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民国エレジー  作者: 上村将幸
日出する国編
53/55

第53話 燃える辺境の星

彼の両目がゆっくりと開くと、まぶしい光が視界を埋め尽くした。まるでホワイトホールの中にいるかのようで、五感は光の拡散と共に完全に遮られていく。


「戻ってきたのか?それとも邪悪な神竜に別の世界に投げ捨てられたのか?」


脳裏をさまよう姿が、五感の喪失と共に次第に曖昧になり、大切にしていた視界から遠ざかっていく。まるで記憶の宝箱がこの瞬間に荒らされ、時間の泥棒に一つ一つ懐から盗まれていくようだ。


「ダメだ…何も感じない。神竜が投げたファストボールでホワイトホールに送られたのか?」


彼は寝返りを打った。指先が触れる物も感じられないはずなのに、この瞬間、柔らかい温もりの流れがかすかに震える中で、指先を通じて活発になり始めた心臓に運ばれていくような気がした。


「ホワイトホールって、もう科学的論断で宇宙に存在しない架空の天体だと証明されてるはずだろ?」


突然、火の焼き付けのような痛みが襲い——空を焼く隕石が墜ちるような轟音と大地を揺るがす震動が混じり、目の前を覆う白光が激しく収束する瞬間、静かな風を切り裂くような音波と共に「パチ」という軽い音が響き、元清川の露出した側顔を叩いた。


「左の頬…熱いような感じがする?」


「元清川、バカ野郎。」


突然、元清川の耳元に、風で揺れる銀鈴のような音が包み込まれた。その心地よい声が、気づかずに彼の長い間閉じ込められていた「黒い箱」をひっくり返していた。


「ああ…思い出した。この声はエミリーだ。」


「そうか、戻ってきたのか?でも…何をして彼女を怒らせたんだ?」


その時、元清川は病床から起き上がり、空いている右手で急に反対方向を叩いた。掌から流れる柔らかい電流に浸ろうとした瞬間——雷鳴のような熱風が、頭の中に描かれたホームランの喜びのシーンと共に襲い、きれいな右頬に真っ赤な手形を焼き付けた。


「元清川、本宮がお前を殺すかどうか、信じる?」


「本宮…?」


左右の頬の熱さを味わう間もなく、右耳に火山噴火のような重厚な威圧感が押し寄せた。両手の指先で軽く揉む力を強めた瞬間、恥ずかしそうな二つの震え声が空気中で引き起こした「裂変」に続き、耳元で再び急な風の連鎖轟音が響いた。


「やっぱり…病床で大人しい患者のままにしておこうか。」


ついにこの瞬間、瞼を覆っていた最後の光の幕が、砕けた光の粒となって、不自然な暖かい風の中で白鳥の羽のように儚く消えていった。しかし、光の団から抜け出した安堵感を味わう間もなく、目の前に愕然とした光景が広がり、彼は驚きで固まった。メドゥーサとエミリーがそれぞれ武器を構え、その刃先が向けられた先は、ベッドに座る元清川の——犯罪の匂いを放つ手が、彼女たちの起伏する胸元をいたずらに撫で続けている姿だった。


「あはは…お前らか!」


彼は恥ずかしそうに笑い、目を落とすと、驚きの中に興奮のような感覚が頭の中で炸裂した。急いで引っ込めた手を背中に隠しつつ、指先に残った温もりを懐かしみながら反芻した。


「そう、私たちよ。」


メドゥーサの腕には蛇の鞭が絡みつき、指先が空気を切ると火星が散り、その火花が元清川の頬元まで流れる蛇の刃と共に灼熱の震えを発していた。まるでいつでも噛み付くかのようだ。


「しかも目を覚ますなりイザナミのようだわ。」


彼女は防御姿勢をとったエミリーを振り返ると、その潤んだ瞳にはほんの一瞬、喜びの色がよぎった。だがメドゥーサはすぐにそれを錯覚と判断し、震える元清川に視線を向けた。


