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第五話

これはわたし、篠原藍樹の処女作になります。混乱部分がほんのすこーしありますが、どうかお気になさらずに。

よければ、感想欄にてお知らせください。

変えます

こちらがFC2ブログとなります↓

http://lastorder41.blog.fc2.com/

『展示中。自作ラノベ&詩!!』

是非のぞいてみてください

空から人が落ちてきた。湖の真ん中へ一直線に突っ込んでいく。

 私は何が起きたか分からなかった。アバターもおろおろしている。偶然、上を見上げて太陽を探していたら黒い影がこちらに向かって落ちてきたのだ。

 近づいてみると湖の波紋が大きく広がっていた。

――いくらなんでも、リアルに作りすぎだろう

 落ちてきた時にアバター名のロゴが見えたので間違いなく人なのだが、浮いてこない。

 着水地点の付近に泡がプクプクと浮かんでいる。消えた。

 不安になった私は湖に入って探すことにした。アバターを動かし、水の中に頭まで入る。酸素ゲージでもあるかと思ったが、そういったものも見当たらない。とりあえず、アバターが溺れて死ぬような心配はなさそうだ。

【ハナウタ〉〉 あ】

 水中でもチャットは出来るようだ。喋るわけではないので当たり前といえば当たり前か。

 私は湖の真ん中付近まで潜っていった。

 泳いでるわけではなく、水中ウォーキングみたいなもので、ジャンプ程度しか出来ない。手で掻き分け、掻き分けして前に進むと男性アバターが苦しそうにもがいているのが見えた。

