第50話 聖マゴフ城の調査団
聖マゴフ城から北より南に約二十三ファルサングの赤楓叢林地形の中、冒険者ギルドの主要メンバーで組成された調査団が、その中を冒険しながら進み、空から降ってきた謎に包まれた霧に覆われた未知の戦場を探っていた。
そしてこの新しい調査団を率いるリーダー格は、高い武芸を持っているか、それとも強大な魔法戦技を秘めているはずだーそう、彼らのリーダーは「名探偵」木村洋介と助手の白雪だ…
「おい、お前ら場違いなところに来たの?ここは『民国エレジー』の現場だぞ!」
「場違いなところ?」
黒い縁の眼鏡をかけ、牛人の店主が今週推薦した新鮮な鹿肉をくわえた探偵制服に姿の木村洋介が、ゆっくりと顔を上げ、濃い紅葉で覆われた空を見上げた。動く口角に突然聖なる光が一点に浮かび、まるで天を支える力を秘めているように、作者が耳元で咆哮する声に反論するかのようだった。
「作者、君が間違って理解してるよ。」
「私が間違えた?白雪…そうか?」
作者の視点がゆっくりと、口角に甘い笑みを浮かべた白雪に移った。彼女は後ろろに隠した指先を急に持ち上げ、純白の融雪毛皮コートがそよ風にそっと舞い上がった。白雪の手に握られたピンクと白の枠の拡大鏡は、まるで意図的にスローモーションに挿入したかのように、星の光を反射する大きな目に向かって動くとき、森の中に隠れていた小さな麋鹿が、彼女の喜びに満ちた足元から頭を下げて通り過ぎた。
「そうよ、今週は私と洋介の特集編なの。」
「特集…?」
「俺たちが恐る恐る、作者が俺たちを番外人物に入れてしまうか心配している間に。」
木村洋介が少し下げた顎のラインが、傾いた視線に沿って白雪の豊満な胸元に移った。表紙に金色の焼き付けがある本が、彼女の細く長い二つの指で挟まれ、ベールホワイトの小柄スカートに半分隠れた襞からゆっくりと引き抜かれた。
「チャンチャンチャンチャン、作者さん見てみて。」
その本の表紙には古くて美しい模様が印刷されており、白雪の輝く指先で触れるにつれ、徐々に空の視点に満ちていった。
「最近私たちは『シャーロック・ホームズ探偵集』に夢中になっているの。だから、洋介と一緒に次に登場するときを空想していたの…」
「偉大な探偵シャーロック・ホームズを真似をして、作者にずっと忘れられている理由を解き明かすの。」
木村洋介は指先で帽檐を弾き、空を見上げる目に意気どありが満ち、手を振って掴み、振り返って白雪が半空に差し出した本を受け取った。その後二人は空の視点の下で、体を寄せあって急にしゃがみ込み、赤く染った落葉で覆われた地面で、指先で素早く本のページをめくった。
「元の設定では、私と洋介は魔王討伐団のお気に入りになるはずだったの…でもなぜか、最近のメインストーリーに私たちの登場シーンがないの。」
白雪は美しい目を少し上げ、濃い葉の隙間から漏れる斑模様の青い空を見上げ、急に白目をつけた。
「そうそう、作者ってひどすぎるわ。『新しいのを好きになったら古いのを忘れる』っていう誤った言葉を完璧に体現してる。」
「違う…私はいつもちゃんとタイミングを見計らって登場させてるはずだ…」
その時、作者の疑念の声が揺れる天穹から真っ直ぐ突き抜け、藪のざわめきが作り出した影を切り裂いた。しかし言葉が落ちる前に、木村洋介の平然とした質問が響いた。
「おう…そうか?」
彼は胸ポケットから縁が焦げげた本を抜き出し、空中で揺れる疑いの視線を横に断ち切った。しわくちゃになったページの隅を二つの指で軽くつまみ、木の葉の膜を剥くように慎重に扱い、細い動作の中にためらいを滲ませていた。やがて木村洋介が空を見上げ、深い瞳に冷たい光が一閃した。顔にのぼってきた不安を断ち切るように。