「エミリーにまで…そして本宮にまで冒涜的な行為を。」


彼が頭を下げて謝る姿を見て、メドゥーサの目に軽蔑の色が浮かんだ。


「そうよ、私たちが好きになった男は、こんな無礼な男じゃないはず。」


「メドゥーサ、許してあげて…きっと…清川は…故意ではないはず。」


メドゥーサが黒い煞気を纏った体を、天を呑むような大蛇のように周囲の爆発的な気圧と共にゆっくりと近づけるのを見ていた元清川の耳に、エミリーの清らかな声が病室の広い天井に響き渡った。彼女は立ち直った体にまだ微かな震えが残っていたが、聖剣の形を消し、淡い蛍光を放つ剣身を鞘に収める瞬間、体に纏っていた恐怖が一瞬の鋭い蜂の鳴き声と共に断ち切られた。


「だって清川は前に怪我で…長く眠っていたから、体の本能的なコントロールを失ってたんだよ…」


「それに…今はそんなことを議論してる時じゃない。」


エミリーは頬に冷汗を流す元清川を見上げ、その後地面に集まる清らかな光に目を落とした。城壁の上で繰り広げられた激しい戦いの軌跡が、風と共に彼女の耳元に届いた。元清川は顔を上げ、メドゥーサとエミリーの不安そうな頬を盗み見た。


「エミリー…何かあったの…?」


言葉が落ちるや否や、医務室の扉が隙間から滲み入る微かな光の粒子と共に重々と開いた。林文は首を垂れ、荒い息を切らしながら、額角の汗が床に滴り落ちる「パチ」という音と共に、膝に手をついた。その手は漏れる光のカーテンの中で、霧のような淡い白霜を放っていた。


「エミリー…メドゥーサ…清川の体調はどうなってる?」


「危機的な状況で…我々は…」


彼は苦労して鉛のように重い頭を上げた。喉に詰まった「…城を捨てる準備をしなければならないかもしれない」という言葉が完全に出る前に、元清川の崖の端に生える檜のような清らかでまっすぐな体つきが、林文の澄んだ光沢を放つ瞳に映った。


「清川…やっと目を覚ましたのか…」


二本の涙が彼の震える声に続き、言葉が床に落ちる瞬間、瞼の檻を突き破って流れ落ちた。


「林文、帰ってきたよ。」


言い終わるや、元清川の姿は流れる稲妻のように、メドゥーサとエミリーの淡い花の香りを放つ体のそばをすり抜け、倒れそうになる林文の体を素早く受け止めた。


「林文、一体何が起こった?」


戸外から聞こえる急ぎ足の音を聞きながら、彼は眉をひそめ、微かな波紋を立てた。横目で胸元で手を握りしめるエミリーを見ると、彼女の指先には白い肌に震える微かな紋が浮かんでいた。


「エミリー…」


「メドゥーサ。」


元清川は林文を腰に抱き上げ、病床に下ろした後、メドゥーサを見る瞬間、目に冷たい光が閃いた。垂れた指先がそっとベッドに埋め込まれた隠し棚を押し、腰をかがめるしてベッド底から押し出された椅子を受け取り、しっかりと座った。


「なぜ街を歩く人々の中に、不気味な暗い潮流が潜んでいる?」


「それに西側の城壁から聞こえる激しい動揺は、一体何なんだ?」


指先が枕元のテーブルからティッシュを取り出し、林文の額の汗を優しく拭きながら、彼の目はメドゥーサの指先で震える蛇の刃をじっと見つめていた。彼女は厳然とエミリーと視線を交わし、すぐに蛇の鞭が丸まり、燃えるような強い炎を上げ、最終的に天井から降り注ぐ光のカーテンの中で、弱い火を纏った五つの流れ星のように分裂した。


