第9話 父から息子へ、受け継がれた武士道
門外に立っていた林文は、顔に浮かぶ興奮をもはや抑えきれず、張婕桜の抑えから逃れるように、場所を構わず弦から放たれた矢のように元清川に飛びかかり、首をかけながら笑いながら冗談を言った。
「清川、お前ついに帰ってきたな。本当に心配したぞ。」
元清川がぼうっとしている間もなく、林文はさらに付け加えた。
「でも、お前にロリコン傾向があるなんて思わなかったな。中学から高校までずっと気づかなかった。隠してたのが本当に深かったな。」
林文は曖昧な目つきで元清川を見つめながら、大げさに感心して言う。
その言葉の裏にあるユーモアはまったく伝わらず、率直な言葉でからかわれた元清川は、反論する暇もなく口角に戯曲的な弧を浮かべ、ついに落ち着きを失った。高慢な矜持は、蟻たちが夜通し懸命に運ぶように積み重ねた土砂のように、鉄板のように固い堤防だったのに、ある夜突然襲った豪雨に打たれ、あっという間に崩れ去ってしまった。
元清川は李敏が投げかける恥ずかしそうな視線に向き合い、熱い小さな手がそっと握りしめられる。混乱したまま彼女を見つめ、体が不自然な状態で、入り組んだ網のような束縛から抜け出そうとする李敏を、慌てて腰をかがめて謝った。「ごめん、無茶をした。」
声が耳元に残るや否や、二人は急いで距離を取り、思わず顔をそむけた。
そこへ林文のにっこりとした笑い声が響き、濃い赤みが頬に広がる。偽りのない風が窓の外から舞い落ちる花びらを巻き込み、動揺する元清川と李敏の頭上に散らばり、まるで聖なる礼拝堂に降り注ぐ福音のように、イエスが約束した花の香りが満ち溢れた。
海岸の暖かい夕日の光が風に向かって流れ、沈む太陽の焼けつくような熱さが耳元に広がる。彼は、慌てて顔色を変え、両手で指先をこすりながら黙って立ち尽くし、驚いた子ウサギのような李敏を盗み見た。空の向こう側には、波紋のように揺れる重なった影が頬に映った。
張婕桜は、息子が親友の林文にからかわれた後に、十数年間成長を見守ってきた中でもめったに見られない恥ずかしそうな表情を浮かべるのを見て、美しい指で唇を覆い、ドア枠に寄りかかりにっこりと微笑んだ。
リンゴを食べ終わったばかりの王桂嬌は、のろのろとベッドの頭に寄りかかり、枕元に置いてあった金縁眼鏡を手に取ってかけ直した。すると、驚いたことに、わずかな間にこの病室の「友情出演」の観客がまた増えていたことに気づいた。
病院で繰り広げられるロマンティックで温かいシーンとは対照的に、別の場所では逆の光景が演じられていた。
その日、緊急出動した救急車が腹部を重傷した元清川を運び去る直前、突如現れた元清川と林文の二人が少数で多数を圧倒し、次々と倒れ込む扈従たちは、地獄を司る死神に嫌悪され追い払われた。地獄の入り口は、驚きと畏怖に震える扈従たちの目の前で、荒野の猛獣のような轟きを上げながら、重厚な門が瞬く間に閉じた。荒々しく吹き荒れる風が扈従たちを吹き覚ます。
扈従たちが地面から起き上がると、目の前に恐怖の光景が広がった。自分たちの若様が気を失って倒れており、林文の腕の中に抱かれた元清川の腹部には、若様が普段手遊びにしていた小刀が深く突き刺さっていた。
立ち上がるや否や、扈従の頭目は林文の冷たい視線を浴び、汗だくでぐったりと地面に崩れ落ちた。
扈従たちはじっと互いに顔を見合わせ、慌てふためいているところへ、低く力強い声が空気を切り裂き、迷い込んだ頭目の耳元に鋭く響いた。
「三秒以内に、ご主人を連れて消えろ。」
古代ローマ皇帝から死罪を許された恩を受けたかのように、頭目は震える体で仲間を急かし、砂時計の滴る音の脅威を感じながら、目に見えない場所に潜む命を狙う剣のような圧迫感を受け、慌てて地面に倒れている若様を背負い、暗黙の了解で駆け出した。やがて遠くの通りから姿を消した。
扈従に守られて無事自宅に戻った日本の中学生は、部屋で一日一夜昏睡した後、冷たい水をかけられて目を覚ました。怒鳴りつけようと顔を上げると、驚いたことに金属製の鉄盆が父・木村青原の手に深い凹みを作っていた。父は怒りを表すどころか、平静な表情で彼を見つめていた。
