着を脱ぎ、盆に飲み物を入れたコップを持ってきておりそのまま三人掛けソファーの前のテーブルにそれを置き始める。
ロッソは特に遠慮する事無く帽子を取り、テーブル横の一人用ソファーに置いて白衣を適当に脱ぎ捨てながら三人掛けソファーの方にどさっと腰掛ける。
コウも三人掛けソファー・・・の左横にある一人用ソファーに座り自分の分のコップを取り、啜る。
「ふう・・・あ、どうぞ遠慮しないで」
「ん・・・・・・っ!?・・・クサッ!」
ロッソも勧めに応じて飲むと初めての味に怯んでしまう。
「あ、ごめん・・・苦手だった?サボテンジュースなんだけど」
初めて体験するサボテンジュースの味、いや味というよりは後に残る臭いにロッソは若干青ざめてしまい、コップをテーブルの上に戻し溜め息をついて天を仰いだ。
また雰囲気が喋り辛くなってしまうが、コウは勇気を振り絞って声を掛ける。
「ねえロッソ、その・・・改めてなんだけど質問していいかな、いくつかロッソの事を訊いても・・・」
休憩時間の時では不十分だったロッソの情報、コウ自身からの質問の許可が求められた。
「・・・いーよ、そんかわりアタシからもアンタのこと聞かせてよ。とりあえずあんたから訊ーていいから」
意外な程すんなりと許可が下り、コウは驚きつつも問答開始する。
「あっありがとう、それじゃあええとロッソは・・・どの辺りで暮らしてたの?」
まずは出身地の質問、ロッソは一本調子で答え始めた。
「ギリギリ中央地区の南西の岩場、ちっさくてボロい家で母ちゃんと暮らしてた、周りに人もいないし町は遠いわで不便なとこだよ」
「そうなんだ、・・・心配してるだろうね」
「死んだよもう、この体になる前に」
同情気味に返すと驚くほどあっさりと肉親の死を話した。
「ビンボーだったからねー毎日の飯にも困ってたよ、だからさっき言った砂芋虫や砂土竜を自分で仕留めて焼いて食ってたよ、父ちゃんはアタシが生まれる前から事故で亡くなってたし、母ちゃんも栄養足りなくなって病気で死んでいったよ」
そのまま身の上話を涙声になる事無く続けるロッソに、コウは頭を俯かせて話す。
「同じだ・・・僕も・・・母さんと父さんが死んじゃったんだ、工場での事故で二人同時に・・・玄関の所に有る写真に写ってるよ、この家を残して」
「ふーん・・・そっか」
コウも身の上話をし、空気が重くなっていくが、コウは振り払うように質問を続けた。
「ロッソはお母さんが死んでからもどうやって生き続けていたの、その身体になる前に・・・」
「変わんねーよさっき話したのと毎日獲物捕まえて喰ってたよ」
さっきの質問と同じである事にコウは驚き、ロッソは反応を見て続けた。
「強いていえばさ・・・『生きたかった』んだよ、生きる気持ちってーの?アタシはとにかく死にたくなかった、だから変わらず過ごしてた」
「生きる気持ち・・・」
「アンタだって同じじゃねーの?父ちゃんと母ちゃんが死んでもこの家に住んで働いて・・・生きたかったんじゃないの」
そうなのだろうか、父と母が死んだときは心から悲しんだけれど、絶望せず今こうして働いて家を守っているのは「生きる気持ち」があるからなんだろうか・・・コウはそう心の中で自問をしたのだった。
「じゃ、アタシからも質問、なんでアタシを住まわしてくれる気になったワケ?」
「え・・・いや・・・ロッソは大変な目にあった女の子だし、行く所も無いと思って・・・実際は「女の子」だから養えると思って・・・」
「ふーん、あの班長のおっさんがアタシが『レアモン』っつってたのは?」
「ええと遺物やパーツのカテゴリに当てはまらなかったからだよ、ドドメ班長は結構気前良くてさ、他の所の班長だったら『レアモン』が見つかったら取り上げて独り占めしたり、上に謙譲したりする事もあるんだ、そういう意味でもロッソは幸運だと思うよ」
「へーそれならそれで蹴飛ばしてたと思うけどね、んであんた何歳?」
「じゅ、11歳」
「勝った、アタシ12」
ロッソの番になり怒涛の質問に怯みつつもコウは答え、ロッソは適当に感想を言う。
「んーもう訊くことねーや・・・ズズ・・・くひっ」
彼女のほうからの質問は特に無くなり、ジュースにまた怯む様子をみせる。
コウは俯きつつまた質問を恐る恐る行った。
「その、ロッソはどうして・・・さっきの仕事場の時みたいに、ハイテンション?・・・じゃないの?」
「アンタがウジウジしてっから」
ぴしゃりと打ち付けられた言葉にコウは決定的なショックを受ける、心なしかロッソの声も不機嫌な物に聞こえたのもあってかもう質問する気にもなれなくなってしまった。
