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第九話

これはわたし、篠原藍樹の処女作になります。混乱部分がほんのすこーしありますが、どうかお気になさらずに。

よければ、感想欄にてお知らせください。

変えます

こちらがFC2ブログとなります↓

http://lastorder41.blog.fc2.com/

『展示中。自作ラノベ&詩!!』

是非のぞいてみてください

発表会当日。

俺はぶっ倒れそうなほど頑張った。準備だけでも徹夜なので、目眩がする。TAIの給料とアップグレードは先延ばしにしてもらったが、それでも疲労感が半端ない。

 アナログ時計を見るともう朝の七時だった。朝食は弁当の残りでも食べて、仮眠することにした。俺も参加するつもりなので仮眠と言っても二時間のみだ。

 目を閉じるとすぐに睡魔がやってきた。



「寝ちゃいましたね」

「とうぜんだよ~。ますたーてつやだもん」

「ハン、いきなり開催したりするからだろ」

「オレも寝たい」

「ざっけんな。カイ、お前全然進んでねぇだろ」

「ワシは終わったのでこれにて失礼」

「………」

 今、TAI全員がスーパーコンピューター並みの性能を持ったある機械の中にいた。何をしているかというと六時で締め切った大会作品の判定だ。送られてきたのは約三〇〇通なので一人四三枚くらいを採点中だ。クリスは作業速度だけ異様に速く、隣で寝てしまった。沈黙しているのはダイン。喋らないのは集中し過ぎて何も聞いていない証しだ。こちらもあと数枚だ。

 一番進んでないのはカイだった。彼はスローペースを曲げようとしないために、まだ半分ほどある。

「カイ。アンタもっと速くできるだろ」

「マイペース イズ 家訓」

「いつ家持ったんだよ」

 しょうもない会話がこうして八時半まで続いた。



「さて、今日かー」

綾切はいつもより早起きだった。発表会が今日という理由もあるが、それだけではない。朝食だけでなくお弁当まで手作りするためだ。料理というほどのものは出来ないが、簡単なものなら調理できる。

レッツクッキング。

と、その前にPCのメールを見た。内容は両親が今日帰ってくるということ。今まで海外出張していたらしいが、興味無い。

――いつの間にいなくなっていたのかな?

