第15話 言い出せなかったささやき
軒先の銅鈴がそよ風に支えられて震え、剣戟がぶつかるような鋭い音を放ち、まるで戦場の残響が時を超えて響いているかのようだ。古木のねじれた枝に潜んでいた蝉が、急にカニクイムシの羽根のように薄い翅を広げ、その影がきらきらと輝く葉の表面をすり抜けると、日光が翡翠の欠片に切り裂かれ、優しい碧色の波紋を広げた。
呉純言は顔をしかめ、瞳の奥を流れ星のような冷たい光が駆け抜けた。まるで夏の夜に落ちる月の刃のようだ。彼は教壇の下を見つめた——放課ベルが潮のように轟き、生徒たちはすでに教壇に立つ白い(霜のような)姿を忘れ去り、笑い声や会話声が天井を突き抜けるほど沸き返っていた。
彼の口角が氷柱に刺されたように痙攣し、衣の裾は氷の洞窟に溜まった霜の精髄に染まったかのように冷たそうだった。指先で教壇を叩く戒めの棒さえ、さらさらとした水音を立て、蝉の鳴き声と共鳴して耳に残る清らかな曲を奏でた。
横を向いてため息をつく間に、「目に入らざれば心に悩まず」という古い諺が喉元を転がり、ついに彼は戒めの棒を袖の中に隠し、教室を出た。
廊下の外は沸騰する泉のように騒がしく、青年たちが授業をサボることを話し合う笑い声が清々しく、まるで古い世紀の蓄音機の箱から流れてくるかのようだった。
呉純言は廊下に立ち止まり、もともと氷で冷やされた深い池のような冷たい目が、静かに夜の薄い紗をかけたように曇った。
新竹私立高校の二大「御曹司」——元清川と林文の姿が、空を流れる酔っ払ったような雲の中に溶け込んでいく。着物には金色の光の欠片がまぶされ、まるで真夏の日差しが溶かした流れ火のようなシルエットを描いていた。
高一学級棟317番教室の廊下の外では、元清川と林文が押し合いながら戯れており、後輩たちが投げかける不思議そうな視線を、二人は笑いの波で受け止めていた。
元清川は足取りが軽やかに、衣の裾が風を連れて教室に入ってきた。ちょうど先ほどの冷たい顔の中年教師とすれ違うところだった。彼のキツネのような目が突然輝き、笑みが氷晶のような弧を描いた。
「授業お疲れ様です。先生、涼茶を一杯召し上がって暑さを癒さればいいですよ。」
中年教師は眉間が霜のように寄り、鼻で「ヒュー」と刃物のような音を出し、袖を振って立ち去った。林文は柱に寄りかかって大笑いし、その笑い声で窓の外の小鳥を驚かせ飛ばした。そして視線を元清川のますます固まった恥ずかしそうな笑顔に留め、まるで雪のキツネが棘の茂みに迷い込む滑稽な様子を思わせた。
ふと、窓枠のそばで清らかな嗤い声が上がり、氷が割れるようなカチッという音が響いた。
元清川は目元が急に鋭くなり、横を向いて見る——李敏が光と影の境目にふわりと立ち、琥珀色の日光の中に浮かぶ冷たみを帯びた蝶のようだった。指先で唇元を支え、笑みが暁の光が氷を破るかのように浮かび上がりながらも、瞳の底には霜を纏った冷たい光が凝っていた。彼は突然キツネのような笑みを浮かべ、声を軽やかに滑らせた。
「敏ちゃん、探しに来たぞ。」
元清川は指先で前の席の椅子の背を軽く叩くと、椅子の足が床と擦れてカツカツと小さな摩擦音を立て、そのまま李敏の机のそばに落ち着いた。背筋を松のようにまっすぐに伸ばしながらも、口調には三分の温もりが込められていた。
「敏ちゃん、新しい環境は慣れた?クラスメートは優しくしてくれる?」
言葉が落ちるや否や、林文は片手で左側の椅子の背をつかみ、椅子の足が床を軽やかに弧を描きながら動いた。通り過ぎる際、目に星を宿したように輝く後輩たちに手を振り、にっこりと笑いながら声を上げた。
「誰かがお前をいじめたら、俺の名前を言えばいい。この学校で俺の名前を聞いたことのある奴は、みんな三分は恐れるぞ!」
話し終わるや、元清川の指先が彼の額を軽く弾き、笑みの中に薄い氷のような冷たさを混ぜた。
「本当に『一校の覇』ぶってるのか?こんなに派手にやるなら、後輩たちの目に映る『玉の輿』みたいな幻を、粉々に砕いちまうぞ。」
李敏は指先で唇元を軽く覆い隠し、笑窪が淡い笑みを広げた。その表情は春の小川に踊る粼々とした波のようだった。眉を月のように弯め、声を蜜に浸したように柔らかく話した。
「いいでしょ?二人とも喧嘩しないで。クラスの人たちはみんな優しくしてくれるの。誰もいじめようとは思ってないから、安心してよ。」
言葉が落ちるや否や、元清川の指先が彼女の髪の毛先を軽くつまみ、林文は机に寄りかかって笑いながら、彼女の頬に浮かぶ淡い赤みを目に映した。それは朝露が桃の花びらに付いたかのような、鮮やかな色合いだった。