氷のように冷たい木村洋介の体は震え、布団に染み込んだ水を気にせず、しっかりと体を覆うように布団を引き寄せ、手足を組んでベッドの隅に丸まり、父の冷たい視線を恐れていた。
「父……父さん。」
「すぐにベッドから起き上がり、おじいさんの霊位の前で跪け。」
木村青原は息子の懇願の視線を一切無視し、言葉を投げつけると鉄盆を机の上に置き、金属の衝突音を鳴らしながら力強くドアを閉めて立ち去った。
ベッドの隅に縮こまった木村洋介は迷わず、汗で濡れた寝衣のままベッドから降り、父の背中を追って足取りを乱しながら部屋を出た。
ドアを出る瞬間、目尻から涙を流し、胸を手で押さえて心配そうに自分を見つめる母・木村優雪の姿が目に入った。母は優しい伝統的な日本女性で、洋介は小さい頃からいたずらをしたら母の後ろに隠れ、足にしがみついていた。その時母は勇敢に父に逆らい、悪い者に狙われる雛鳥を必死に守る雌鷹のように、息子を庇ってきた。
しかし今、母は愛する息子をじっと見つめることしかできず、父の命令の下で前を通り過ぎる息子を、顔を伝う涙をぬぐうことすらできず、かつてのように守ることができなかった。切なく立ち止まり、すすり泣いていた。
「母さん、ごめんなさい。」
洋介は、今回の災いが本当にひどすぎて母を困らせてしまったのかもしれないと思い、母の横を通り過ぎる際に手を伸ばし、目尻に残った涙をぬぐいながら、心から「ごめんなさい」と言った。そして、母の涙を背に、父の足跡を追って前へ進んだ。
木村洋介は霊堂に立ち寄り、霊壇の上に飾られた祖父の霊位を前に、重い足取りでひざまずいた。幼い頃、祖父と一緒に川辺で魚を捕まえに行った情景が蘇り、頬を伝って涙がこぼれ落ちた。
祖父は、洋介がまだ乳児の頃から、春風化雨のような教えで心を育ててきた。その「尊敬と愛情」に関する言葉は、単なる硬直した戒めではなく、生活の隙間に染み込んだものだった。朝剣の練習を始める際に師匠に向かって深々と辞儀をする丁寧さ、稽古で相手が怪我をした時に自然と手を差し伸べる配慮、剣鞘を杭に軽く叩く時でも「失礼しました」と呟く謙虚さ……こうした些細な行動の積み重ねが、剣道場での一振り一振りを「敬愛」の具現化としていた。祖父はいつも言っていた。「剣の刃は岩を斬るが、修練者の目は蝋燭の火のように温かくなければならない。他人を天地のように敬い、敵を己のように愛するこそ、剣道の真髄であり、我々大和民族が代々受け継ぐ武士道の原初の解釈なのだ」と。
木村青原は家の鞭を握りしめ、息子の背中を激しく打ちつけた。鞭が振り下ろされるたびに、力が増していく。木村洋介はまっすぐにひざまずいたまま、父の訓戒を受け止めていた。額からこぼれ落ちる豆粒大の汗は、激しい雨のように床に速やかに叩きつけられた。
父・木村青原は、帝国から台湾に派遣された駐留軍の将校だった。台湾に上陸して以来、厳格な軍紀を部下に課し、時には将校たちの面前で軍紀違反を犯し台湾民を騒がせた部下を自ら処刑するほどだったため、「悪魔の大佐」と噂されていた。彼の部下への厳しさは、息子の洋介に対してさらに倍加された。
台湾に同行した息子が他の将校の子息のように勝手気ままな振る舞いをし、帝国の現地民に対する評価を損なわないよう、夜間外出禁止令を敷き、部下を潜ませて監視させた。当初、洋介は父の意向に沿おうと努力した。学校では先生に好印象を与える「おとなしい生徒」を演じ、性格の悪い同級生とは距離を置き、放課後は早く帰宅し、帰り道では人に挨拶をし、高齢者の荷物を持ち、路上で騒ぐ日本の子供を注意するなど、行儀正しく振る舞っていた。
しかし、やがて彼は自分が徐々に周囲から異端児扱いされていることに気づいた。同じ学校に通う元日本軍将校の子息たちが結束して彼をいじめ始め、台湾在住の生徒たちに「洋介と付き合うな」と脅迫を浴びせた。次第に、木村洋介は学校で孤立した存在になっていった。母の懐に飛び込んで泣き訴える勇気さえ失っていたのは、父が「強い子になれ。他人に依存するな。独立して、祖父から受け継いだ武士道の精神を貫け」と教えていたからだ。心が長期にわたって圧迫され続けるうち、彼は「父の教えは間違っている」という念を募らせ、ついに反抗を爆発させた。父が台湾駐留軍の将校であることを利用し、学校周辺にゴロツキを集めて扈従にし、横暴を働き、地元の人々を搾取し、他人がひざまずいて崇める目を浴びることを楽しむようになった。