念のため、帰りが遅くなるというメールを返信しておく。

「知るか……」

 気を取り直して、パンに具を挟むだけの簡単な作業をする。

 二つの箱を取り出して、サンドウィッチを四切れずつ入れた。満足した表情でエプロンを外し、ポーチに弁当を入れる。急いで朝食を食べてから、走って家を出た。



七月二六日午前九時。

 俺は寝室のベッドでぐっすりと寝ていたが、寝がえりを打つと身体に柔らかい感触があった。温かい。

 何事かと思って半開きの目を開けると、

「美少女!?」

 間違えた。目の前にいるのは目を瞑って寝ている綾切だった。何の問題も……

「あるっ! なんでいるんだ!」

 綾切はすやすやと眠っていたが、俺が騒いだせいで起きてしまった。

「あ、おはよう、黒羽」

「お、おはよう、綾切。なんで朝からここにいる? しかも、俺のベッドに」

「可愛い寝顔の黒羽を見たら、ナント吸い込まれるように寝てしまったよ……不覚」

 可愛いなどと言われても反応に困る。同年代の女子の知り合いは綾切くらいしかいないせいで、そういうことへの耐性がない。

「ふ、ふざけてないで何しに来たか言え。今日は発表会だからお前もログインしろよ? 俺も参加するから」

「私はここでログインするつもりだから、気にしなくていいよ」

「そうか。ノリツッコミはもうしないぞ」

 綾切はつまらなさそうに唇を尖らせると、辺りを見回して何かを探す仕草をした。

 PCを探しているのだろうが、ここにはない。理由はあったらあったでTAIどもが騒がしいからだ。

「眠い。おやすみ」

 俺は再び寝ようとする綾切の肩を揺さぶって起こそうとする。おい、目が半分閉じてるぞ。

 そこで俺はひらめいた。

「綾切。やるならこっちだ」

 俺は寝ぼけ眼の彼女の手を引き、寝室の向かい側の部屋に移動した。中にはジャンクパーツと椅子が八台。

「なにあれ? パンチパーマにでもする予定がおありで?」

 床屋においてありそうだが、あの椅子は種類からして違うだろう。俺の血と涙と汗の結晶をパンチパーママシーンにしないでほしい。

「あれはα版のインベンションマシーンだ。大きいのは、我慢してほしい」

 綾切はほう、と感嘆の声を上げた。そして突然、椅子の後ろ側に回り、拳を振り上げて叩いた。

「何するんだ!?」

 俺は悲鳴のような声をあげて抗議した。試作段階のため、変なボタンでも押されると何が起こるか分からない。

「ん? チューニング?」

「断じて違う!」

 彼女は俺の言葉を無視して自分で叩いたマシーンに座った。

「ここに座ればいいのね…………黒羽は私の隣ね?」

 そんな言葉にびっくりして、マシーン付近のジャンクパーツを拾い集めていたのに全部落としてしまった。

 どうしたのだ。彼女は。朝から行動の予測ができない。

「大丈夫か? 熱でもあってバグったか?」

「じゃあ、デバックツールある? 持ってきて」

 ティエみたいだ。いや、それより酷いかもしれない。ティエから純心を引いて悪意を足したら今の彼女だ。やりにくい。

「早く! 私、また寝ちゃうよ?」

 俺は大きなゴミが無いかだけ確認し、彼女の隣に渋々座った。

「で、どうするの?」

「上のヘルメットを顔全体に被る。そしたら、自動的にログイン画面に移る。パスワードとIDだけ入力して入ってこい。入力方法は頭に文字を浮かべるだけでいい」

「分かったわ。それじゃあ、あとで広場に集合ね~」

 綾切は無言で頷いてヘルメットを被った。俺もあとに続いて被る。




俺はログインを終えると目を閉じた。彼女に言うのを忘れたが、これでログインする際、景色が逆さまに引っくり返るような暗転が起こるので目を開けていると酔う。

 乗り物酔いの人注意ってステッカーを今度作ろうと思う。

【クロ〉〉 おえっ……】

 俺、酔いやすいんだった。目を閉じても同じじゃないか……。

【ハナウタ〉〉 クロっくぅううん?】

 クロックにしか聞こえないぞ。俺は時計じゃない。

【ハナウタ〉〉 吐いちゃった落とし前付けてもらうわ~】

 目の前にいるは般若の顔をした綾切だ。アバターでもあり、本人でもある。

【クロ〉〉 ごめんなさい】

【ハナウタ〉〉 で、α版の効果って『感性共通』の究極版なの】?

 これには俺も驚いた。その通りなのだが、勘がよすぎる。

 α版の効果は主に二つ。一つ目はアバターと操作している本人を視覚、触角のみ同調させること。二つ目は操作者が話そうとしている言葉をチャット形式に直し、自動入力する。入力された文字は本人達にしか見えないロゴになって、空中に出る仕様だ。

