第54話 激戦!
「黄泉の国を治める死神の代弁者――イザナミノミコトよ!亡霊の扉を開く鍵を賜わり、腐敗した死の気配を大地に溢れさせ、弱き我々を救ってください。」
言い終わるや否や、まるで終末が言葉の余韻とともに消え去る灰燼のように、災厄の訪れを象徴する黒雲が徐々に紺碧の蒼穹を埋め尽くしていった。周囲の濁った息苦しさが、飲み込むような勢いで烈日を侵す瞬間、大地は雲塊に集まった邪悪な輝きに照らされ、激しい揺れを中心から周辺へ拡散させ、瞬時に百里に及ぶ戦場を覆った。
地割れた亀裂から数千の亡霊兵士が這い出した時、二名の竜騎士を含む別働隊は、圧倒的な軍力を頼みに迅速に障害を排除し、鉄壁のような包囲網を形成。調査団残存者に向かって生意気に進軍し、勝利の女神が味方だに傾くと思われた瞬間――木村洋介が膨大な霊力を費やして召喚した亡霊軍団が、一隊の騎兵となり、舞い降りる紅葉に乗り、水光が揺らめく昭恵湖湖畔を踏み、氷炎両竜炎を吐く竜騎士の方へ必死の突撃を仕掛けた。
木村洋介が目の当たりに亡霊騎兵が人類軍の陣形を切り裂く様子を見た時、汗と汚れで覆われた頬を、よろよろと歩みながら振り返り、涙で化粧が流れた白雪を見て、微かに震える唇から安堵の笑みを浮かべた。
「これが俺の最後の魔法だ、愛する姫君。残りは任せた。本当にごめん…」
彼の声がまだ重々しい空気中に響いているうちに、体は糸が切れた凧のように地面に叩きつけられた。舞る煙塵が湖畔に映った弱々しい倒影を隠したが、周囲に広がる小さな波紋は、調査団員の疲弊した心を無言のうちに奮い立たせた。
「洋介…」
白雪の悲しみに満ちた声が空を切ると同時、彼らの濁った死気を纏った瞳に、再び高揚する闘志が灯った。瞬時に眼底の曇りを打ち破り、空気中に漂う雄渾な血風に、ひとつひとつの炎が躍動し始めた。先程まで地面にへたり込んでいた冒険者たちが次々と立ち上がり、曲がった腰を無理に伸ばし、前線で彼らを援護する亡霊兵士を見つめ、目に小さな波紋を浮かべながら、皆が約束のように鉛砂のように重い武器を挙げた。
一瞬、勇敢な熱血と冷たい無畏の気持ちが交錯する交流が、黒雲の下で鋒矢の先端に纏わりつく寒芒となり、王都討伐軍の別働隊に対して最後の反撃を仕掛けた――敵味方双方の焦がれるような長い戦いが、雲の下で歌い継がれていた。たとえ彼らの抵抗が海に沈む石のように無力で、大波の前で些細な波紋すら立てられないとしても、彼らは死志を懐き、凶悪な敵と命を懸けて戦い続けた。調査団の冒険者たちの抵抗する姿が躍動する炎の中を行き交い、流れる血が大地を染め、昭恵湖の美しい湖心で雷塵の嵐から頑張って咲いた血のバラを描き出した。
その時、竜の背中に乗った騎士が空気を切って飛び降り、戦剣を手に持ち、側面から突き進んできた鷹人の冒険者を斬り捨てた。そして、木村洋介のそばに跪く白雪に直に向かって歩き始めた。
彼女が目撃するのを見ていた――鷹人の冒険者が自分を救うために、騎士の剣の下で惨めに死ぬ瞬間。その後、かわいらしい顔に見事な哀れな表情が浮かび上がり、キラキラと光る二本の清らかな涙が、白雪の滲んだ化粧から蛇行しながら零れ落ちる。
騎士は急に傲慢に笑い出し、目に隠されていた凶光が一気に現れた。彼は冷たい光を放つ剣を高く挙げ、剣先がわずかに垂れ、目尻の余光に残る崩れた余韻の中で、白雪の雪のように白く、玉のように滑らかで温かみのある後ろ首を狙い、口角に得意げな冷笑を浮かべた。
「お嬢ちゃん、受け死ね。」
「死めべきなのは…お前だ。」
白雪が身を下げて木村洋介の体を抱きしめ、運命を受け入れようと目を伏せた瞬間――周身に燃え上がる炎を纏った影が、急に騎士の背後に現れた。彼の剣が振り下ろされる残像がまだ空間に残る中、その隠れた影は手に持つ刀で雷火の勢いを纏い、騎士を真っ二つに斬り裂いた。
「元清川…お兄ちゃん…?」
白雪がゆっくりと顔を上げ、目を開けると、目の前の景色が突然眩しい白虹に覆われた。地面から二つの重い音が炸裂するのを聞いた後、元清川が肩に日本刀を斜めに担ぎ、白雪の視界に入ってきた。彼は腰を曲げて白雪の柔らかい髪を撫で、頬の涙を指で拭い、優しく笑った。
「馬鹿な妹、もちろん僕だよ。」
