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1. 新米勇者です。ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします。

 今、勇者アルフレドの運命を支えているのは、彼の手に握られた一本の剣だけだった。


 数多の血に餓えた怪物達が周りを囲み、一歩ずつ、おもむろにではあるが、前進してその輪を縮めていた。


「おのれ、怪物どもめ!我こそが貴様らを葬り去ってくれるぞ!」


 牙をカチカチ鳴らしながら舌なめずりしている敵達を、アルフレドは威嚇した。


 しかしね。そりゃ、役目上“そうすべき”だから、剣も構えるし、雄々しく声も張りますけどね。

 内心は、できることなら、その場にしゃがみ込んで、ぴーぴー泣きながら、誰かに助けを呼びたいですよ。


 あ、名乗りおくれましたね。わたくし、アルフレド・ファルナーです。


 細っちょい剣を握りしめて、大勢の危険生物に食われかかってる主人公ですわ。


 そもそもね。こんな大多数の皆さんを、わたくしごときが倒せるわけないんですよ。

 2ヶ月前までは、勇者じゃなくて、賢者やってたんですからね。賢者といえば、超のつくインドアですよ。


 それなのに、実戦訓練の---訓練は転職から2ヶ月過ぎた頃に始まりました---3日目に、勇者協会コルペ支部の上司が命令を下したんです。「コルペ街道に出現するゴブリンの群れを、一人で滅ぼしたまえ」とね。


 スパルタ過ぎるとは思いませんか?剣の振るい方もよく分からないんですよ。昨日と一昨日、付き添ってくれていた勇者先生は、どこに行っちゃったんですかね?


 でもね。命令されたときは、何故だか、自分でもゴブリン倒せそうな気がしたんですよね。

 ま、コルペ街道に息巻きながら乗り込んで来たら、このざまでしたけどね。


「来るなら来い!たとえ、腕一本になろうとも、私は剣を振るい続けるぞ!」


 もう一度、強がってみたとき、ゴブリン集団の前列の一匹が、ぽんと飛び出してきて、腕を掴んできました。


 その握力といったら、腕がねじ切れそうでしたよ。

 脳天から爪先まで激痛が貫きましたね。


 あまりの痛さで意識が薄れて、数ヶ月前の記憶が走馬灯のように脳裏を駆け巡りました。


 そして、今の事態を引き起こした原因ともいえる記憶も蘇りました。

 賢者から勇者に転職するきっかけとなる出来事がね。

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