第三話
これはわたし、篠原藍樹の処女作になります。混乱部分がほんのすこーしありますが、どうかお気になさらずに。
よければ、感想欄にてお知らせください。
変えます
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『展示中。自作ラノベ&詩!!』
是非のぞいてみてください
午後一八時頃、速達でキットが段ボールに入れられて届いた。重い。
家には私以外いないため、自分の部屋まで重いものを運ぶ羽目になってしまった。
「こういう時、男手があればな~」
一人っ子で父親も滅多に帰って来ないのにそんなことをぼやいた。
父は会社の社長だ。会社がまだ成功していないせいか、よく出張している。
私も父の会社の株を見たりしているが、それを買う事は無い。なぜならば、撃沈寸前にしか見えないからだ。頑張っていても上手くいってないのがよく分かる。
部屋に戻った私は段ボールを開け、中からキットを――
「なぜアタッシュケースが丸ごと入ってるの?」
なぜか銀のアタッシュケースが入ってあった。壊れやすいのだろうか。
けど、気にしてもしょうがないので、パチンと留め金を外し、中身を覗いた。
「おお、ティエちゃんが言ってた通りだ!」
変な感動を覚えた。
入ってあったのは黒光りする大きい輪が四個と白の小さい輪が一個。
黒の方が手足、白が首に装着する輪だろう。
取り出すと、見た目ほど重くはなかった。重いのはアタッシュケースだけだったらしい。
あちこち触り回ると、輪は伸縮ができ、周りはラバーのようなもので覆われているのがよくわかった。
「あ、説明書とワイヤレス忘れてた」
ケースをゴソゴソと探ると少し大きめのUSBメモリと紙が一枚出てきた。
メモリがワイヤレスプラグのはずなので、予め近くにあったUSBポートに差しておく。
次に一ページしかない説明書を読んだ。
「なになに……」
書いてあるのは装着の仕方と伸縮機構の説明と注意。
裏面を見ると等身大の鏡で自分の全体像を見ておいて下さいと赤文字で書いてある。
意味は分からないが、洗面所に置いてある鏡を最大限使ってみることにした。
私は部屋から出て、この家で一番大きな鏡が置いてある洗面所に向かった。
一〇秒後、残念なことが発覚した。
自分の上半身しか鏡に写らない。私は仕方が無く洗面台に登って、バランスをうまくとりながら再び鏡に映る自分を見る。
「……もしかして太った?」
自分の姿にショックを受けてしまう。
私だって年頃の女子高校生だ。外に出るわけではないといっても、それなりに気になる。
どんよりとしながら部屋に戻った。
やる気を失いながらも輪を下から順番に付けていく。その際、靴下が邪魔だったため、脱ぎ捨てた。袖も捲っておく。
準備を終えると、デスクトップにある〝インベンション〟のアイコンにカーソルを合わせた。カチカチと二回押す。
起動。
出てきたのは準備したかどうか確認しろという文章。画面をスクロールし、確認ボタンを押す。
接続確認中…。 完了!
アバター名を入力し、OKボタンを恐る恐る押した。
ゴクッと喉を鳴らし、私はゲームを開始する。どうやらそのまま開始されるようだ。
「仮想世界のオンラインでしょ?アバターは?」
アバターが無いと仮想世界の意味が無い。全員同じアバターだとかも論外だ。
だが、次の瞬間にそんな疑問は吹き飛び、私は思わず驚きの声をあげた。
目の前に自分そっくりのアバターが立っている。
その姿はまるで鏡に――
「説明書の自分の全体像を鏡で見ろってこういう事!?」
声が引っくり返った。理屈は分からないが、おそらくそういう事だろう。
直前に見た自分の姿を覚えているだけでアバターが出来上がるらしい。
感嘆の声しか出ない。他のユーザーも同じリアクションをしているのが容易に想像できた。
私が「うぅむ」と唸っていると何とアバターも唸るような仕草をした。
「はぁっ!?」
私は何も押してはいない。それ以前に、操作の仕方を知らない。
まるでSFだ。理屈も何も分からないのに目の前では不思議な事ばかりが起こる。
使い方は分かるが、一体どのような仕組みなのか理解できない。
首を捻っていると、いきなりチャット画面が出た。アバターには吹き出しみたいなロゴが発生している。
【NO・10〉〉遅れました。すみません】
出てきたのはティエだった。説明の時と同じ姿だが、音声はない。
【ハナウタ〉〉こんにちは、ティエちゃん】
【NO・10〉〉 こんにちは。あれ? 使い方説明してないですけど、分かるんですか?】
私がアバターで軽くお辞儀をしたりしているのを見て、少しばかり驚いているようだ。