元清川は急に眉をひそめ、まるで急に戦場に臨んだ将軍のように厳然と李敏を見つめた。
「そうだ、昼休みに一緒に弁当を食べよう。母が作った弁当、めちゃくちゃおいしいんだ。」
言葉が落ちるや否や、彼の狐のような目が急に上向き、目尻から光が走り、刃物のような戯曲ぶりを林文に向けた。
「林文、お前、牡丹を引き立てる翠竹の緑葉になってくれないか?」
林文はその声を聞くや机を叩きながら大笑いし、窓枠までカタカタと揺れさせた。笑い声にはいたずらっ子のような温もりが混じっていた。
「緑葉なら緑葉だ!お前の『氷山の雪狐』を少しでも溶かせるなら、それだけでも功德一件だぜ!」
言い終わるや否や、指先で机を叩くリズムが、廊下で徐々に高まる蝉の鳴き声と奇妙に調和し、まるで夏風が奏でる冗談のような楽章を作り出した。
元清川は指先で李敏の白い手首をそっと包み込み、雲のように軽やかな力加減で、羊脂玉のように滑らかな肌に少しでも跡を残さないよう気を配った。まつ毛を下げ、声を琥珀のように固めて話した。
「放課後の部活動の時、私と林文が一緒に学校周辺を案内するよ。」
その言葉が落ちるや、李敏の瞳には氷刃のような冷たい光が閃き、眉間には冷たい池のしわが寄り、冷たい視線で厳しく詰問した。
「その時、授業は休むの?また無断欠席するつもり?」
李敏の氷のような叱責に、元清川は真顔でうなずいたのに対し、林文は机に寄りかかって爆笑し、木目の隙間からひび割れるように粉塵が舞い落ちた。指先で机を叩く音が太鼓のように響き、笑い声にはいたずらっ子の波乱が込められていた。
「午後だけじゃない!さっきから廊下で立ち仕事をしてるんだ。半日を風に捧げちまったぞ!」
李敏はその言葉を聞くや顔色を急に暗くし、腕の力が急に強まり、手を引き抜くのは剣を抜くかのようだった。立ち上がる際、腰掛けの足が床を引きずる音が絹を裂くような音を立てた。瞳には炎のような光が燃え上がり、怒鳴り声は氷を砕くような鋭さだった。
「前にちゃんと授業を受けるって約束したでしょ?どうしてまた無断欠席なんてするの?ずっとそうやってると先生に嫌われるわよ!」
元清川が説明を始める前に、そばにいた林文が急に追撃の言葉を浴びせ、小さな目元には悔しそうな表情を浮かべた。
「もともと元清川一人で罰則を受けるだけだったのに、彼が急に先生に『一人で廊下に立たされるのは寂しいから、林文も一緒に』って頼んだんだ!」
李敏はその言葉を聞くや急に腰を下ろし、頬を膨らませて袖を握りしめ、体をねじった。まつ毛が怒りの炎を揺らし、怒鳴り声は氷が割れるような鋭さだった。
「今日は君のことは無視する!すぐ教室に戻って、欠けた授業を補いなさい!」
言い終わるや否や、彼女の背中は鉄の壁のように固くなり、元清川の視線を遮った。元清川は説明の言葉が喉に詰まり、ただ彼女の鬓の髪が怒りでそよそよと揺れる様子をじっと見つめていた。それは風に吹かれる雪のようで、教室中に響く蝉の鳴き声だけが沈黙を噛み砕いていた。
「敏儿……」
元清川の瞳にはまだ溶けない霜が絡みついていたが、半分ほど暖かみが混じり、彼女の横顔を壊れやすい月のように見つめていた。喉元の言葉は彼女の怒りに焼かれて声にならず、蝉の騒ぎの中で塵のように砕け散った。林文は春の燕を持ち上げるように彼の後ろ襟を引っ張り、三歩並んで二歩で廊下へと連れて行った——後輩たちの瞳に浮かんだ波紋が二人の背中によって砕け、教室に舞い散るタンポポの綿毛と化す、李敏の肩にそっと落ちた。
廊下の足音が蝉の鳴き声に完全に飲み込まれるまで待ってから、李敏は横を向いて振り返った。背中はまだ溶けない鉄のようだったが、すでに細かい亀裂が入り始めていた。夏の暖かい光が窓から流れ込み、彼女の瞳の冷たい流れを少しずつ溶かしていった——元は霜のように固まった氷柱だったのが、琥珀色の光の中でそよそよと星屑のように砕け散っていた。目尻には涙が朝露のように固まり、まつ毛の先で震えながら落ちそうになり、風に揉まれて砕けた。彼女は空っぽの廊下を見つめ、声は蝉の羽根のように軽かった。
「清川……」
その呼びかけは形になる前に窓の外の揺れる光に溶けてしまい、千言万語が喉元で熟れない梅の実のように固まり、甘酸っぱい甘さを残した。
元清川が乱暴に教室に引き戻された時、彼の腕はまだ激しく揺れており、振りほどこうと必死に抵抗していた。立ち止まるや否や、力一杯林文の手を振り払い、眉間に深い皺を寄せ、怒りを込めた声で言った。
