第43話 復讐!蛇人族との決戦・後編
聖マゴフ城街地のマクベイパブ。たった今雨上がりのせいか、酒場の外の路面は暖色街灯に照らされ、まるで薄金色の膜を塗られたかのようだ。通行人が踏み込んだ靴跡は、月読様が物足りない路地裏を癒すために、わざと星々の足跡を散りばめたように見え、夜が人々の心にそっと纏わせた神秘的な紗衣を解きほぐすかのようだった。不安げな震えが、その跡に微かに滲み込んでいる。
酒場内では、轟くような人々の声が憂いを忘れる夜の幕を最高潮へと押し上げていた。一日の仕事を終えた者たち、あるいは単に友人と約束した者たちが集まり、濡れた足跡が扉の前で群がり、蠕動するように次々と押し寄せる。高く挙げられた麦酒は、天井から流れ込む光に魔法をかけられたかのように、金の穂の野原のように輝いていた。米の香りと酒の香りが人混みの中に漂い、人々の荒れた頬を赤らめていた。シャンデリアが暖かい流れる霞のような光を放ち、光と影が麦酒と輝き合い、1階の熱気あふれる人波の中で淡い赤い笑顔へと集まっていった。
しかし2階はまったく異なる光景が広がっていた。
蛇の体を脱いだメドゥーサは、今日は碧色に染めたスカートを纏い、裾から蜿蜒とした金糸が広がり、腰元で霧の紗に包まれた青蓮の花のように固まっていた。魅惑的な頬に酔いどれた赤みが染まり、時間が経つにつれて濃くなっていった。しかし心の中の愁いは、まるで何万本もの蜘蛛の巣が広がるように、鎧のように冷たいもので覆われていても、隙間から声のない痛みが染み込んできた。カップの耳に当てた指先が何度も撫で回し、カップの縁に細かいしわが寄り始めた——まるで彼女の穴だらけの心のようだった。
「元清川…どうしてまだ来てくれないの?私を…忘れてしまったの?」
目尻にたまった苛立ちが氷のように広がり、やがて背後に忍び寄る数人の黒い影へと変わっていった。彼女は急に振り返り、スカートの下から一瞬現れた青い光が薄暗の中で冷たい輝きを放った。
「お前ら、本宮に何か用か?」
毛皮のコートを着た男が酒樽に足をかけ、厚い手のひらの指があごを撫でていた。クマのような鋭い目がメドゥーサの体を行ったり来たりと睨みつけていた。
「何でもないさ、夜が寂しくてな、兄貴たちが妹さんと一緒に楽しみたいだけだ」
彼は汚れた大きな手を広げ、指の隙間から暗赤色の汚れが固まった血のように滲み出ていた。腐った臭いのする黒い霧を巻き込みながら、階段の入り口を塞ぐ子分たちの方へ近づいていった。子分たちは沼気が立ち込めるように、後ろから涎を垂らして見ていた。
「兄貴、楽しませてもらったら、俺たちにも分けてくれよ」
「心配するな、忘れない」
男は得意そうに振り返り、下品な笑いがウジのように歪んでいた。頭上で揺れるライトを見上げ、急に話しかけた。
「前回、郊外で狩りに連れて行ったこと覚えてる?」
「覚えてる、蛇人間に会ったあの時だ」
彼らの瞳には淫らな光が揺らめき、重い腐った臭いが瞳から滲み出るようだった。ぼんやりとしながら、2階の空気が急に冷え込み、まるで地獄から這い上がってきた屍が人間界をさまよっているかのようだった。
「兄貴のおかげで、初めて女の蛇人間を遊ばせてもらったよ」
