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民国エレジー  作者: 上村将幸
台湾の思い出編
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第12話 誓約

「お兄ちゃん、林文お兄ちゃん、もっと飲みたい…」

木村洋介はぐったりと果物屋の裏座敷の木製テーブルに凭れかかり、両頬に桜の花びらのような淡い赤みが染まっていた。酔いどれた目元でふらふらと上半身を支え、指先で胸を軽く叩いていた。やがて、豊かな果実の香りを孕んだげっぷを一つ吐き出すと、それは熟れた桃が喉元でパチンと砕けるような甘みだった。甘ったるい息遣いに、満足げなため息が混じり、すぐにまた体全体が糖漬けの飴のようにぐったりと崩れ落ちた。腕をテーブルの縁から垂らし、柔らかな指先は一枚の果肉を摘む力すら、蜜酒に溶かされてしまったかのようだった。


この日、四人は果物屋の開店を祝い、市場へ新鮮な野菜を買いに出かけ、裏座敷の小さなキッチンに台所を設けた。李敏は張婕桜が秘伝の薬草と果物を煮込んで作った特調飲料を持ってきた——本来なら数日間冷暗所に蔵しておき、糖分がじっくり発酵・沈殿した後に開けるはずのものだった。しかし木村洋介は星露に濡れたような瞳をキラキラと輝かせ、枝に垂れる桜の実のように震えながら、「もっと」と甘ったるい声で懇願した。それに加え、林文が横で目配せをしながらにっこりとけしかけるものだから、李敏はついにこの精霊のような瞳を持つ少年に負けてしまった。彼女は愛情こもって目の前の子供っぽい弟を見つめ、まるで古い経典から飛び出した仙童が人間界で戯れているかのように思えた。そして木村洋介の頭を軽く撫でると、温かい壺を彼の腕に渡した。すると少年はまるで飴細工を手に入れた子供のように、その場で跳ね回りながら旋回し、笑い声は軒下の風鈴よりも澄んで響いた。その陽気さは、夕暮れの空さえも彼の頬の霞色に染まっていた。


元清川は戸棚の奥から青釉の磁器の杯を数枚取り出し、木村洋介に手を振った。ところが林文が急に壺を奪おうとすると、少年は猿のように器用に腰をかがめ、椅子のそばにすり抜けて座り込んだ。その時、髪の毛先には隠していた果実の香りがまだ漂っていた。窓の外の空は次第に濃い紺色に沈み、しかし少年たちの元気は果実酒に火をつけられたかのようで、昼間の店舗整理の重労働など、朝露のように儚く消え去ったことのように感じられた。李敏だけが違った——彼女は朝から晩まで店内外をほこり一つ残さず掃除し、今ではぐったりと疲れ果てていた。料理が揃うと、彼女は優しく木村洋介の汗ばんだ鬓を撫でた。

「飲みすぎないでね。私、先に寝るわ。」


そう言い残すと、夕暮れの中へと寝室へ向かった。スカートの裾が撫でた床には、まだ温もりの残る言葉が、しばらく漂っているようだった。


裏座敷はだんだん暗くなり、蝋燭の炎が揺らめく中で磁器の杯がチンと鳴る。果酒の甘い香りと少年たちのにぎやかな笑い声が絡み合い、蜜色の網のように新築の店舗を暖かい繭のように包み込んだ。木村洋介のまつ毛には酔いの微かな光がついて、まばたきするたびに星屑を振り落とすようだ。林文の怒ったふりの叱り声には笑みが隠れて、元清川が頭を下げて酒を注ぐとき、耳の先がそっと赤くなった——この初めて咲く夜は、青春と果酒によって最も濃厚な甘酒に醸造されていた。


夜は深く垂れ込み、軒先の寒いカラスが首を縮めて立ち、月に向かって途切れ途切れの悲しげな鳴き声を上げた。元清川は立ち上がり、台所へ向かい、ひしゃくですくい上げた清水を手に取った。指先が磁器の椀の表面を撫でると、五月の夏の夜に静かに立ち込めた薄霧に触れた。まるで薄い紗が肌を撫でるような感触だった。甘い露が口に入り、清涼感が糸のように喉を伝って流れ込み、鈍い酔いが涼しさに徐々に解けていった。まるで混沌から一筋の明るさを引き出したような、すっきりとした気持ちになった。


寝室の外で微かな物音を聞いて、李敏は眠そうな目をこすりながら内室を出てきた。蝋燭の揺れる光の中で、彼女の潤った瞳には薄い霧がかかっていた。長い髪が滝のように垂れ、柔らかい髪の毛が動作に合わせてそっと揺れていた。元清川はそっと彼女の前に来ていた。指先で彼女の絹のような長い髪をとても軽く撫でる動作には、戦場を征したような荒々しさがありながら、目線は目の前の人に優しく溶け込んでいた。それは鉄血の男には珍しい優しさで、刃物を鍛えた後の暖かい玉のように、しっかりとしていて懐かしみに満ちていた。