【ハナウタ〉〉 大丈夫? ここじゃ溺れることもないんだよ?】

 チャットを開いて言ってみたが、返事が無い。顔をますます青くするだけだ。こちらには少しばかり気付いているみたいで、二秒ほど視線が合う。

彼のアバターの様子がおかしい。表情からも分かるように本当に死にかけている。

ついに気絶した。

【ハナウタ〉〉 え!?】

 驚きを隠せないが、急いで岸まで持ち帰ることにした。

 しかし、妙な部分でリアルなこのゲームはアバターの重量も再現しているみたいで、ほんの少ししか動かない。必死で前に進めと念じるがアバターが歩かない。

 私は頭が真っ白になった。誰か助けに来てほしいと思うがこんな湖の底じゃ誰も来ない。

 彼はただのアバターのはずなのに溺れて気絶した。

 訳が分からなくなり、私は何を血迷ったか彼を岩の上に寝かせ、人工呼吸をした。

 アレの事を思い出したが、これはゲームだから大丈夫だと言い聞かせ、何とか堪える。


【NO・10〉〉 おお! やりますねぇ~、アバターとはいえキスなんて】

【ハナウタ〉〉 ティエちゃん!】

 恥ずかしいという思いより先に、人が来てくれたことに喜んだ。どうしているのか、という疑問もあるにはあったが、今は人命救助が先なので特に気にしない。

【ハナウタ〉〉 お願い! この人を岸まで運ぼう!】 

【NO・10〉〉 そうですね。そろそろ命に関わりそうなので移動します】

 ティエはそう言うと私達に近づいてきた。

 画面が暗転し、一瞬で岸辺に辿り着いていた。何が起こったか分からず、私は口を大きく開けて声も出せずにいた。

【NO・10〉〉 ……やりすぎました。マスターの本体が半分死んでます】

【ハナウタ〉〉 死んでる!? マスター!?】

【NO・10〉〉 口が滑りました。記憶から完全に抹消して下さい】

【ハナウタ〉〉 無理だよ……】

 TAIなら出来るのかもしれないが、私は人間だ。

【NO・10〉〉 しばらくしたら起きるでしょう。誰か質問ありますか?】

【ハナウタ〉〉 はーい】

 アバターが元気よく手を挙げる。

【NO・10〉〉 どうぞ】

【ハナウタ〉〉 本当にこの人が制作者なの? なんで落ちてきたの?】

【NO・10〉〉 はい。正真正銘の『マスター』です。そして、勝手に空から落ちました】

【ハナウタ〉〉 人は勝手に空から落ちてこないよ!?】

【NO・10〉〉 言い方を間違えました。マスターが空を飛ばないので落ちました】

【ハナウタ〉〉 このゲームじゃ誰も飛べないよ!】

【NO・10〉〉 TAIは別です】

【ハナウタ〉〉 あ、そうだったね……】

 私はティエがコールだと言って逃げる際、飛んでから消えたのを思い出した。

【NO・10〉〉 ………ん? あ、本体が起きましたんで逃げます。では!】

 またもや、消えてしまった。主人に怒られる前に姿を消したということだろうか。

 ティエのように逃げるのもなんなので、私は隣で気絶している彼を画面越しではあるが眺めることにした。

アバター名は『クロ』。名前の由来は分からない。本名のもじりだろうか。

 制作者なので姿、形を変えているかもしれないが、彼が起きるまでアバターの顔の観察は続いた。





【クロ〉〉 くっそ~~】

 ようやく復活したみたいだ。

【ハナウタ〉〉 こんばんは。マスターさん】

【クロ〉〉 こんばんは。ティエ知りません?】

【ハナウタ〉〉 逃げたよ? 本体が起きたとか言って消えちゃった】

【クロ〉〉 今度会ったらタダじゃすまさないぞ………】

 アバターでもただならぬ覚悟が伝わってきた。

【ハナウタ〉〉 ふふ、彼女なりの照れ隠しにも見えるよ?】

【クロ〉〉 あれが? 意味が分からん。会う度に悪戯と称して俺の命を奪うようなことするのに…………俺に恨みでもあるのか?】

 彼はかなり憤慨しているようで、さっきから怒ってばかりだ。話し相手が誰かも分からずにティエの愚痴をこぼしているといった様子だ。

【ハナウタ〉〉 ところで、マスターさん】

【クロ〉〉 ……なんで、知ってる?】

 ようやくそのことに気付いたようだ。

【ハナウタ〉〉 ティエちゃんから聞きました。起きた時にも言いましたよ?】

【クロ〉〉 ごめんなさい。気がつきませんでした】

【ハナウタ〉〉 以外に素直ですね。怒りっぽいのかと思いました】

【クロ〉〉 ティエだけだ。いっつも困らされているからな】

【ハナウタ〉〉 きっと、照れてるんだろうな】

【クロ〉〉 何に照れるんだ】

【ハナウタ〉〉 あれ? TAIの産みの親って聞いたけど彼女達の性格分かってないの?】

 溜め口になっているが、年はそう遠くなさそうなのでそのまま続けることにした。

 彼は話してよいものかといった表情で唸っている。

 数秒で顔をあげると私のアバターと向き合って言った。

【クロ〉〉 ………内緒にしてくれるか? 俺の事とTAIの秘密】

【ハナウタ〉〉 私には話すような友達もいないから気にしなくていいよ】

【クロ〉〉 え?】

 しまった。つい本音をチャットに打ってしまった。

【ハナウタ〉〉 ごめんね。今のは忘れて】

【クロ〉〉 いや、俺もフレンド登録した奴くらいならいるが現実の友達はいない】

【ハナウタ〉〉 ……ああ、ティエちゃんが言ってたのはこの事もなのかな?】

【クロ〉〉 何の話だ? あいつがまた余計な事を言ったのか?】

【ハナウタ〉〉 ううん。貴方はマスターと気が合いそうですねって】

【クロ〉〉 俺もそんなことを言われたが、どこがなんだ?】

【ハナウタ〉〉 一つ目は、私もマスターも友達いないでしょ?】

【クロ〉〉 マスターはやめてくれ、クロでいい】

【ハナウタ〉〉 そう。じゃあ、クロ。さっき貴方は友達いないって言ったでしょ?】

【クロ〉〉 ……ああ】

 肯定したくないのかな? 自分から言ってたことなのに。

【ハナウタ〉〉 私も家族はいるけどひきこもりだしね。機会が無いの】

 なぜ私は本気になってこのゲームの制作者に話しているのだろうか。もう打ってしまった後なので、後悔しても遅いけど、そう思った。

【クロ〉〉 え……なんだ、そんな綺麗な顔立ちなのにいじめでもあったのか?】

 私は彼にもまさか綺麗だ、などと言われると思わなかったため顔が真っ赤になった。

 アバターも茹でダコ状態だ。

【ハナウタ〉〉 綺麗って……ティエちゃんにも言われたけどそんなことないよ?】

【クロ〉〉 あ、ごめん。なんか顔の事で気にしてた?】

【ハナウタ〉〉 ううん。そうじゃないよ】

 今の言葉で私はサッと顔が無表情になった。いくらなんでも鈍感過ぎると思う。

【クロ〉〉 そうか? 何か悪い事ばっかりしてるような気がするな…………お詫びをさせてもらっていいか? なんか俺の気が済まなくなってきた】

【ハナウタ〉〉 いいよ。お詫びなんて】

【クロ〉〉 こればっかりはな~……ちょっと待っててくれ】

【ハナウタ〉〉 え、うん】

 彼はそう言うとアバターを一時休止状態にした。

 私は色々と話が聞けたりするので充分だが、彼はそれだと気に入らないらしい。そういえば、チャットならばアレは大丈夫みたいだ

 一分後、戻って来たらしくアバターが再び動き出した。

【クロ〉〉 俺の家に来て。明日の一一時。場所はメールでお前に地図を送っといたから】

【ハナウタ〉〉 メアドを勝手に使うって職権乱用ね…。それは出頭命令?】

【クロ〉〉 警戒しなくていい。やるのはおもてなしみたいなもんだ。俺は明日も忙しいからそんなに会う時間ないけど】

【ハナウタ〉〉 忙しいならいいよ。べつに】

 それにアレのことがある。今は大丈夫だが、現実の男性なんかに会ったらどうなることか……。

【クロ〉〉 じゃあ、こいよ】

【ハナウタ〉〉 私の話、聞いてた!?】

 彼のアバターが消えた。ティエと一緒で人の話を聞けないらしい。

 改めて時計を見ると深夜零時である。

 私もログアウトし、メールを見て書いてある場所をメモしてからPCを片づけた。輪もアタッシュケースにきちんと入れておくのを忘れない。

 明りを消し、ベッドにゴロンと寝転がった。私は今日の出来事を思い出す。

――来いって言われたけど、どうしよう?

 私はアレの所為で長時間、人の近くにいれない。アレは、例えで言うと呪いみたいなものだ。

思い出すだけでおぞましい気分になる。

「大丈夫、よね。そんなに長くいるわけでもないから」

 確認するように小さく言った。不安はあるが、久しぶりに誰かに会うのもいいだろう。


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