木椅子に正座したメドゥーサは、腰を木の机の縁に凭れかけ、前方で高まる乱暴な淫笑を我慢して聴いていた。「女蛇人」という言葉が耳元に毒の針のように刺さるや、机の縁をつかんでいた指先が急に力を込めた。まるで燃える溶岩が木に注ぎ込まれたかのように、亀裂の焼き印が瞬く間に広がり、内部から錆びつくように腐食し、暗い赤い蜘蛛の糸のような亀裂が滲み出した。蝋燭の火は彼女の怒りで急に揺れ始め、影が蛇のように壁をねじり、亀裂から湧き出る暗い赤い糸のような光が、まるで時間の砂が封印から解け出すかのように見えた。
真っ赤な血の粒子が時空の壁を切り裂くように、彼女の虚しく握った指先を荒々しく駆け巡った。光と影が歪む中、鱗模様をきらめく赤錬の蛇鞭が、集まったエネルギーの渦を突き破り、彼女の指先から飛び出した。霊蛇のようにしなやかな鞭の体が、彼女の細い腰を巻き付け、肩に絡みつき、暗い赤い炎が鱗の開き閉じと共に鍛えられ、すさまじい摩擦音が毒蛇が舌を出すような音を立てた。
「お前ら、何を言っている?さっき何を言った?」
血のような殺意が彼女の瞳に渦を巻き、足元を踏むたびに床板に蜘蛛の巣のような亀裂が広がり、揺れる蝋燭の火が無形の気流で明滅した。
「女蛇人?お前ら、わたしの仲間を傷つける勇気があるのか…」
彼女は冷たい声で問いかけ、赤錬の蛇鞭が急に張り詰め、先端が大声で笑う男の首領に激しく突き刺さった。暗い赤い光が溶岩が沸騰するように輝いた。
「女王の怒りを受け止める覚悟はあるか?」
その時、元清川たちが酒場に到着した。扉をくぐるや否や、濃い血の匂いが襲い来た。彼の瞳が急に縮み——2階の欄干の端から、血を噴き出す大きな頭部が転がり落ち、混雑した階段口にぶつかり、血しぶきが彼らの靴の前に飛び散った。混乱する人々が廊下から次々と押し出され、「蛇人」「蛇妖の嘶吼」という耳障りな叫びが交じり合った。元清川は顔を上げると、2階の廊下の果てに、血の光に包まれたメドゥーサの姿があり、赤錬の蛇鞭が絡みつく中、1体の体が2つに引き裂かれ、切断された四肢が地面に落ちる音が恐ろしかった。温かい血しぶきが頬に熱い炎のように飛び散り、ねばねばとした生臭さが鼻に入り込んだ。彼はその場に固まり、喉元で溶岩が燃えるように渦を巻く動作をしながらも、思わず横にいる村上幸が剣を抜くのを止めた。2階の光景は、まるで焼き印のように彼の瞳に刻まれていた——その血の光の中で、赤錬の蛇鞭が振るうたびに暗い赤い光が溶岩のように注がれ、2階全体が煉獄のように見えた。
「邪魔するな!メドゥーサが無実の人を虐殺しているのが見えないのか?」
村上幸は両目を真っ赤にし、急に元清川の頬に拳を振り下ろした。出雲の剣が泉のように剣鞘から湧き出し、彼の背後に浮かび上がった。剣身には青い蛍光が細かい流れのように揺れ、冷たい光が元清川の喉元を狙っていた。彼は狂ったように叫んだ。
「彼女はお前らの仲間だが、同時に蛇人の一員だ。無実の人を傷つけた以上…彼女は我々が討ち取るべき標的だ。」
言葉が落ちるや否や、出雲剣が放つ寒気がクモの巣のように広がり、地面に霜の紋が肉眼で見えるほど元清川の足元に迫った。彼の手にある日本刀が突然火の蓮を咲かせ、赤い炎の波が押し寄せ、氷霜を三尺押し戻した。氷と火がぶつかる場所で空気がパチパチと鳴り、酒場に残った机や椅子が、両方向から押し寄せるエネルギーの中で、枯れた老木が亀裂するように震え始めた。
「真相を究明するまで、メドゥーサを傷つけることは絶対に許さない。」
