10.「賢王」の執念
「賢王の墓」の最上階には、深層ダンジョンと同様でデカい扉があった。
ボロボロの城内では異様なほどに煌びやかな扉には様々な宝石で飾り付けられており、傲慢な国王がいたのだろうと予想ができる。
俺はお構いなしに扉を蹴り開けた。
『グルァァァァァァァァァァァァァ!!』
ボスの部屋で待ち受けていたのは、巨大なドラゴンのゾンビ。肉が腐り、所々骨が見えている。眼球もなく、翼もボロボロになっている。
「Sランク相当のボスか...これはかなり食いごたえがありそうだな!!」
俺は「浮遊」を使いドラゴンゾンビの頭上めがけて「蒼炎弾」を放つ。頭が激しく燃え上がり火を消さんと首をブンブン振るドラゴンンゾンビをよそに、俺は「空間魔法」により2本の剣を取り出す。
「こいつも”龍”の判定になるのかな...?「黒雷」!!!」
黄金龍の煌剣に「黒雷」を纏わせ、体を切り裂く。スキル「剣術の心得」により、剣での攻撃の威力が上がっている俺の攻撃はかなり重く、ドラゴンゾンビは痛みに悶える。どうやら龍種特攻はこいつにも有効のようで、特大ダメージとなる。
『ガァァァァァァァァァァァァァァ!!!』
怒りを露わにしたボスは、「闇魔法」を纏わせたブレスで反撃をする。当たれば大ダメージを負ってしまうだろう、俺は「高速移動」でそれを躱し、逆に「闇魔法」でカウンターを仕掛ける。
「使ってみるか...「闇魔法 ダークネスバインド」!!!」
俺が魔法を唱えると、床から紫色のオーラを纏った黒い鎖が出てきて、ボスの動きを封じる。その鎖を解こうと、激しく動くボス。
「やらせるかよ!「魔力暴走」!!」
俺はさらに魔力を込めて鎖を強固にする。その巨体からは想像もつかないような素早い動きをしていたボスが床に磔になる。
「ここだ!!「星砕き」!!」
鎖で動けないボスの頭を最大威力でブッ叩く。
『ガルァァァァァァァァァァァァァ!!』
頭がカチ割れて、動きを止めるボス。終わったのだと思い体を食べようと駆け寄ったその時。
ドスッ!!
「....ッ!?ガハッ...!!」
後ろから紫色のオーラを纏った剣で突きさされる。振り返ると、煌びやかな衣装を纏ったゾンビがいた。
『吾輩のペットを痛めつけてくれたお礼は受け取ってくれたかね?』
そうだ、このダンジョンは「賢王の墓」、本当のボスはこいつだったのか。完全に油断して不意を突かれてしまった。
「...ちっ、油断した。ボスが1体なんて決まりはねぇよな....「一角獣の後光」!!」
『ぬっ!!光属性の魔法か!!ぬぉぉぉぉぉぉ!!』
国王ゾンビは光を嫌がり、俺から距離を取る。俺は自分の傷口を確認した。スキル「自動回復」と「再生」のダブル発動により、尋常じゃない速度で傷が塞がっていく。
「へっ、無敵になった気分だぜ...まぁHPは削られちまったがな...今度は俺がお返ししてやるよ!!」
俺は2本の剣をもう一度取り出し、「黒雷」を纏わせ「切り裂き」を連続発動。国王ゾンビは持っている剣でいなすが、2本の剣で攻撃を仕掛ける俺についていけず、隙ができた。
「がら空きだぜ王様!!うぉぉぉぉぉ!!」
一撃お見舞いしようとするその時だった。
ズバァァァァァァン!!