【クロ〉〉 部屋にいる感じはあるだろ? 視覚、触角のみの接続だから、聴覚、臭覚、味覚は分かるはずだ。部屋の匂いくらい意識すれば分かるだろ?】

【ハナウタ〉〉 油臭いわ。ジャンクパーツの臭いね】

【クロ〉〉 掃除してないからな。それはともかく、もう始まるぞ】

【ハナウタ〉〉 あ、そういえば発表形式はどうなってるの?】

【クロ〉〉 広場中に紙が一〇〇位まで張り出される】

【ハナウタ〉〉 ふーん。じゃあ、一緒に見に行こうか】

 俺は微笑を浮かべて、広場の中央を眺めた。人がたくさんいる。話題の内容までは分からないが、このゲームをそれなりに楽しんでいるように見える。

【NO・10〉〉 開会宣言をします!】

ティエだ。どこにいるかは分からない。ここにいるユーザー全員に遠隔操作で文字を送っているのだ。

【ハナウタ〉〉 ん? そういえばTAIって七人しかいないのにどうしてティエちゃんはNO・10なの? 普通NO・7じゃない?】

【クロ〉〉 今頃気づいたのか。NO7・8・9はインベンションを管理するただのAIプログラムだから、TAI自体は七人だ】

【ハナウタ〉〉 初耳。7・8・9はTAIじゃないのね】

【クロ〉〉 そうだ。ティエはインベンションを作った後に生まれたから10だ】

【NO・10〉〉 ……では、始めます。今日は楽しんで行って下さい】

 大会宣布も終わり、広場にいたユーザーは散開した。

 自分の投稿作品が一〇〇位以内に入っているか確認しに行ったのだ。

 いや、五位圏内の発表がある北方向に九割が向かっている。北に行くと通勤ラッシュ並みの大混雑に巻き込まれるから綾切を北以外の場所に誘導して回避せねば。

 人のたくさんいる場所はあまり得意ではない。

【ハナウタ〉〉 私達も行こう!】

【クロ〉〉 そうだな。どうする? どこから周る?】

【ハナウタ〉〉 時間はたっぷりあるから一〇〇位から行こう!】

 綾切は右手を空に突き上げて人の少ない場所を提案してくれた。セーフ。彼女自身が人が少ない場所を選んでくれた。

【クロ〉〉 100位っていうと……広場の東端か。そこから時計回りに見ていけばいいだろ】

【ハナウタ〉〉 ゴー!】

【クロ〉〉 テンション高ぇな! さっきまで寝ぼけてただろ?】

 



 南側には数人しか来ていないようで、ガランとしていた。

 まるで地域の美術館を二人だけでゆっくりと周っているようだ。

俺はおもしろそうなのだけを見ているが、綾切は一人一人の作品全てを見て、彼女なりの評価をしていた。

 時々、唸ったり、軽く笑ったり、小首を傾げたりと忙しそうにアバターのどこかぎこちない表情をフルに使っている。

 俺と綾切は何も話さずに周っていたが、六〇位圏内に突入すると俺の知らないうちに誰かとチャットをしながら観覧していた。俺はそれを遠目で眺めていた。

 綾切の話し相手はマロンと呼ばれる女性アバターだ。こちらを不審そうに時々睨んでくる。俺が綾切の連れだと知っての事なのか、ストーカーだと思ってなのかは分からない。

――あ、やばい。俺のだ

 ついに俺の作品を四三位で見つけた。綾切の作品やマロンという人の作品はまだ見つけていない。展示物の右端に匿名で書かれているので誰が書いたかは一目で分かる。

 だから、俺は特に綾切に見つからないようにマスター権限で別人の名前に変えておいた。彼女に見つかると厄介なことになる。だから、これは最適な処置のはずだ。

【ハナウタ〉〉 これね。クロのは】

 名前を変えたはずなのに見つかった。超能力でもあるのか!?

【クロ〉〉 は!? どれ?】

【ハナウタ〉〉 これでしょ? 名前は違うけど、そんなもの提出する時に変更できるもの】

 彼女の予想はハズレだが、結果的には大アタリだった。

 彼女が指差しているのは四三位の紙。俺の作品だ。

【クロ〉〉 なんでわかったんだ?】

【ハナウタ〉〉 こういう作品って個性が出るよね~。私はさっきからこの作品を書いた人はどういう傷を持っているんだろうって考えながら見てたの。そしたら悟りでも開いたのか、作者がどんな人か分かるようになったの】

【マロン〉〉 すごいよね~、ハナウタさんは。観察力がえげつないっ!】

【クロ〉〉 第六感でもあるのかよ!】

 あははと笑う綾切は愉快そうに目を細めていた。

【ハナウタ〉〉 でもさぁ、クロ……これ小屋の時の事をモチーフしてるでしょ?】

 俺はギクリと身体を強張らせた。マロンは何のことか分からないと首をかしげている。

 俺の作品の内容は、WHO(世界保健機関) → WHO( Woman fist hits Ore.)