林文は村上幸の剣先が微かに震えるのを見抜き、予め攻撃を仕掛けるタイミングを読み取ると、唇をひそめて冷笑を浮かべた。指先で弓の弦を虚しく引き、弦に集まった青い光の粒子が具現化し、三本の青麟の羽翎の矢が冷たい輝きを放ち、相手の額を狙った。
「清川がそう言ったなら、君たちには分かるだろう?」
彼の声には冷たさが込められ、余光で後ろの数人を見渡した。クルレンは腕の筋肉を突然膨らませ、大斧の刃が冷たい光を放ち、喉元で低い唸り声を上げた。
「当たり前だ。誰がメドゥーサの髪の毛一本でも触れようと、まずはオレの斧に許可を聞くんだ!」
木村洋介は指先を鼻梁に軽く当て、聖者の古書が掌から宙に浮かび上がった。書頁が風を受けずに揺れ、金色の符文がページから地面に流れ落ち、防御の結界を形成した。
「我々は誰がメドゥーサお姉ちゃんを傷つけることも許さない。」
白雪は嬉しそうに振り返り、薄い白い長髪が夜の中で軽やかに揺れ、エミリーのそばに寄り添った。
「ねえ、エミリーお姉ちゃん?」
エミリーは剣を抜く動作が果決で鋭く、細剣が鞘から抜ける際にかすかな清らかな音が響いた。聖剣が彼女の手に幻のように現れた。
「白雪ちゃん、それは当たり前じゃない?」
彼女の目は氷の刃のように鋭く、剣先が村上幸をしっかりと狙っていた。
「メドゥーサは我々の仲間なんだから。」
村上幸は指腹で出雲剣の冷たい剣柄を撫で、白虎の精霊の紋が掌に微かな痛みを残した。ゆっくりと振り返り、2階の血の霧の中にそびえる孤独な背中——メドゥーサの手に握られた赤錬の蛇鞭が真っ赤な幕の中でかすかに見え、冷たい光と血の匂いが混ざり合い、喉元に鉄錆のような苦みを湧き上がらせた。彼は元清川を真っ直ぐに見つめ、出雲剣が突然ワンワンと震え始めた。
「元清川…」
かすれた声には心の壁を焼くような痛みが込められていた。
「君は本気なのか…?我々は次元を越え、神龍に重い使命を与えられてこの世界に来た。暗闇で狙う脅威をすべて斬り潰すために…たとえ…たとえ相手がかつて我々と共に戦った者だとしても…」
剣先の冷たい光が急に輝きを増し、彼の瞳に明暗が交錯する葛藤を映し出した。まるで心が裂ける深淵を映す鏡のようだった。酒場の壁に残った蝋燭の火は圧迫の中で完全に消え、剣と刀の光だけが、息を飲むような暗闇の中で激しくぶつかり合った。
元清川は指をきつく握りしめ、刀身の火の蓮が突然咲き誇った。花びらが溶岩のように飛び散った。
「もちろん覚えている。」
彼の声は焼き入れたように冷たかったが、炎は絶え間ない流れのように刀の鍔から広がり、酒場の荒れた窓枠を真っ赤に染めた。血の霧が炎の光の中で燃え上がるように揺れ、2階のメドゥーサの姿が光と影の中でますます曖昧になり、刀身を流れる火の息と共鳴しているようだった。
「でも、メドゥーサがこうするには、理由があると信じている。」
言葉が落ちるや否や、朱雀が火の蓮から飛び出し、清らかな鳴き声が血の霧を突き破った。両翼の炎が滝のように流れ落ち、下で対峙する二人を見下ろした。元清川は喉仏を動かし、刀先の炎が太陽の光のように輝いた。
「でも、我々が与えられた使命が守ることなら、真相を無視してはならない。」
村上幸は手首をひねり、出雲剣がカンと鞘に収まった。剣の鳴き声が虎の咆哮のように轟いた。彼は大股で前に進み、両手を広げて元清川の肩を力一杯叩いた。元清川の肩が微かに震えた。
「そんなに頑固なら、しばらくは君の言うことを聞いてやる。」
