14.もうひとつの出会い
全く気が付かなかった。
俺はレベルが上がり、冒険者としての勘も鋭くなり、今まではなんとなく人や魔物の気配を感知できるようになっていた。
ただ、今後ろにいるこいつは一切気配がしなかった。今もだ。俺は咄嗟に「鑑定」を使用しているが、何も情報が出てこない。
「.....お前は何者だ。俺に何か用か?」
「そんなに警戒しないでよ....って、いきなり後ろから話しかけられたらそうなるよね、ごめんごめん!」
その男を見ると明らかに異質だった。
日本の高校生が着る制服を身に纏っていたのだ。俺は目を疑った。
「お前....!その服装は....!!」
「お、この服に反応したってことは君も転生者なんだね!まぁそうだよねぇ....その異様な魔力、さっきの戦い方、どう見ても普通の人間ではないだろうとは思ってたよ!」
一発で見抜かれた。なんなんだこいつは、何が目的なんだ。
「剣をしまってよ、僕は君とは戦うつもりもないし、敵じゃない。少なくとも今はまだ、ね。僕の名前は柳 修一。転生した時の名前はもう捨てたよ。みんなからはシュウって呼ばれてる。」
また日本人か。なぜ日本人ばかり出会うんだ俺は...。とりあえず剣をしまい、自己紹介をすることにした。もちろんリンドという名前は伏せる。
「シュウ、か。俺の昔の名前は....山城だ。お前の目的を聞きたい。何故こんなダンジョンにいる。お前、強いだろ。」
「ははは!いいね。僕の強さを見抜いたのかな。うん、じゃあ目的を話すね。実は国王サマにさ、レアリアに異様な魔力を持つ者が現れたから調べてこいって言われたんだよね。それで君に辿り着いたってわけさ!」
「....!!....国王が、俺に気づいたのか。」
あまりにも予想外だった。自分の殺害対象である国王が、こんなにも早く俺の存在を感知した。いや、正確には姿などはわかっていないだろうがその異質な「魔力」を感知したようだった。まずい、こいつを生かしておいたら俺の存在が公になってしまう。止めなきゃ、殺さなきゃ。
俺は考えるよりも先に亜空間から2本の剣を取り出し、「高速移動」を使いシュウに迫る。反応速度は俺の方が上、いける。俺はシュウに向かって全力の「星砕き」を放った。しかし。俺の攻撃は届くことなく、見えない何かに防がれた。
「....っ!!?なっ.....!?」
「すごく速いね君!僕のスキルがなきゃ今頃大ダメージ食らってたよ!!すごいすごい!!」
そして俺の攻撃を防いだ何かが姿を見せる。
天使の羽。大きな純白の翼がシュウの背中から生えていた。
「普段は「透明化」してるんだ。見えなかったでしょ?とってもいい攻撃だったから特別に教えてあげる!僕のスキルは「神域化」、おそらく君と同じ”天害級”にして歴代最強のスキルさ!!」
そういうとシュウの後ろから突然無数の武器が飛び出してきた。「銀剣の舞」にも似ているが格が違う。この世界に存在するありとあらゆる武器が俺の前に出てきた。よく見ると俺の持つ黄金龍の煌剣なども浮いていた。
「君すごく面白いから国王サマには何も言わないでおくよ!!その顔の線の事もね....!!じゃあ、生きてたらまた会おうね!バイバイ山城クン!」
そういってシュウは無数に現れた武器を俺に向けて発射する。「銀剣の舞」でいくつかを相殺しつつ、奥義「流星群」を使いどんどん武器を落としていく。
「くっ....うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
死んでたまるか。俺は手に持っている2本の剣で次々と襲い掛かる武器を弾き飛ばす。シュウがいなくなり、無数に思える武器の雨も底が見えてきた。
その中に1本、異様な輝きを放つ剣があり、俺めがけてすごい勢いで飛んでくる。
「うらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
2本の剣でそれを受け止めようとしたが、予想を遥かに上回る勢いに俺は押された。キンキンッと金属が擦れる音が部屋中に響く。
「なめ......るなぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ついに輝く剣をはじき返し、剣は床に突き刺さった。輝きを失い、だんだんと灰になって消えてゆく。
生き延びた。自分の体を見るといたるところに傷ができており、「再生」が間に合っていないようだった。HPを見てもごっそり7割削られているのを見て、まだまだ復讐を実行するには実力不足なのだと思った。
「普通にやり合ったら、俺は死んでいたな....。」
もっと強くならなければならない。俺はクリア報酬を受け取り足早にダンジョンを抜け、近くの森の魔物をひたすら食い尽くした。
『コボルトを「捕食」しました。経験値を獲得しました。スキル「バーチカルライン」を獲得しました。スキル「気配感知」を獲得しました。』
『ゴブリンを「捕食」しました。経験値を獲得しました。スキル「悪食」を獲得しました。スキル「欲張り」を獲得しました。』
『ゴブリンアーチャーを「捕食」しました。経験値を獲得しました。スキル「弓術の心得」を獲得しました。スキル「心眼」を獲得しました。』
『オーガを「捕食」しました。経験値を獲得しました。スキル「鬼術」を獲得しました。スキル「食増」を獲得しました。』
無事レアリアに辿り着くと、俺はフラフラと家に入る。
「......!?リンド様!!その傷は一体....!?」
「ご主人様...!!どうしたの...!?」
2人は俺を見て、すぐに駆け付けてくれる。
「あぁ....大丈夫だ。俺には自動回復のスキルがある。寝てれば治るさ。すまないな、心配かけて。」
俺は着替えるとすぐにベッドに横になった。明日からもっとダンジョン攻略の効率を上げよう。もっと強く、圧倒的な力を手に入れるんだ。
一方、ウルドの少し北にある現国王の城がある要塞都市、ディアラバーニにシュウが降り立つ。
「おぉ.....シュウよ。戻ったか。どうだった?私の脅威となるようなやつはおったか?」
「はは、安心してよ。確かにちょっと強いやつはいたけど、僕の足元にも及ばないやつだったさ。考えすぎだよ、おじいちゃん。」
国王に向かって軽口をたたくシュウの態度に兵士達は怒りを覚えたが、決して楯突いたりはしない。この男には誰も敵わないとわかっているからだ。もちろん、国王自身もだ。
「ハッハッハッハッハ。そうかそうか。お前がそういうなら私の考えすぎなのだろうな。すまんな面倒を頼んでしまって。」
「別に暇だったからいいさ.....そうだ、僕はしばらくここを開けるから、せいぜい寝首をかかれないように気を付けてね!ってあんたなら問題ないか!アッハッハッハ!」
そういってシュウは天使の羽を羽ばたかせて何処かへ飛んで行った。
「やれやれ、あの性格じゃなければ本当に優秀な駒なのに....”天害級”の扱いは本当に手を焼くのう。」
飛び去った窓を見つめ、国王は愚痴をこぼす。
「まぁよい、もう少し、もう少しで私の計画が始まるのだ。誰にも邪魔はさせんよ。」
不敵に笑みを浮かべる国王。深い深い闇が水面下で動いていることを、まだ誰も知らない。