「見てみろ!医務室で寝てる兄を訪ねる時と、議事庁の緊急軍事会議も、俺たちの姿は全然ないだろ?」
木村洋介の鉄証を握った自信に満ちた表情とは対照的に白雪は彼が本を抜き出した瞬間、潤んだ大きな目に驚きの色を浮かべた。手で口を覆った唇が微かに震え、目には信じられない疑念が湧き上がった。
「洋介…君の手にあるの…『民国エレジー』の出版本じゃないの?」
「そんなはずないだろ。こんなマイナーな作品、出版社の連中が目に留めるわけがない。」
木村洋介は指を空に虚ろに振り、落葉が染める真っ赤な色さえ、彼の目底の嫌悪を隠せなかった。しかし白雪はかれの返答に落ち込むどころか、答えを得た瞬間、目に驚きの輝きが宿った。顔を覆った指が急に震え、興奮で急に赤くなった頬に、睫の先が光を放ち、瞼が下がるにつれてチラチラと輝いた。
「じゃあ…『民国エレジー』が漫画版になったの?」
「それこそありえない。作者の下手な絵描きで、一生漫画化なんてできないだろ。」
木村洋介の目尻に凝った冷たい光が、舞い落ちる楓の葉を見ると急に大さくなった。まるで心の底に秘めた優越感が膨らんでいくようだった。
「見ろ、これが俺たちを出場させない悪影響だ。いっそこの小説を完結させちまえばいい。」
その時、本の表紙の中央から闇の光が上がり、彼が急に本を閉じると、その闇の光を飲み込む瞬間、彼が「マイナー」と嘲った作品は白煙と共に真空から砕け散る細い霞とまり、木の葉の隙間から立ち上り、淡い黄色のエネルギー光環となってゆっくりと消えていった。
「あらっ!元の話は、君たちの出番が減んった原因を探ってたじゃなかったの?今度はどうしてまた私への批判大会に変わっちゃったの…ひどいなぁ。」
二人が天穹から漂う声と議論を続ける中、調査団の他のメンバーたちは不思議そうな目で彼らを見ていた。虎のような顔に白い眉毛の冒険者が、音も立てずにそばに寄り、今まさに蛇舌で湿た空気を舐めている蛇人の冒険者の隣に立った。
「見てみろよ。俺たちの団長と副団長、ちょっと変じゃないか?」
蛇人の冒険者が冷たい息を吐き出し、二本の毒牙が見える口元を手で覆った。
「俺も変だよ思う。若者の特殊能力かな…?」
「特殊能力?」
虎人の冒険者が手で薄い霜が付いた眉毛を拭い、急に片手で握りしめた拳を横の木に叩きつけた。木の葉が鵞毛のように彼の足元でふわりと舞い落ちた。その言葉が落ちるや否、蛇人の冒険者は語気を変え、碧い瞳にちょっとしたずる賢いを宿らせた。
「そうだ。彼らは空に幻想で不実な存在を作り出し、それと会話する相手にするんだ。」
「わあ、若者って本当に不思議だわ。少し羨ましいくらい。」
その時、遠くから水筒が揺れる音が聞こえてきた。ワニ人の冒険者が「ハハ」と笑い、木栓を抜いて大きく口を開けて水を飲み、腰に巻いた太鼓に爪を当てながら大股で近づいてきた。彼の鋭い足先が、火のように赤い落葉の上を時空を切るように踏みしめ、低い音を立てた。
「ただ…彼らが早く遊び心を収めて、この密林を探検するという任務を忘れないことを願ってる。」
「おじさん、俺忘れてないよ!」
ワニ人の言葉が終わるや否、遠くから木村洋介の声が風に混じって漂ってきた。彼は腰を屈め、指でスカートの裾を捻る白雪を引き上げ、目を氷の刃のように冷たく遠くの不気味な闇に突き刺した。記憶の扉が、彼の微かにしかめた眉間に閃いた。
白雪との牛人店主が経営する肉脯屋での日常的な訪問を終えた木村洋介が、扉を開けた途端、早朝から部下を率いて偵察任務を終え町に戻ってきたケイが、彼の面前で目を細めて笑っていた。ケイは両手の間で冷たい光を放つ短剣を弄びながら、圧倒的な黒いオーラを背負い、清らかな泉のように堂々と木村洋介の前に立ち、口角が急に上がった。その瞬間、周囲の空気が霧のように凝り固まったかのようだった。