余韻が消えるや、彼は急に2階を振り返った。血の霧は二人の対峙中にほとんど薄れ、残ったメドゥーサが岩の彫像のように立ち、蛇の鞭が天井から流れる光の中で暗い赤を揺らし、眠っている毒蛇のようだった。村上幸は喉を鳴らし、独り言のようにつぶやいた。
「そうなら、我々はこの町の全ての冒険者と敵対する覚悟を決めなければならないな。」
目の余光が林文の緊張した肩をちらりと捉え、彼は皮肉な薄笑みを浮かべたが、瞳には温度が感じられなかった。
「林文、君のソフィ妹…きっと君ほどこの『メドゥーサの理由』を信じてはいないだろう?」
林文は弓の弦を撫で、体をドア枠に寄せかけながら村上幸の挑発に応じた。声は天河の星砂のように低かった。
「彼女は分かってくれると信じている。」
その時、メドゥーサが階段を駆け下りてきた。赤錬の蛇鞭が壁と擦れ、火花を散らした。彼女は村上幸と元清川の間に立ち、鞭を軽く上げ、先端を元清川の喉元から半寸のところで止めた。冷たい声で問いかけた。
「私も蛇人間なの! こんな状況で、まだ蛇人族と敵対するの?」
「でも…彼らはおじいさんを殺した。でも君は違う、君は我々の仲間だ。」
元清川が声を上げる前に、白雪が先にメドゥーサの前に立った。指先は微かに震えながらも、冷たく霜のような手のひらをしっかりと握りしめた。口元を手で覆い、暖かい息を吹きかけ、その後優しく微笑んだ。
「メドゥーサお姉ちゃん。」
白雪の元気でいたずらっ子のような表情を見て、メドゥーサの指先が震え、蛇の鞭が暗い流れのように虚空に消えた。両目から温かい涙が流れ落ち、春の雪が溶けるように、冷たい心をぬらしていった。彼女は急に白雪を胸に抱き込み、涙が堤を決めるように流れ、血まみれの頬を二本の悲しみの川のように洗い流した。
「私があの数人を殺した理由は、彼らが単に私を傷つけようとしたからだけでなく、私の目の前で卑猥な言葉を浴びせながら大げさに語り、同族の女蛇人を獣欲を発散するための玩具として扱っていたからだ。そのため、一時の怒りで殺意を抱いてしまった…」
「あいつらは本当に獣以下だ。もし俺だったら、彼らの体を血まみれに引き裂いてやる!」
メドゥーサの悲しみの言葉は、切れた琴弦の音のように、まだ空気中に残っていなかった。すると突然、入り口でクルレンの怒号が炸裂した。彼は斧の柄を地面に叩きつけ、金石がぶつかる大きな音が酒場の床タイルを割り裂いた。亀裂がクモの巣のように広がり、まるで空気さえも切り裂かれるかのようだった。
「村上幸、今真相を知ったら、まだメドゥーサを敵として処置するのか?」
エミリーの視線は、村上幸が握りしめた拳を秋の水のように撫でた——爪が深く掌に食い込み、血糸が指の隙間から蛇のように這い出していた。彼女は静かに聖剣を収め、蓮の花のような足取りでメドゥーサと白雪の震える体を春の蔓のように抱き寄せた。クルレンの怒りで起伏する胸を振り返り、清らかな泉のような声で語った。
「いいでしょう、クルレン。村上幸を責めるのはやめて。」
言葉が落ちるや、彼女は再び村上幸を見つめ、朝の光のように柔らかい微笑みを唇に浮かべた。温かい瞳には、言葉にできない理解が滲み出ていた。
「彼も意図的にそうしたわけじゃないの。」
「ただ…我々の次の立場は…閉じ込められた獣のように進退窮まるでしょう…」