さらに、木村洋介は鋭い洞察力で、父が密かに部下を遣わして自分を監視していることを察知した。そして巧みに罠を仕掛け、その部下を捕らえた。廃棄倉庫の錆びた鉄管に冷たい月影が落ちる中、彼は手に握った粗い鉄棒をぎゅっと握りしめ、目元に恐ろしい凶気を浮かべた。骨が砕けるカチッという音とともに倒れ込んだ部下は丸まり、悲鳴と冷汗が交じり合った。しかし彼はただ冷たく見下ろし、瀕死の蟻を見るかのように、最終的にその部下を未明の静かな街角に捨て去った。
帰宅後、父の叱責が嵐のように襲いかかった。藤の枝で打たれる音と磁器の割れる音が屋敷内に響き渡った。しかし木村洋介はもはや陰に隠れることはしなかった。彼は飛びかかってくる藤の枝を力一杯握りしめ、その力強さに母が息を呑むほどだった。父子は取っ組み合い、木製のテーブルがひっくり返る際に鋭い音が響いた。かつて大人しかった眉間には血走りが走り、まるで檻に囚われた獣が脱するような吠え声が漏れた。
そして校内での変質はさらに衝撃的だった。わずか数日で、彼は元日本軍将校の子弟たちを集め、「日本派」と名付けた秘密組織を結成した。彼らは黒い潮流のように学校を席巻した:国旗掲揚台の前で教頭の眼鏡を砕き、女子生徒に悪質な嫌がらせをし、ある日突然の暴雨の午後には校長を教務室に閉じ込め、泥まみれのスニーカーで高価な背広を踏みにじった。校鐘の針は混乱の中で止まり、廊下には悲鳴と泣き声が充満した。かつて荘厳な学び舎は、いつも不安に苛まれる地獄へと変貌した。
壁際にうずくまった小さな影たち、震える背中には土がまみれ、爪でコンクリート床を引っ掻いてできた絶望のくぼみ。かすれた泣き声がまだ糸のように耳元に絡みつき、あたかも今この瞬間と重なっているかのようだ。ついに木村洋介は、後悔の棘に心を突き刺された。父・木村青原の藤の枝が風を切って振り下ろされ、最後の一撃が背中に激しく叩きつけられた。鞭の跡が赤い蛇のように這い、滲み出た血が磨き上げられた床板に飛び散った。彼はよろめきながらひざまずき、喉元に鉄味が湧き上がり、歯の隙間から血がこぼれ、手のひらに濃い赤の染みを作った。
母・木村優雪はこの激しい光景に耐えられなくなった。よろめきながら飛びかかり、息子の震える体をしっかりと胸に抱き込んだ。背中を盾のようにして、夫の冷たい怒りに向き合った。髪は乱れて垂れ、涙と息子の血が胸元で混ざり合い、嗚咽が唇に噛み殺された。かつていじめられた者たちの叫び、割れた眼鏡、泥まみれの靴… かつて誇りに思っていた息子が堕ちた罪の証拠すべてが、今や刃となり、母と息子が共に鼓動する血肉を切り裂いていた。
木村青原は、妻が反抗的な母獣のように息子を守る姿を見ていた。震える背中は、記憶の中よりもずっと細く見えた。目尻から温かい液体が滑り落ち、固い頬に蛇行する溝を刻んだ。それは彼が決して見せない塩分、戦場で流さなかった涙、父親としての失職の証拠だった。彼は急に腕を広げ、膝を床に激しくつけた。寒い夜の空気がズボンの裾から忍び込んできたが、手のひらに伝わる温もりには及ばなかった。妻の震える肩を胸に抱き込み、指節が白くなるほど力を入れた。まるで言い尽くせない後悔、軍靴に踏みつぶされた温もりを、この下手くそだが熱い抱擁にすべて揉み込もうとしていたかのようだった。
月の光が窓格子から漏れ、三人の重なった影の縁に銀色の縁取りを施した。木村優雪の固い首筋が徐々に緩み、夫の胸元に漂う懐かしい檀香と汗の匂い、息子の髪に染み込んだ血の匂いが、不思議な安心感をもたらした。木村洋介は母の震える胸に伏せ、喉元に形にならない泣き声を詰まらせていた。父の腕は鉄のように彼を締め付け、その力強さが幼い頃に頭上に持ち上げられた戯れを思い出させ、雨の日に父が軍用コートで二人を包み込んだ温もりを蘇らせた。氷と火が溶け合い、暴力と疎外の中に散らばった欠片が、ついに「家」という名の鈍い痛みと温もりの輪郭を形作った。
この瞬間、父から息子へと、武士道の精神が受け継がれた。