ある日の放課後の出来事
楓の葉が赤く染まり始めた秋の放課後の教室で、俺はまったりと読書をしていた。誰かに「秋といえば?」と聞かれたら、俺は「読書の秋」と答えるだろう。体育系の部活に所属しているクラスメイト達は、HRが終わると慌ただしく部活へと向かっていった。それ以外のクラスメイト達も、時間が経つにつれ、一人また一人と教室から出て行って、いつの間にか教室には俺一人となっていた。ドタドタと誰かの廊下を走る音が聞こえたかと思うと、俺の教室の前でその音は止まった。そして、俺のいる教室に入ってきた人物は、やはり先程廊下を走っていたのだろう。息が少し乱れていた。忘れ物でもしたのだろうか?まあ、俺にはどうでもいい事だ。読書の邪魔をしない人物ならば。しかし、教室に入ってきた人物は、一直線に俺の机に向かってきて僕の前の席の椅子を回転させ、僕の方に向けて腰を下ろした。
「また、読書してるのか? しかも、難しそうな本読んでるし、優って中学の時より本の虫になってないか?」
聞き覚えのある声に、俺は本を読むのを止め顔を上げる。
「やっぱり勇介か。でも、本の虫というのは、僕にとっては褒め言葉だよ。で、俺の読書を邪魔しに来ただけなら帰ってくれるかな? ああ、こうしている間にも十秒も無駄になった」
俺の前にいたのは、幼馴染みの勇介だった。
「細かいよ。用事ならある。優をホーミー部に勧誘するために来た!」
ホーミー部? ホーミー部なんて聞いたことがない。同好会にもそんな会あったなんて記憶してないし。というか、
「……勇介って部活に入ってたっけ?」
勇介は俺と同じで帰宅部だったはずだ。まあ、仮に入っていたとしても、どうでもいいのだが。
「いや、新しい部活創ろうかと思って。だって高校生っていえば、青春だろ? 優は部活入ってないし、部員にはもってこいってわけだよ。あ、もちろん俺が部長な。でも、副部長の座ならまだ空いてるぜ」
……青春のために部活を新しく作る? 勇介って馬鹿なの? いや、阿保か?
「別に新しい部活作らなくても、勇介がどこかの部活に入ればいいだろ」
「いや、絶対新しい部活作るんだ。だって、今日の占いで『思い立ったことを途中で諦めると、明日一日不幸に見舞われるでしょう』って結果だったんだぞ。この部活を作ろうって思いついたの今日なんだ」
明日一日不幸にならないために諦めないって、その占いの信者かよ。というか、理由が不純すぎる。
「ホーミー部って何をする部活なんだ?」
「ホーミーする」
「だから、ホーミーって何なんだ?」
「ホーミーはホーミーだよ。そんなことも知らないの?」
無邪気に答える勇介に、俺は何をするのか聞いてるんだよと、心の中で愚痴る。
「ホーミーというのは運動部なのか? それとも文化部か?」
「ホーミー部だよ」
「……」
ダメだこいつ。
「ホーミー部を作って、青春を謳歌しようよ」
俺は視線を勇介から逃げるように窓を見ると、晴れていたが雨も降っていた。天気雨だ。この場から早く逃げたいのに、傘を持ってない俺はまだ帰れない。
ホーミーって結局何なんだ!!
*「ホーミー」とは、アルタイ山脈周辺民族の間に伝わる喉歌と呼ばれる歌唱法のうち、西部オイラト諸族に伝わるものの呼称。一般に、緊張した喉から発せられる笛のような声のことを指します。
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