言い終わるや、彼は振り返って一刀を斬り下ろした。刀の鍔から迸る熾炎が刃先の蛍光と交じり、瞬時に正面から飛び込んできた巨竜の体に絡みついた。元清川が白雪を抱きしめる刹那、飛竜は骨まで燃え尽きた体と共に、揺らめく余燼の中で形を消した。彼は目を落とし、しらゆきの腕の中で静かに眠る木村洋介を見つめ、額の乱れた髪を撫で、眉間に触れる指を耳の後ろまでゆっくりと滑らせ、上がる唇が安堵の弧を描いた。
「良い弟だ、苦しんだよ。」
「元清川兄ちゃん、やっと目を覚ましたね。」
元清川の腕に抱きしめられた白雪は、この瞬間ついに緊張を解き、真珠のように輝く涙が目の中から溢れ出し、軽やかな泣き声が喚き声の中で優しく響いた。
「お前が意識を失っていた間、私と洋介はずっと自責していた。本当に心配した…ずっと眠り続けるんじゃないかと。」
「僕は目を覚ましたじゃないか。」
突然、元清川は刀を抜き放ち、白雪の背後に投げた。燃え盛る炎に包まれた日本刀は迅きの稲妻のように飛び、刃が皮膚を切る金属の震動と共に、余韻が消えないうちに青い巨竜の全身を貫いた。
空が静けさに包まれた瞬間、滞留して浮かぶ巨竜の体内に集まった光合成イオンが、ついに圧縮の中で炎に包まれたエネルギーのうずに融合した。うずのエネルギー核が強力に働いた結果、驚くほどの磁場内圧効果が生まれた。「和泉兼守」が朱雀の虚影となって振り返り、時空の枷を断ち切って元清川の腰の刀鞘に戻った後、巨竜の体内に凝られたエネルギー粒子と核を巻く磁力が衝突し、音も立てずに小型のブラックホールが生まれた。
吸収したエネルギーがブラックホールの閾値を超えると、溢れ出したエネルギーが火種に点火され、巨竜の体内で核エネルギーに匹敵する爆発が起こった。激しい爆裂が瞬時に巨竜の体を侵食し、残骸が血の雨と共に空から降り注いだ。元清川は足元に転がる大きな眼球を軽蔑してちらりと見た後、指先が刀柄の灼熱な流紋に触れ、振り返って呆然と跪く白雪を見た。
「馬鹿な娘!」
言い終わるや否や、つま先で地面を軽く蹴り、刀な抜いて空を飛ぶ騎士に斬りかかった。彼は体を旋回させ、騎士が着地できずに揺れる体を押し戻し、その後刀を杖のように支え激戦中の前方を凝めた。
「全軍に命じる!敵の残党を早く討伐せよ…」
彼は疾風のように飛び込み、騎士が着地してまだ安定していない半径範囲の側へと到達した。ちょうど騎士が振り上げた錫鉄の大槌が疾風を巻き込む勢いで、元清川が近づく瞬間に、攻撃範囲に晒された背中を叩きつけようとするや否や――灼熱の炎から残像のように幻になった刀の光が飛び出し、恐ろしいほどに騎士の脈打つ首筋を切り裂いた。首なしの胴体が倒れる様子を目撃したのは、この騎士の驚きに揺れる瞳の奥底であり、彼の輝かしい人生で最後に記録されるシーンだった。
血の玉が流れる炎に沿って刀身から地面に滴り落ち、濁った燃える液体が地面を撫でる風に触れると、血の玉に凝縮された火気が吸着した地層表面を猛毒のように侵食し広がった。元清川は体を屈めて手を挙げて叫び、手のひらに握られた日本刀が空の震える音と共に、戦場の上空に清らかな鳳の鳴き声を誘い出した。
「僕に続いて聖マゴフ城を救いに行こう!」
この瞬間、ほとんどすべての者が動きを止め、聖光に包まれた元清川の神聖な姿を見上げた。
画面は聖マゴフ城の西側城壁で膠着している場面に戻った。
村上幸は袖を振って額の汗を拭い、遠くのクルレンや林文と笑い合った。出雲剣の収斂した震え音の下、放たれた強力な剣圧が壁を登ってきた数名の兵士を肉挽きのように絞り潰した。彼は振り返り、城壁下に近づいてくる討伐軍の総大将カイザー・ディロス・ユリウスを見下ろした――彼の高い体が股間の神鹿に重さをかけ、神鹿が荒い息を吐くのを見て、村上幸の深い瞳に赤い光が一気に広がった。溢れ出る殺気が出雲剣の冷たい刀の体を夕暮れの霞のように真っ赤く染めた。
「あの憎らしい奴、高貴な奈良神鹿を乗り物にし、汚い体に跨っている。必ず殺してやる…」
彼は剣を振り下ろし、一人の兵士の首を落とし、その後城壁から飛び降りてカイザーに斬りかかった。出雲剣に込められた膨大な霊力が潮のようにカイザーの螣蛇凶剣に絡みついた。二人の姿が蒸し上がる湯気に包まれた時、村上幸は優しく神鹿の額を撫で、暗い陰から出てくるカイザー・ディロス・ユリウスを横目で見た。
「お前が敵軍の大将か?勇気があるか…俺と侍同士で一騎討ちを仕合うか?」