「君が病床で眠っている間、聖マゴフ城は王都から派遣された討伐軍に激しく包囲されていた。」


メドゥーサは腕を組み、指先で旋回する五つの流れ星が突然爆発し、朱唇を開くと、窓から差し込む光の粒と混ざり合った。


「もう三日も経っている。」


語気が急に固まり、病床で休む林文を見下ろすと、メドゥーサの手が突然握りしめられ、顔に憂いの色が浮かんだ。銀歯を噛み締め、指を気刃に変えて虚空を切り裂き、目に燃えるような情熱を宿した。


「敵味方双方の損害が拡大するにつれ、討伐軍の指揮官も攻城戦術を変え、西側の城壁を中心に昼夜を問わず攻撃を仕掛けている。」


その時、エミリーがそっと足を上げて歩き始めた。スカートの裾が揺れて医務室の空気を流し、床には微かな波紋が広がった。


「城壁で防御戦を指揮している村上幸とクルレンは、この三日間ずっと神経を張り詰めていた…」


彼女は腕を組み、ゆっくりとメドゥーサのそばまで歩いて立ち止まった。悲しげな表情が目元に溢れていた。スカートの裾の端をつまむ指先が急に力を入れ、しわの中で淡い青いバラの波紋が広がった——まるで揺れ動く中でいつでも清らかな音を立てて割れそうなようだった。


「兵士たちに短い休憩時間を作るために、彼ら三人は昼夜を問わず城壁の上を駆け回り、討伐軍の攻勢を次々と弱めてきたの。」


「状況はそんなに深刻なの…?」


元清川は膝の上で握りしめていた手が急に固くなった。指先が布地を撫でる瞬間、空気中に熱波が巻き起こるような感じがした。


「深刻なのはそれだけじゃない…」


その時、病床で目を閉じて休憩していた林文が突然重い瞼を開いた。ぎゅっと噛み締めた歯の間から、金属がぶつかるような鋭い音が漏れた。


「我々の中で、二人がいないことに気づいたでしょ?」


「安心して床にいなさい。詳しいことはメドゥーサとエミリーが説明するから。」


元清川は力強く手のひらを林文の眉間に当て、震えるまつ毛が掌の中で落ち着くのを感じるまで待ち、やっと顔を上げてメドゥーサとエミリーの愁いの表情を見た。


「洋介と白雪はどうしていない?二人の職業は戦闘に向いていないはずだ。」


彼は病床から立ち上がり、ベッドの足元に沿ってメドゥーサとエミリーの前まで歩いた。指先が彼女たちの滑らかな肌に触れ、肩に置かれた。二人のまぶたが同時に落ちる瞬間、元清川の目の底に戦慄する憂いが一気に湧き上がった。蛍光を帯びた風が目尻から湧き出し、時間の砂時計に捨てられたかのように、きらめく風の刃に変わった——耳元で急ぐ風が上昇し、窓枠に映る太陽の熱い光が間を置いて差し込む中、隠された狂暴な気が玻璃の外膜に触れる瞬間に炸裂した。


「もしかして…二人に何かあったの…?」


室内の風の音が次第に消えていく中、メドゥーサとエミリーの指先が風に揺れる髪にそっと触れた。淡い桜色と濃い青の二つの美しい色が、医務室を流れる気流の中で交じり合い、窓枠から差し込む光の反射で、生き生きとした美しい絵巻を描き出していた。その時、元清川の唇から「和泉兼守」という言葉が漏れ出るのが、かすかに耳に入った。二人は落ち着いて彼の腰に結び付けられた日本刀を見つめ、鞘に刻まれた朱雀の流れ模様が、彼の澄んだ瞳の奥に刻まれたように、燃えるような戦意を宿した翼の下で震えているのを感じた。