 意味は女性の拳は俺を打つ、だ。無理矢理すぎるので上位にランクすることはないと思っていたが、他の人も同じくらい酷いので四〇位台に入ってしまったらしい。

【ハナウタ〉〉 そんなに痛かったの? あれ】

【クロ〉〉 ……すまん。脆弱なんだ】

【ハナウタ〉〉 そんなに強く入れたつもりじゃなかったんだけどな】

【マロン〉〉 何のこと?】

【ハナウタ〉〉 この前、私がクロの腹に不意打ちで拳を入れたの。それがこの作品に見事に反映されているから、クロの謝罪会見中】

【クロ〉〉 ごめんなさい。いいのが思いつかなくて、つい】

【ハナウタ〉〉 ついで済んだら警察は必要ないでしょ?】

【クロ〉〉 今度、一回だけ何か言うことを聞きます】

【ハナウタ〉〉 よし。現実でなにかしてもらおう。フははは!】

【マロン〉〉 悪役ですね。完全に】


 



 一〇位までやっと辿り着いた。

 トップテンというだけあって人が多い。五位圏内も人だかりが出来ている。

【ハナウタ〉〉 やっとね~】

 綾切は背伸びをした。はりきっているようだ。

【マロン〉〉 ハナウタさんか私が入っているといいな】

【ハナウタ〉〉 入るなら、ベスト五よ!】

【マロン〉〉 負けません!】

 俺は闘志を燃やしている彼女達に囲まれながら、一〇位から六位まで順番に見ていった。

 どの人も本気で五位圏内を目指しているのがよく分かる力作だらけで感心してしまう。

 俺の作品とはまるでレベルが違った。

【ハナウタ〉〉 いよいよね! もしかしたらマロンも私も入ってるかも!】

【マロン〉〉 そうだね!】

 二人してヒートアップしている。俺は彼女たちの戦いに介入する余地が全くないので、ほっといて五位を見る。

【クロ〉〉 すぺーどか!】

【ハナウタ〉〉 あら? 知ってるの? 友達いないんじゃないっけ?】

 うるさい。俺の悩みを知っていて言っているだろう。

【クロ〉〉 俺のフレンドリストに唯一登録されているやつだ。少しだけあいつのリアルを聞いたから充分友達に入る!】

【ハナウタ〉〉 範囲広いと思うわ……】

 すぺーどは俺がこのゲームを始めた時に初めて会ったユーザーで、フレンドに気軽に登録してくれたいやつだ。

【マロン〉〉 ああ、アイツもここにきてたんだ】

 マロンが爆弾発言を投下した。綾切も何を言っているんだって顔をしている。

【マロン〉〉 ん? ただの幼馴染よ。いっつもへらへらしているから誰からも信用されなくなったやつで今は行方不明って聞いてるわ】

 ひきこもりという言葉にぴくっと綾切の体が小さく動いたのを俺は見逃さなかった。自分に向かって言われているわけではないと分かっていても反応してしまうようだ。

 マロンはそのことに気付かなかったようで、肩をすくめるだけだった。

 すぺーどの作品は、腐っても鯛+目から鱗が落ちる → 腐って鱗が落ちる(腐男子もしくは腐女子になると、自分の才能や実態が急に現れること)

