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第二話

これはわたし、篠原藍樹の処女作になります。混乱部分がほんのすこーしありますが、どうかお気になさらずに。

よければ、感想欄にてお知らせください。

変えます

こちらがFC2ブログとなります↓

http://lastorder41.blog.fc2.com/

『展示中。自作ラノベ&詩!!』

是非のぞいてみてください

夏休み。世間では今日から夏休みだ。

「私には何の関係もないけどね」

 カレンダーを一瞥し、吐き捨てるように言った。

 私、綾切 繍花は東京都内在住の高校二年生、一七歳である。だが、高校には通っていない。

 なぜならば絶賛ひきこもりになっているからだ。そのため、毎日が休みである。

「株……。か~BU~♪」

 朝起きて、四台配置してある自作PCを早速立ち上げる。

 周りには配線コードや機器類が散らばっていて、お世辞にも片付いているとは言えない。それなのに、PC付近だけは綺麗なので不思議だ。

 数秒で四つ全ての画面に光が灯る。自作した時、仕様で早く立ち上がるようにした。

 今からするのは毎日の日課。仕事として、株式の取引だ。夜は時々オークションをしている。

 私はPCの前の椅子に腰かけて、しばらく四台全てに表示されている数字、グラフなどを見た。

 株による年収は一般サラリーマンより多い時もあった。そんなこともあるせいかお金には困らないので、私なんかは生活も自分で生計を立てている。おかげで、私がひきこもっていても両親は電気代などを払えば文句を言わない。


 二時間後、やっと株式の取り引きを終え、デスクトップに戻るとメールアイコンが光っていた。

「ん? 久しぶりにメール来てる」

 私にメールが送られてくる事はほとんどない。

 ひきこもりだからという理由もあるが、私は株とオークション以外にインターネットをほとんど使わないため、個人用に使っているメールの受信率がかなり低い。ついでに言っておくと仕事用のメールは膨大だ。

 このメールに少なからず疑念を持った私は新着メールの欄で自作のウィルス撃退プログラムを実行してみる。

 しかし、

「ん~? ウィルスチェックしたのに表示がないのはなぜかな?」

 応答しない。それは私にとって一大事だった。

 私はPC関係の機械、プログラムは全て自作しているため、腕はそこらのシステムエンジニアなんかより上だと自負している。

 それなのにチェックが完了するわけでもなく、応答しないなんて自分の沽券に関わるような問題だ。

 念のため、主要パソコン一台だけにしてメールを見ることにした。

 ワンクリックし、添付されていたファイルを開く。

 入っていたのは、ウィルスではなくネット漬けの私でも知らないウィザードプログラムだった。

 メール自体に差出人のメアドが無い。どこのハッカーだよと思い、むきになって調べてみると外国サーバーが複数使用された痕跡があった。これでは送り主が誰か特定できない。

 私は犯人捜しを諦めて、本文を見てみた。



本文:皆さん初めまして。私は『マスター』と呼ばれるものです。

   今回のメールには私が作らせて頂いたβ版〝インベンション〟を添付しております。

   これは無料オンライン仮想アバターチャットツールです。これを東京都内の

   中高生十万人に配布しました。

   登録は明日まで受け付けております。先着ではないので、奮ってご参加ください。

   期間は今日から八月二十日までです。

   内容は主に仮想世界でのチャットですが、イベントゲームもあります。

   特別イベントとして『発表会』というものを合計二回やります。

   これは簡単な創作大会をしてもらいます。

   これに参加し、上位五名に選ばれれば賞金等がもらえます。

   賞金は十万円、もしくはそれに相当する何かです。

   上位五名の選び方は参加した人のみに伝えます。

   β版の体験報酬は『発表会』による賞金のみです。

   

 最重要…絶対に読んで下さい。

 →このツールの使用には特別な条件があります。

 一つ目、暴言などが目立つ時は強制脱退の可能性があります

 二つ目、中高生で脳の処理速度が速い方のみが使えます。それ以外の方には申し訳ないですが画面がノイズ又はドット画にしか見えません

 三つ目、β版〝インベンション〟で週四日以上ログインして遊ぶとイベント参加の権利が与えられます

 四つ目、管理者への問い合わせは不可能です。

 五つ目、コピーしたり他人への譲渡をするとウィルス爆弾になります。この場合の責任は個人で負って下さい



 第一印象がひどく雑な文章だと思った。一見丁寧そうだが、文の構成がなっていない。

 この後は、長々とこのツールの細かい説明や注意事項が書かれているようだ。

 私はそれらを軽く無視し、必要事項だけを読んでいた。

「いくら株をやって稼いでいるって言ったって、十万は大きいよね」

 椅子で背伸びをしながら呟いた。


――十万人の中で参加する人ってどのくらいかな?少ないような気がする…。脳の処理速度の速い方っていうのがどういう判断かいまいち分からないけど。ま、そもそも胡散臭いうえに犯罪臭プンプンだからね。それほど入らないでしょ。


