4.creature
「何か今日の雅臣くん・・・いつもと違う臭いがする・・」
「え?そうかなぁ?」
ついつい神社に寄ってしまった。
いつものように浴衣姿の月花を見るとさっきの女性とやっぱり似ているようで
似ていないなぁと感じた。
他の女性と較べてるのバレた?
なんて思ったけれどそんなの解るわけない・・よね?って女の勘ってのを甘く見てる?
でも僕が他の女性と仲良くしても月花がヤキモチやいてくれるようには思えず・・・
それはそれで少し寂しい。
「・・・・の匂い・・・」
魔物(creature)の・・・・月花がつぶやいた。
「え?」
「なんでもなーい」
くすくすと笑いながらアカシアの花房を取り
「ふふ・・私がいじめられそうになったら助けてね」
冗談めかして僕の顔をのぞき込み意味深にほほえんだ。
「いじめって・・・誰が?」
アカシアの妖精をいじめるヤツなんているのだろうか?
とは言っても、そもそも月花はアカシアの妖精だとは僕が勝手に思っているだけで
本当は普通の女子中学生・・もしくは普通の女子高生かもしれない。
月花がセーラー服を着て、明るい日差しの中歩いている姿をぼんやりと想像してみた。
「私と雅臣君が仲良くしていると怒る人がいるんだー」
花の房を揺らすたびに甘い香りが漂う。
はかなくて甘くて・・・月花そのもののようだ。
「それって・・・彼氏とか?」
「んー・・・違うよぅ・・・ふふ」
歌うように言いながら雅臣の手を取りくるくると回る。
「私はね、強いけれど弱いのぉ」
くすくすと笑いながら不思議なことを言い
「じゃあねぇ」
ちゅっと冷たい唇を僕に当て、くるりと踵を返してアカシアの木の奥・・・
神社の方へ消えてしまった。