 これは……

【クロ〉〉 ハナウタだな】

【ハナウタ〉〉 無礼者! 私は腐ってなくても天才だ!】

 無視。

 俺は五位の評価を自分なりに採点してみた。ことわざの組み合わせバージョンだが、意味は組み合わせず、出来た言葉から考えたという感じだ。

 インベンションだから五位なのだろうと思う。ここには必ず心の傷を持った人が来る。心の傷を持っている人は腐っている人、変態、ひきこもりなどの人種が極端に多いから、こういう言葉は受けやすいとの判断をTAIが下したのだ。

【クロ〉〉 うむぅ。偶然の産物か……?】

【マロン〉〉 そうでしょ。意味が適当感バリバリ】

【ハナウタ〉〉 どんどん見ていこー!】

 綾切は何が気に入らないのか、もう次にいくのを催促している。

 四位。三位。二位。あ、シダ―・ローズ。松原……だ。彼女はこのゲームの研究を手伝ってくれたことがある人で、お嬢様気質の科学者だ。

――アイツ……勝手に入りやがったな?

 松原は都内にいるわけでも、ましてや中高生でもない。見た目はかなり若いが大学も出ている立派な大人だ。

 それなのに、ここに参加しているということは研究途中に何かを細工したとしか言えない。メールを受け取らなくても、開始ウィザードくらい持っているだろうからな。

 一位。

【ハナウタ〉〉 キターーーーーーーーーーーーーーーー!】

【クロ〉〉 うるせぇ】

 まさかの綾切が一位。

 本人は喜びすぎて卒倒しそうなほど興奮している。俺の聴覚からも綾切の声が聞こえてくるほどだ。脳の命令は全部遮断するはずなので現実で動けるということはないはずだが、どういうわけか喋れるらしい。

 綾切の感情がMAXのせいで遮断しきれなかったみたいだ。おかげで耳もチャットも騒がしいことになっている。

――どこをどう改造すれば完全シャットが出来るんだ

 遮断しきれてない心当たりは……あった。綾切はα版の機械椅子を叩いていた。あれのせいかもしれない。

【ハナウタ〉〉 10っまんっえっん!】

 俺に向かって言うな。ばれる。

【マロン〉〉 おめでとー!】

 マロンと綾切はきゃっきゃっ言いながらお互いの手を組んで跳ね回っていた。

 俺も一応祝福の言葉を述べておく。

【クロ〉〉 すごいな。おめでとう】

【ハナウタ〉〉 腐腐腐……ありがとう】

【クロ〉〉 字が怖い! 冷静になれ!】

 俺は注意だけしておくと綾切の作品に身体を向ける。一位なので期待を込めて一位と書かれているボードを見る。

【クロ〉〉 あや……じゃなかった、ハナウタ。ちょっとこっちこい】

【ハナウタ〉〉 なになに!】

 俺は綾切をヘッドロックして締め上げた。触角はリンクしているので本体にもダメージがあるはずだ。

【ハナウタ〉〉 何するぅううううう!】

【クロ〉〉 この作品はなんだよ!】

俺は綾切の拘束を外し、一位の作品を指差した。

NHK(日本放送協会) → NHK(ニートとひきこもりの会)

正直すごくいいと思う。だが同時に、すごく一位になってほしくない言葉だ。

【ハナウタ〉〉 何かいけないところでも?】

【クロ〉〉 いけないところだらけだよ! NHKに謝れ!】

【ハナウタ〉〉 日本放送協会は今日からニートとひきこもりに牛耳取られるんだっ!】

【クロ〉〉 ないよ! そんな計画!】

【ハナウタ〉〉 分かったよ、謝るから……ニートとひきこもりの会の皆さん。ネタに使ってすみません】

【クロ〉〉 そっちのNHKじゃねぇええええ!】

【マロン〉〉 www】

【ハナウタ〉〉 www】

【クロ〉〉 てめえら、笑うな!】

 こんなやり取りがしばらく続いた。NHK罵倒発言がヤジとしてチャットに放り込まれてくるが、俺はマスター権限をこっそり使用して拒否する。

 誰も気づきはしない。誰も気がつくはずがない。そのはずだった。


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