木村洋介の澄んだ声が、酒場に漂う悲しみを切り裂くように響いた。両腕を組み、つま先を無意識に回転させながら、指先をこすり合わせる音が細かい焦燥を奏でた。
「真相を知っても、酒場を飛び出した連中…メドゥーサお姉ちゃんの正体をすでに町中に広めているかもしれない。」
彼は急に元清川を振り返り、風に揺れる残燭のように声を震わせた。
「兄ちゃん、次はどうすればいい?」
「どうしよう? 説得できないなら、戦うしかないだろ?」
クルレンは鼻で笑い、五指を鉄のクリップのように斧の柄を握りしめ、地面に叩きつけた——斧の刃が落ちた場所で、床タイルは氷のように割れ、クモの巣の亀裂が瞬く間に壁際まで広がり、破片が雪のように飛び散った。彼の唇には血を啜るような冷笑が浮かんだ。
「戦う? この数人で? 君の熱血で権力の溝を埋められるわけないだろ?」
林文は椅子を引き寄せて腰を下ろし、寒い潭のような瞳で皆を見回した。声は水に滴るように重かった。
「忘れるな。この町には、冒険者だけでなく、装備の整った軍隊が待ち構えている。」
彼はお茶を注ぎ、顔を下げて飲むと、熱気が睫毛に薄い霧を作り、顔つきをさらに冷たく見せた。クルレンの頬が赤くなるのを見て、突然嗤笑い、茶碗を机の縁に当ててカチンと音を立てた。
「我々に何がある? 肉体? それとも君の古い斧? 俺らのチームには三位の女性がいることを忘れるな。」
酒場は死一般の沈黙に包まれ、蝋燭の火と天井から差し込む光影だけが風に揺れ、壁に映る人々の揺れる影を、檻に閉じ込められた獣のように震わせていた。その時、元清川の声が突然雷鳴のように響き渡った。
「軍隊なら、我々にも一つある。」
彼は顔を上げてメドゥーサを見つめ、目は松明のように燃えていた。瞳の奥には恐ろしい決意が渦を巻いていた。林文と木村洋介はその言葉を聞くや、体が固まり、額から冷や汗がこぼれ落ち、鬢の毛を濡らした。村上幸はしっかりと握りしめた手が急に震え、元清川の顔に愕然とした視線を注ぎ、唇が痙攣するように微かに開き、喉に詰まった言葉を絞り出すようにして、半分途切れたつぶやきを漏らした。
「お前…蛇人族の連中のことを言ってるのか?」
「その通り。これが我々の手にある切り札だ。」
元清川は落ち着いた足取りでメドゥーサの前に立ち、指腹を暁の微風のように軽く彼女の濡れた頬に当て、涙と血の跡を拭いた。指先の温もりは氷を溶かすように、彼女の瞳に残った恐怖を静めていった。
「我々のチームには、女王がいる。」
彼の声は岩のように重々しく、語調の中に千鈞の力が込められていた。
「大切な仲間を守るためなら、棘を踏み砕いても、運命を碁盤に載せても——使えるものは全て費やす。」
言葉が落ちるや否や、彼の腕が急に上がり、鞘に収まっていた日本刀が鳳鳴のような音を立てて抜き放たれた。刃の冷たい光が瞬く間に彼の輪郭を鋭く映し、顔つきを霜のように冷たく見せた。元清川の澄んだ瞳には微かな赤みが混じり、瞳の奥で赤い炎が氷を破るように燃え上がっていた。彼は冷たい視線を空に向け——雲が渦を巻く中で、銀色の月が激しく揺れ、砕けた玉のような光が降り注ぎ、まるで蒼穹すらも間近に訪れる大災厄を予告しているかのようだった。彼は一歩前に踏み出し、背後には無数の霊蛇のような影が静かに湧き上がり、刀の先が指す先で、血の幕が静かに開かれ始めた。寒い冬の天地を巻き込む嵐が、今まさに势いを増そうとしていた。
「さあ、もう一つの戦いの幕を開けよう。」