いつもの光景
「たいちょおおおーーーー」
「ええい! ひっつくな鬱陶しい」
「いやだぁん。い・け・ず。はあん、この筋肉たまらん……」
「擦り寄るなといっているだろうが。シェダー軍曹」
「いいじゃないですか少しぐらい触っても」
こんな二人のやりとりは東部司令部の名物となっている。
筋肉ダルマにひっつこうとしている少女はマリー・シェダー軍曹。この春東部司令部へ配属されたばかりの少女である。短めに揃えられた茶色の髪は庶民的なのだが、生まれは貴族。父親は侯爵である。愛らしいといえば愛らしいが美人というわけでもなくかといって不細工とまではいかない中途半端さを自分で売りにしている。唯一の特徴といえばそばかすが多めだということぐらいだろう。
貴族令嬢のはずの彼女かこんな辺鄙な軍施設に配属されたのには理由があった。
「いつになったら私と結婚してくださるの?」
「丁重にお断りしたはずだが」
「だって好きなんだもん。だからこうしてパパにお願いして軍にいれてもらったんじゃない。たいちょうが了承してくれない限りわたしはそばを離れませんからね!」
彼女は重篤なストーカーなのであった。権力を振りかざし、いかんなく毎日を隊長のストーカーとしてすごしていた。