元清川の周囲に漂う冷たい殺気が収まると、エミリーが細剣を抱え、目尻に重々しい色を浮かべて近づいてきた。


「先日、林文が洋介と白雪を率いて、城北に突然現れた紅葉林の調査に行かせた。」


「でも…」


その時、彼女の垂れたまつ毛の下で、墨色の瞳の奥に波紋が広がった。氷の下で溶けるような哀しみが滲み出る。元清川の視線は氷のように冷たく、しかしその奥には狂気に近い暗い波が渦巻いていた。メドゥーサの薄桜色の長髪が光と影の中で緋色のロマンスを映し、影からエミリーのそばに来て、悲しみで熱くなった頬を指先で撫で、優しく腕の中に抱きしめた。


「調査を終えて帰城する途中、討伐軍の伏撃に遭った。」


「数回小隊を派遣して救出に向かったが、生き残りはいなかった。ケイの偵察によると、調査団の生存者は現在、討伐軍の別動隊に城北の湖畔近くで包囲されている。」


メドゥーサの指先が壁にそっと触れ、滑り落ちる際に指腹で幽かな青い軌跡を引き出した。焼き付くような火星が軌跡から次々と飛び出し、瞬く間に正面の壁全体に震えが広がり、亀裂が蜘蛛の巣のように広がった。医務室の金属フレームが耐えきれないほどの呻きを上げた。その時、林文が悔しそうに体を起こし、肩から細かい砂がすり抜け落ちた。彼が手で払いのける余裕で、元清川の瞳の奥に流れる暗い金色の光を垣間見た——その冷笑が彼の唇元に浮かび、まるでこの動乱を予見していたかのようだった。


「状況が明らかになった以上、すぐに分頭行動だ。」


元清川は急に体を回転させ、鷹のような鋭い視線を体を伸ばしている林文に向けた。体側に垂れていた指先がそっと刀柄に触れ、金属の模様が掌の中で冷たい光を放ち、主人の心の中に潜む殺意と共鳴しているかのようだった。


「林文、お前は城壁に行き、村上幸とクルレンと一緒に防御戦を指揮してくれ。」


「任せてくれれば大丈夫だ。」


林文は爽やかに笑い、指先で空中に虚ろに線を引いた。瞬く間に何万本もの青い光が時空の壁を引き裂き、森に住む緑の精霊のように指先を旋回していた。彼が玄関に向かって歩き出すと、踊るような青い光の粒が彼の空に握った手のひらで飛び交い、やがて光の繭を突き破り、弦の音のように舞う羽根のような弓に変わった。


その美しい姿が白い光の中に溶けていくのを見送り、元清川の目の奥に湧き上がる優しさは春の水が溢れるように、いつもの冷たい表情をほとんど突き破りそうになった。しかし、振り返ってエミリーとメドゥーサの憂いを消した笑顔と目が合った瞬間、その温もりは急に彼の深い瞳の中の一点の星に凝縮した。


「エミリー、メドゥーサ、二人は街の住民の避難を指揮してくれ。」


「うん、わかった。」


「これが本宮とエミリーが愛した男だわ!」


二人は同時に声を上げた。その言葉が空気中でぶつかるや否や、メドゥーサの言葉が消え去った瞬間、二人の頬に漂っていた明るさが、目の奥に静かに広がる波紋と共に、夕焼けに撫でられたように恥ずかしそうな赤みを帯びた。指先まで思わず丸まってしまった。


元清川はゆっくりと刀を抜き出した。刀鞘から立ち上る熱い炎が、刀の柄に積もった霜を焼き払い、斜めの光の中で青みがかった薄い紗のように輝いた。遠くの群衆が雲のように集まり、陣形を作っていく。彼は邪悪な笑みを浮かべ、刀の刃の輪郭が光に包まれ、まるで悪霊の門から出てきた悪魔が囁いているかのようだった。振り返った瞬間、後ろの二人の女性と視線が空中で交わり、三羽の白鷹が雲を突き破り、嵐の中心に急降下するような情景が広がった。


「行動開始。」


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