「何で私を引き戻す?李敏が怒ってるのが見えないのか?」
言葉が落ちるや、林文の指先が男子生徒の肩に軽く触れると、その生徒は即座に席を立ち、軍命を受けたかのように丁寧な動作を見せた。林文は落ち着いて腰を下ろし、口角を冷たい弧に上げながら、元清川の赤くなった目を氷のような視線で射抜いた。
「お前も、彼女が怒ってることは分かってるんだな?」
元清川は椅子を力一杯引き寄せ、胸を上下させながら腕を組み、林文をにらみつけて憤りを漏らした。椅子の脚が床を擦る音が耳障りに響き、教室をいっそう静かにした。
「当たり前だろ!目が見えないわけじゃないだろ!」
しかし林文は彼のぶつぶつを聞くふりもしなかった。急に背筋を伸ばし、指先で机の縁をリズミカルに叩く様子は、まるで将軍が兵を点検するかのようだった。ちょうどその時、斜めに差し込んだ日光が窓枠から入り込み、彼の肩を金色に染め上げ、いっそう冷たい威厳を漂わせた。突然目を上げると、刃物のような冷たい光が元清川を貫いた。
「でも、彼女が怒った理由を知ってるのか?」
元清川は喉元が詰まった。椅子の座面が急に熱く感じられ、思わず体を少し動かした。唇を無意識になぞりながら、口ごもりながら反論した。
「ただ…授業をサボっただけじゃないか、他に何が——」
言葉が途中で途切れた。林文が突然ひそひそと笑い出した。その笑い声は軽やかだったが、元清川の心に氷水を浴びせるような冷たさだった。
「お前、怖いんだろ?」
林文の声が急に冷たく鋭く鉄のように響き、空気を固まらせるほどだった。元清川は体全体が固まり、背もたれから流れる冷や汗が制服をぬらしそうになった。慌てて手を振り、息を切らすように早口で言い、漏れそうになる恐怖を隠そうとした。
「恐れる?私が恐れる?台湾で…何が恐れるに値するものがある?」
しかし言葉の終わりはふらふらとして、自分でも信じられないほどだった。林文はその様子を見つめ、目の奥に暗い光がよぎり、まるで全てを見抜く神のようだった。
「君は彼女を失うのを恐れているんだ」
林文の声は鉛のように重く、一語一語が元清川の胸に突き刺さった。瞬く間に、元清川の瞳が針の先ほどに縮まった。窓の外で蝉の鳴き声が突然爆発したが、彼は全身の血が凍りついたように感じた。林文の厳かな視線が、重なった偽りを切り裂くように彼を貫いた。
「だからこそ、彼女を命より大事に守り、手続きを通じて転校させた——ただ一瞬も視界から離さないためだ」
教室は墓のように静まり返った。元清川の唇元で指先が震え続け、喉元に言葉が詰まりながらも、ついには自嘲の笑い声を漏らした。日差しがいつの間にか角度を変え、彼を影に包み込んだ。林文の姿は光と影の境目でますます曖昧になり、ただその言葉だけが呪文のように耳元で響き続けた。急に、真夏の教室が、骨まで凍えるほど冷たいと感じた。
夕日が通りを赤金色に染め上げていた頃、元清川はまだぼんやりとした足取りで帰り道を歩いていた。一日の時間は霧の玉に揉み込まれたかのようで、記憶の欠片が砂のように散らばっていた——李敏に説明に行くことを忘れていたし、林文との別れの挨拶すら思い出さなかった。すべきことも言うべき言葉も、頭の中を旋回する詰問によって粉々に砕かれてしまった。足取りがどんどん重くなり、肩にかけたハンドバッグが足取りの速まりにつれ、息苦しくなるほど重く感じられた。
暮色が濃くなるにつれ、彼の影は街灯に引き伸ばされ長く伸びていたが、枯れ葉のように地面に縮こまっていた。突然、夕風が吹き抜け、彼の衣の裾を巻き上げ、まるで見えない手が押し込むかのようだった。元清川は急に立ち止まり、喉元から湧き上がる疑問が石板を押し潰すほど重く感じられた。
「本当に…恐れているのか?」
声はため息のように小さく、それでも鼓膜を痛くするほど響いた。思わず拳を握りしめたが、手のひらは冷や汗でぐったりとしていた。
街路のショーウインドウには、彼のぼんやりとした輪郭が映っていた。いつも意気揚々としていた青年が、今では背骨を抜かれたかのように萎びていた。李敏との楽しい笑い声の過去、林文の皮肉な視線、無理に作り出した笑顔……すべての光景が頭の中で渦を巻いていた。急に、足元の道すら沼に変わったように感じ、一歩一歩が自己不信の泥沼に沈み込んでいく。暮色がさらに濃くなり、街灯の光暈すら曖昧になり始めたが、彼はその場に立ち尽くしていた。疑問符でくり抜かれた彫像のように。
「彼女は…」