「・・・ビジョンつけていい?」
「うん・・・」
ロッソももう質問が来ないであろう事を確認しフォローする事無くビジョンの視聴許可を取り、コウも承諾するしかなかった。
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時間が経ち、コウがボーっとした様子で夕食を準備しロッソに振舞った。
といってもオートでレシピ通りに調理する知能付キッチンのロボットアームのお陰でコウは材料を準備する位で済んでいる。
特にロッソは料理の味に文句を言うでもなくバクバクと食べており、ぼんやりしているコウに何か言うことも無く食事を終わらせた。
また時間が経ち気付けば夜の十一時、コウはロッソを2階まで案内し家族で寝ていた寝室に入り、一足先にコウは就寝しようとしていた。
「じゃあ、ロッソ・・・その・・・おやすみ」
「ん」
変わらぬ様子でロッソは母の寝ていたベッドに腰掛け何時もの調子で返事をした。
灯りは付けっぱなしだがコウは目を瞑り、考え事をしている内に眠りについていた。
――深夜の2時頃
コウが不意に目が覚める、夢は見ていなかったが浅い眠りだった。
寝る時間が早過ぎたのか、嫌な事を忘れようと考えて無理矢理寝たからなのか、いい寝覚めではなかった。
「ん・・・あれ・・・」
ふと周りを見渡してロッソが居ない事に気づく。
トイレだろうか、コウは心配になり寝室から出て家の中を探した。
居間の灯りをつけても庭含めて居ない事を確認する、が、ロッソの付けていた帽子と白衣が見当たらない。
「まさか・・・」
嫌な予感がして玄関に向かうと、ロッソのヒールが残っていた、家のどこかに入ることが確認できた。
「後は・・・」
2階に再度向かい、掛けてある梯子を上り屋上への天井扉を開け外に出た。
「はぁ・・・はぁ・・・あっ」
屋上に顔を出し、キョロキョロと見回すとロッソがいた。
玄関のある方とは反対側の屋上の淵に座っており、月を見つめていた。
「うーっす」
ロッソも気付き、いつもの調子で声を掛けるコウは駆け寄って、横並びに座る。
「その・・・失望して出てったかと思った」
「ふーん・・・そりゃ悪りーね」
雑な謝りだったが、出て行く気はない様子であることを確認し、コウは心の中で安堵して二人で蒼白い月を見つめる。
静かで音も無い、風の心地よい夜を二人で過ごしはじめた。
「さっき言った『生きる気持ち』続きだけどさ、気持ちだけじゃどうしようもない事もあってさ、家の周りの喰える生物がもう全然無い時、初めて自分で街に向かって、歩み始めたんだ」
「え・・・・・・うん・・・」
ロッソからの突然の切り出しにコウはまたあっけにとられるが、とりあえず聞くことに徹する。
「けどもうその時点でアタシガリガリでさあ、ヨロヨロ歩いてってもぜんぜんたどり着かなくて泣きそうになったよ・・・死にたくないって・・・んでいつしか倒れて気を失ってたら・・・攫われてたらしいよ」
「気が付いてたらなんか知らないナイスバディな女の人のカラダになってて、すんごいパワーが湧いてくる感じを味わってた・・・それが今の、ロリードのアタシってワケ」
コウは真剣な目で彼女の成り立ちを聞き、表情を強張らせてゆく。
「ホントのアタシと引き離されてムカついたけど、死にたくないとは思ってたから、こんな形だけれど生き延びることはできたから、そういう意味ではお礼言うべきなのかな。だからアタシはアタシを探して元に戻って人生をまた生きるんだ、それが今の『生きる気持ち』なんだ」
ロッソはそう言いながら左手を月にかざし、手のひらを自分に向けてニギニギと指を動かす。
彼女の『生きる気持ち』をコウは知り、その場に立ち上がる。
「ロッソ、その・・・僕もロッソのカラダを探す手伝いをしていいかな」
コウからの願いに今度はロッソは驚いた様子になる。
「次の作業は三日後だし僕自身もすることがないから・・・それに僕はロッソに助けてもらったから、今度は僕が助ける番って思ったんだ、今のを聞いて」
夕方頃とはまるで違う表情を見せ、意思をロッソに伝える。
ロッソもどこか嬉しく思い表情に笑みが生まれていく。
「別に無理しなくたっていいんだぜぇ~♪」
「ううん、無理させて欲しいんだ、頑張らせて欲しいんだ」
昼間のようにおどけ、テンションが戻るロッソ。
コウも強い表情で答え、また彼女の隣に座る。
「・・・・・・・・・さんきゅ♪」
ロッソはそっと礼を言いコウを抱き寄せもう暫く二人で月に照らされているのであった。