【ハナウタ〉〉 よくは分かってないわ。理屈抜きでならなんとなく理解したけどね】
【NO・10〉〉 充分ですよ。説明はいらないみたいですね?】
【ハナウタ〉〉 確認だけでいいかな? これは私が前に進もうとか思ったらその通りに動くのよね?】
【NO・10〉〉 そうです。特定の脳波のみに輪が反応して、アバターが動きます】
【ハナウタ〉〉 ふ~ん。脳波ね】
【NO・10〉〉 はい。……声から想像した通りお綺麗ですね。あ、服も自由に変更できるので、よかったら広場の服屋を覗いて行って下さい】
可愛すぎる彼女が綺麗などと言うと嫌味に聞こえるが、悪気はないのだろう。
表情から見ても、きっとお世辞のつもりではないのが分かった。
【ハナウタ〉〉 分かったわ。ありがとうね。ところで今は忙しくないの?】
【NO・10〉〉 ええ。姉や兄がやっています。私は朝と昼の受け持ちなんで、今はこういう案内くらいですね】
【ハナウタ〉〉 質問! ティエちゃんが受け持ちした人は何人だったの?】
【NO・10〉〉 二四人です。昼過ぎからパッタリで……】
【ハナウタ〉〉 私の後に一人か。少ないのかな?】
私が疑問に思っていると、アバターが首を傾げた。
【NO・10〉〉 思ったより少ないですね。やっぱり条件が厳しかったのでしょうか?】
【ハナウタ〉〉 条件? ああ、脳の処理速度が速いとかってやつ?】
【NO・10〉〉 はい。あれはこのゲームが認知できるかどうかの必須条件です】
【ハナウタ〉〉 どういうこと?】
【NO・10〉〉 説明メールに書いてある通り、インベンションβ版を視覚できない、もしくはノイズにしか見えないっていう人がいるんです】
【ハナウタ〉〉 ???】
【NO・10〉〉 脳波の事もあるんですけど、例えば、元気すぎる人だと駄目です】
【ハナウタ〉〉 なんで? 元気に動くと脳波が弱くなるとか?】
【NO・10〉〉 いえ。個人差はあまりないのでそういうことではありません】
【ハナウタ〉〉 じゃあ、何?】
【NO・10〉〉 『マスター』が隠しとけって言ってましたけど、どうせばれるからいっか……他言無用ですよ?】
【ハナウタ〉〉 秘密を誰かにばらすようなことはしないよ】
アバターがやや苦笑気味の顔をしている。私は現実にも仮想にも友達がいないから、言う機会などないというのが本音だからだろう。
【NO・10〉〉 では、言います。実は、条件がもう一つあります】
【ハナウタ〉〉 え!? どういう事? もう一つ?】
【NO・10〉〉 はい。その条件とは心に傷があることです】
【ハナウタ〉〉 心に傷があるっていうと深刻な悩みとか?】
【NO・10〉〉 他にもトラウマとかストレスが多い人が当てはまります。どんな人でも必ず苦悩の一つや二つありますが、心に傷があるいう言い方をするとそれに当てはまる人が激減します。この言い方に当てはまるのはそのトラウマから立ち直る可能性が低い人という意味になっちゃうからなんですよ】
私は思わずトラウマという言葉にドキッとした。アバターはあまり反応していない。いくら感情を読み取るといっても基本的なものだけなようだ。
【ハナウタ〉〉 じゃあ、ここにいる人はそういう心の傷が必ずあるんだ……】
【NO・10〉〉 マスターはそのほうが友達が出来るかもとか思っているんでしょうか?私でもこのシステムを作った理由が分からないです】
【ハナウタ〉〉 ……『マスター』って人がティエちゃん達作ったの?】
【NO・10〉〉 そうですよ? 一人で……って、しまった!】
【ハナウタ〉〉 途中で気付いたのなら打たなかったらいいのに】
【NO・10〉〉 いえ。私達TAIのはチャットというより普通に話しているようなものなので、無理ですね】
【ハナウタ〉〉 人工知能だから、話すもチャットも同じようなものだと?】
【NO・10〉〉 はい】
ティエは大きく頷いて肯定した。
【ハナウタ〉〉 そうなんだ。どうりで打つのが速いと思ったわ。返信に一秒もかかってないもの。おかしいと思った~】
【NO・10〉〉 そういうハナウタさんもかなり速いですよ?】
【ハナウタ〉〉 私は毎日PCを触ってるからね】
【NO・10〉〉 へぇ……じゃあ、『マスター』と気が合うかもしれませんね】
【ハナウタ〉〉 制作者もここに来てるの?】
【NO・10〉〉 ……あ、コールが掛かったんで行きますね】
【ハナウタ〉〉 逃げた!?】
【NO・10〉〉 では!】
そう言うとティエは虚空に消えてしまった。どうやら逃げられてしまったようだ。
私は仕方なく服屋を目指して広場の方へ歩きだした。
――しまった、どっちの道か分からない