俺の一撃はドラゴンゾンビの尻尾によって防がれてしまった。
「なっ...こいつ、生きてやがったのか!!」
なんと、首から上がない状態で立ち上がり、こちらに攻撃を仕掛けていた。まさにゾンビ、不死身の肉体といったところだろうか。
ドラゴンゾンビの尻尾攻撃と国王ゾンビの剣撃を2本の剣でいなし続ける。正直このまま打ち合ってもジリ貧だ。俺は「浮遊」で一度空中に逃げ、「死霊魔法」で骸骨騎士を5体生み出す。1体召喚につきMPを100も消費してしまうが、ほぼ無限ともいえる俺のMP総量であれば余裕である。
『なに...?生身の人間が死者を使役しただと...??小賢しい!!』
国王ゾンビが驚きながらも骸骨騎士と打ち合う。俺はまずドラゴンゾンビの方から対処することにしていた。
「一角獣の後光」を発動しながら「蒼炎弾」でひるませる。黄金龍の煌剣で特攻攻撃をしつつ、「呪いの刃」で再生を防ぐ。まるで魔物の軍勢を相手に戦っているような光景に国王ゾンビがさらに驚く。
『奴は魔物なのか...?それにあの顔の紋様...あぁ忌々しい!忌々しいぞぉぉぉ!!!』
3体の骸骨騎士が倒されたのを確認すると、すかさず2体の騎士とローブ骸骨を3体追加で生み出す。国王は怒りを露わにし、騎士たちに突っ込む。
「よし、まずはお前から食う。今度こそ殺してやるよ!!「流星群」!!!」
俺はついに奥義を発動した。降り注ぐ隕石。以前倒したアルス=ノヴァにも匹敵する耐久力を誇るドラゴンゾンビも、この奥義の前には無力だった。1発、2発、3発と隕石が直撃し、4発目が当たったとき、ついに全く動かなくなった。
俺は夢中でドラゴンゾンビに噛みつく。さすがに硬くて噛み切れなかったが、新しく覚えた「噛み砕き」を使うことで、「捕食」が可能になった。騎士たちの骨よりも塩味が強く、余計に酒が欲しくなる味だった。
『ドラゴンゾンビを「捕食」しました。経験値を獲得しました。スキル「暗黒の息吹」を獲得しました。スキル「物理・魔法耐性」を獲得しました。』
なるほど、この異常な耐久力はスキルによるものだったのか。俺は骨をバリバリと食べながら国王の方へ向かう。
『そ...そんな、吾輩のドラゴンが敗れた...!?くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』
ようやく骸骨を処理しきった国王が俺に突っ込んでくる。
「1体1ならお前は脅威じゃねぇよ、愚王が。」
俺は「見えざる斬撃」で国王の首を刎ねる。
『くそっ、くそ!!!吾輩は二度も死ぬのか!!その紋様....アダムスの子か何かか!!』
首だけになった国王ゾンビが叫ぶ。
「....は?アダムス?国王にもこの紋様があるのか?」
『親族ではないのか....!?そうだ!!忘れもしない、あの顔!!吾輩の国を滅亡に追いやった憎きアダムス!!やつも同じ黒き頭髪に赤の紋様があった!!!!』
嘘だろ。だがこいつが嘘を言っているようにも見えなかった。国王が深層種?本当だとしたら数十年変わらずに国王でいる理由にもまぁ一応説明がつく。国王が魔物....これはいよいよとんでもないことになるのではないか?俺は思ったよりも深い闇に入り込もうとしているのではないかと考え始めた。
「.....お前の国に何があったかは知らんし興味はないが、俺は国王を殺しこの世界に復讐をする役目がある。お前の無念も晴らしてやるからあの世で待ってろ。」
『....!!おぉ、勇敢なる少年よ....しかし気をつけろ、奴は、アダムスはおそらく魔物の力を使うことができる。並みのスキルでは....太刀打ちできんだろう....たのんだ....ぞ....勇敢な....る....少....年....』
国王ゾンビはついに事切れた。俺は複雑な気持ちなりながらも、その死体を食べ始める。
「お前の分まで奴に復讐してやるからよ...力を貸してくれよな。」
『賢王・ボヌルドを「捕食」しました。経験値を獲得しました。スキル「死霊魔法・極」を獲得しました。スキル「執念の怒り」を獲得しました。』