「え?」


李敏はまつ毛を震わせ、声にまだ消えない眠気が混じっていた。


「私がうっかり起こしてしまった?」


李敏はそっと首を振り、まぶたにはまだ乾かない涙がついていた。疲れた蝶のように元清川の胸に寄り添うと、蝋燭の火が二人の影を窓枠に投げかけた。彼女の髪に残ったジャスミンの香りが男の鼻先に漂っていた。

「彼らは昼間働いて疲れているから、夜に風が冷たいかもしれないと思って、薄い布団を追加しようと思った…」


声は春の蚕が糸を吐くように、まだ柔らかさが残っていた。元清川は掌を彼女の温かい背中に当て、指腹で肩甲骨の輪郭をそっと撫でながら、蜜のように甘い声で言った。

「実は僕も君と同じことを考えていたんだ——酒の匂いが少し消えたら、君が用意してくれた三組の布団を探しに行こうと思っていた」


李敏は寝室に戻ろうとしていた。扉の簾に指先が触れた瞬間、元清川の腕が彼女を優しく抱き込み、まるで柳の綿が風に運ばれるように体がふわりと彼の胸に落ちた。蝋燭の光が彼の眉の稜線に細かい影を落とし、喉仏がかすかに動いた。手のひらで彼女の細い腰をしっかりと締め付け、声は酒粕漬けのように震えていた。

「敏ちゃん…明日、母に頼んで李おじさんに結婚の申し込みをすることに決めた。高校を卒業したら、きっと君を妻に迎える。これから先、君を少しでも傷つけさせない。」


最後の言葉が落ちると、彼の指先は無意識に彼女の後頸を撫でていた。鉄血の男の手のひらに、汗が滲み出ていた。まるで戦場で指揮を執るよりも、もっと勇気が必要な瞬間だった。


「清川、君は知っている? 僕らの門地は雲と泥のように隔たっている…」

李敏の指先は震え、彼の胸を必死に押し返した。瞳には苦みの波紋が広がり、蝋燭の揺れる光に照らされた白い顔は、砕けた玉のように切なかった。喉元には酸っぱい梅のような物が詰まり、涙が切れ目なく頬を伝って襟の双蓮刺繍に染み込んだ。髪を乱し、銀簪を握りしめた手は冷たい月の光に染まり、声は震えながら続いた。

「張おじいさんの恩がなければ、僕ら父娘は今でも町の果物売りの虫けら。踏みにじられる雑草同然だった…命は塵のように軽いのに、どうして今日この果香に包まれた小さな家に住めるの?」


「バカ娘…」

元清川の温かい言葉は途中で途切れた。裏座敷からくぐもったくしゃみが幾つか聞こえてきた。李敏は蓮の花が揺れるように軽やかに内室に戻り、寝台の暗格から三組の白い布団を取り出した。薄い絹のような布団は、雲のように整然と重ねられていた。振り返ると涙ぐんだ顔で、布団を彼の腕にそっと置き、驚いた小鳥のように部屋のドアを閉めた。元清川の腕の中には布団がふわふわとしていたが、まるで彼女の体温と茉莉の香りが残っているかのようだった。彼はドアに寄りかかり、残った言葉が風の綿のように消えていった。

「バカ娘、私の母がもうずっと前からあなたを将来の嫁だと思い込んでいることを知らないの? 特にあの日病院で祖父が「孫嫁」と呼びかけた時、母の目尻に滲み出た笑いのしわは、今でも朝焼けの空に輝いているのよ……」


夜風が部屋を吹き抜け、元清川は灯籠を消し、机に伏して眠る林文と木村洋介に布団をかけた。林文の眉は愁いのように寄り、木村洋介の唇はまだ夢の中でつぶやいていた。廊下に戻って夜空を見上げると、ひとつの星が沈むように見え、冷たい霧が紗のように巻きついていた。まるで夜露が服に染み込んだのか、それとも心の湖に波紋が広がったのか、まつ毛に霜のような露が重くなっているのを感じた。


元清川はゆっくりと李敏の部屋の前まで歩き、戸枠に寄りかかった。指先は木の紋様を無意識に撫でていた。夜色が窓を染め、彼の喉に溜まった千言万語は、ついに古い誓いの言葉に変わった。

「君の長髪が腰まで届くのを待てば、僕は残りの人生をかけて君を娶る。十年でも二十年でも百年でも、ずっと待っている。」


言葉が落ちるや否や、部屋の中から泣き声が響いた。まるで軒先の糸が切れるように、寒い夜の孤雁のように、切ない声が静けさを引き裂いた。廊下の風灯さえ震え、蝋燭の芯から青い火花が散った。

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