「木村情報室室長、白雪副室長、今日の朝も仕事をサボって逃げたな。」
「ヤバイ…居眠り現場で上司に捕まっちゃった…どうしよう、洋介!」
木村洋介が頭の中で必死に言い訳を考えている間、背後から白雪の機転の利いた率直な呟きが聞こえてきた。ケイの厳しい詰問の視線を前に、木村洋介は白雪の耳元に身を寄せ、小声で囁いた。
「白雪、アホー。こんな状況で本当の意図を言っちゃダメだろ。」
無実の罪を着せられた白雪は明るく笑い、包装袋から醤油漬け肉を取り出し、目を三日月のように曲げてケイの前に小さなステップを踏みながら近づいた。
「長官、今回は許してください。これをあげます。」
「白雪、これは賄賂だぞ。俺らはいい子だから、そんな悪いことはできないよ。」
木村洋介は氷のように冷たい体が晴やかな日光の下で激しく震え、つま先が無意識に青石段の床を点いて疾走し、白雪の後ろに駆け寄り、急に手を上げて彼女の唇を塞いだ。そして「あっ」と悲鳴を上げると、白雪は振り返って不満そうにブツブツ言った。
「また事前に教えてくれなかった。」
「もういい。二人とも。」
ケイは目の前で蜜月期に喧嘩をしているようなカップルを見下ろし、刃に冷たい光を宿らせた短剣をしまい込んだ。眉間に初めて悩みの色が浮かび、指で眉毛をひそめながら、肉脯屋の入り口で騒ぐ木村洋介と白雪を引き離した。そして海の波が巻き上がるような黒いオーラを放ち、二人の周りで燃え上がる冷たい炎を強く鎮めた。
「情報収集の仕事に興味がないのは分かってる。もちろん、責めたりはしない。」
「本当?」
白雪は柔らかい手で急に赤くなった頬を覆い、クリスマスに好きなプレゼントをもらったように喜び、ケイの緊張した眉毛を暖かい泉のように緩むのを見上げた。しかし背後で置き去りにされた木村洋介が急に大きな足取りで前に出、体を隠していた影を引き裂いた。まるで天照大御神に余罪を赦された須佐之男のように、口角にほくそ笑いを浮かべ、眩しい光の中で遠く中央に立っ建物を細めた目で見つめた。
「ケイ、君みたいな思いやりのある上司は最高だ。あの横柄な林文とは違う。いつも無理な指示ばかり下す。」
言葉が落ちるや否、ケイの声が蜘蛛の巣のように広がる冷たい刃のように、木村洋介の首筋に静かに迫った。
「そうだ。二人はすぐに市役所三階の議事庁に行け。林文が待ってる。」
「もう…せっかく情報部の仕事を放ってきたのに、すぐに林文の意地悪な奴に調査の任務を押し付けられるなんて。」
木村洋介は腰を曲げて真っ赤な楓の葉を捨い上げ、白雪の乱れた髪の額に近づけ、空中に浮かべた手を握りしめた。指を絡める瞬間、口角に鮮やかな月の弧を描いた。彼は目に深い決意を宿らせ、目の前の冒険者たちで構成された調査団を真っ直ぐ見据え、力強い声で言った。
「行くぞ。この調査が終わったら、林文の狐より狡猾な奴に、俺と白雪に休暇をくれるよう要求する。」
言い終わると、白雪がそっと寄り添うように囁いた。その声は風の壁を突き破るような冷たい矢のように、木村洋介の耳元を疾く飛び抜けた。
「そうなると、私たちの登場回数がまた減るぞ。」
その言葉の重さが、水に落ちた爆弾のように木村洋介の耳膜で轟き、震える刺激が氷の錐のように体に突き刺さった。まるでこの瞬間、体を動かす力が糸を引くように抜かれていくかのようだった。虎人の冒険者が急に背後に駆け寄り、蜘蛛の網から剥がれたように軽い彼の体を支えなければ、すでに地母神の懐に抱かれていただろう。