株はハイリスクハイリターンで大金が動く。そのため、デメリットも大きい。

その点、この〝インベンション〟たるチャットツールの賞金稼ぎにはお金を失う可能性があるようなことがないらしい。

 週四日ログインしないと参加できないが、そのくらいは暇つぶしの時間を当てればいいだろう。夏の間限定の小遣い稼ぎだ。下手するとバイトするよりも収入が多くなる。

「お金に困っているわけじゃないけど、暴落した時に使う貯金に当てよ~」

参加することに決め、添付されていた開始ウィザードからダウンロードする。

時間がかかりそうなので、私はリビングに麦茶を取りに行った。



私は麦茶と昼飯を取って自室に帰ってきた。昼飯は親が作り置きをしてくれた物だ。

「どれどれ」

 一〇〇%の文字が出ている。完了したらしい。×ボタンをクリックし、インストールをしたばかりの〝インベンション〟のアイコンを押した。


~ようこそ~

  この度はβ版〝インベンション〟をダウンロードして頂きありがとうございます。

  名前、年齢、生年月日、住所、メールアドレスなどの登録をよろしくお願いします。

  赤い*がついた項目は必ず記入して下さい。


 私は赤の項目だけを記入し、Enterキーを押す。

 すると、出てきたのはあなたにメールを送信しましたという文字。

 個人メールを確認してみると確かに届いている。メールマガジンなどは配布されないそうなのでこの一回きりだろう。

 書いてある内容は専用キットを近日中に送るのでそれまで待って下さい、とのこと。

 東京都の人間十万人に送った、ということはそれなりに時間がかかるはずなのだが、2、3日で全員に配布するつもりらしい。会社名も送り主の名も書いていないメールに添付されていたゲームだからあまりダウンロードされないだろうということだろうか。見るからに犯罪臭がするし、そもそも東京都内限定でメールを送るなど不可能だ。ランダムに日本全国に配るというならば、ある程度の説明がつくが、これじゃあ――

 と、そこまで考えを至らせた時だった。

「こんにちは」

「は?」

「ああ、パソコンのほうです。マイク等があったらそれを使ってもらえるとありがたいですね」

 丁寧な口調の少女の声が聞こえてきた。音量は0のはずなのに、PCから声が聞こえる。

とりあえず、マイクを使えと言われたので小型マイク付きヘッドフォンを被った。

「驚かせてすみません。〝インベンション〟の簡単な補足説明に来ました」

「え……と?」

「申し遅れました。私は少女妖精型TAIの『ティエ』と申します」

 急な展開に付いていけない。PCに上半身だけ写っている少女が何者かさっぱりだ。

 よく見ると、勝手に〝インベンション〟が開いていた。ここに写っている。

「TAI?」

「はい。AI――つまりは人工知能です。true artificial intelligenceの略ですね」

 AIっていうのはデータを構築したり、訂正したりする程度の学習機能を持ったプログラムの事だ。こんなに人間味のあるAIなど聞いたことがない。

「質問いいかな?」

「どうぞ」

「本当に人間じゃないの? どこかで喋っているとか」

「毎回言われますね。今日で二三回目です」

「二三回目? あのゲームの参加者ってそんなに人が少ないの?」

 よほど警戒心のない人か、ただの暇人しかやっていない、とは思っていたが十万人中の二十三人しかやっていないという事には驚いた。

「私ももっと多いと思っていたんですけどね、疑い深い人やPC自体が苦手な方も多いみたいで意外に少ないんですよ」

私はこの『ティエ』という自称AIという女の子が人間ではないという事が未だに信じれなかった。

『ティエ』という少女の容姿は黒真珠のような瞳以外が全て白だった。ベージュ色の髪に白いワンピース。それに折りたたんである大きな白銀の翼は天使を彷彿させる。

 彼女の容姿はグラフィックだろうが素直に可愛いと思える美しさだった。

「どうかしました?」

「ううん。まだ貴方が人間じゃないと信じられないなと思っただけよ」

「仕方ないですよね。…………え、と、時間が迫ってきているので説明いいですか?」

「あ、ごめんね。どうぞ」

「では、ご説明します――メールに書いてありました通りで大体はいいです。しかし、専用キットの事や『発表会』等のイベントについての内容が薄かったので、こうして私が補足のためにユーザーのもとを訪れています」

 彼女は礼儀正しさがある雰囲気を漂わせて説明に入った。

「……最初はキットについてです。キットは手足に付ける輪のようなものが四個と首に付ける輪が一つ、それとワイヤレスプラグが同封されています。これらを全て装着して頂きプレイしてもらう形になります。ワイヤレスプラグはUSBポートに付けといて下さい。どちらも〝インベンション〟プレイ中に外さないで下さいね。効果については使ってからのお楽しみです」

「え?説明なのに言わないの?」

「はい」

さも当然といった感じで頷いている。

「続けます。次に『発表会』です。創作作文で私達TAIの判定が高い上位五位に賞金等のプレゼントがあります。他のイベントも私達がスタッフとして審判や仕込みをします。『発表会』の作文は短くても長くても結構です。短くても内容が良ければいいので。唯一の注意事項は週四日以上ログインし続けないと参加権利を失う事ですね。イベントの一週間前からの制限ですけど、忘れていると痛い目に会います」

「ティエちゃん以外にもTAIはいるの?」

「はい。私以外に六人。合計七人です。誰か二人以上は必ず〝インベンション〟にいます」

 説明とはいえ、久しぶりに人と話すのは楽しく思うと同時に、底冷えするような恐怖が蘇えってきた。私は人と長時間一緒にいれないということを無理矢理思い出される。

 それでも私は無理に笑って、話を続けた。

「分かったわ。よろしくね。ティエちゃん」

「こちらこそよろしくお願いします」

 ティエは嬉しそうな声とともにお辞儀をすると「では、後ほど」と言って消えてしまった。〝インベンション〟も勝手に閉じてしまっている。

「アレは大丈夫よね。きっと。」

 私は一旦PCの電源を落とし、昼食を食べることにした。


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