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8.バレリアナは燃えている

アラン・ギィズリードは自分の前世が日本の男子高生・新妻亜嵐だったこと、この世界が乙女ゲーム『おとせか』こと『聖女おとめは世界樹の花を咲かせる』の世界であったことを思い出した。


明日は悪役令嬢との婚約を破棄し、聖女との婚約を発表する断罪イベント。


だがアランの推しは悪役令嬢の兄なのだ。


アランは推しを幸せにするため、そして自分も幸せになるために奮闘する!

ギィズリード家主催のパーティは、つつがなく終了した。


婚約破棄も断罪もない、ごく普通のパーティ。婚約破棄を公にしていないので、俺はバレリアナをエスコートし、なぜかロディがアルカンナをエスコートしていた。

ゲームでは、ロディとアルカンナにはこの時点での接点はない。今後どんなルートになっていくのかまったく読めないが、俺がアルカンナをエスコートしない以上エスコート役が必要だったのでそういうことになったのだろう。


これからのストーリーは、原作にはない。

アルカンナとは友人としての仲を深めながら、魔王の復活までできるだけステータスをあげなければならない。


それにしても、なぜ俺とアルカンナとバミッド兄妹で、ダンジョンに行くことになっているんだろう?


8.バレリアナは燃えている


「アラン、昼食をご一緒いたしましょう」


パーティの翌日、バレリアナは昼休み前に俺に声をかけてきた。

ざわ、と周囲がどよめくのを感じた。なにせ学園では、俺とバレリアナの不仲は知れ渡っていたからだ。俺がもちろん、と頷くと、そのざわめきはさらに大きくなる。何せ最近の俺は、バレリアナにとてもひどいことをしてばかりだった。


だが、以前までのアランはもういない。


「わたくし、お気に入りの場所がありますの。こちらへどうぞ」


先導するバレリアナに、俺はついていく。今まで気にもかけたことがない、中庭のさらに奥がちょっとした丘のようになっていて、周囲よりも少し高いところに四阿があった。

四阿にはすでに、アルカンナが座っていた。


「アラン!バレリアナ様!お待ちしていました」

「待たせてごめんなさい、アルカンナ。でも、ひとつだけよろしいかしら?あなたは聖女候補だけど、今はまだ男爵家の人間。あなたよりも身分が高い人物が来ることがわかっていたら、先に座っていてはだめよ」

「…!」


アルカンナは驚いたように目をみはる。


「ば、バレリアナ…」


俺は正直、ハラハラした。バレリアナの言うことはもっともだ。だが、アルカンナは貴族社会の常識を教えられずに生きてきた。わからないことばかりなのだ。

バレリアナの言い方は少しきついから、アルカンナが泣き出してしまうんじゃないかと…。


「教えてくださってありがとうございます!バレリアナ様!」


思ったが、アルカンナはにっこりとバレリアナに笑いかけた。

え?え?…バレリアナはこないだまで、アルカンナをいじめてたよね?こわくないの?

きょとんとしている俺に、バレリアナは呆れたように溜息をついた。


「わたくしたち、色々お話をしたって言いましたでしょう?これからはわたくしが、アルカンナ様に色々教えて差し上げることにいたしましたの」

「そうなの!私ってなぜか女の子の友達ができなくて、…アランは優しいけど、やっぱり女の子にしかわからないことってあるでしょう?そういうのをバレリアナ様が教えてくれることになったの」

「アルカンナ様、殿方にあまり親しげに話しかけるのもよくありませんわ。無駄に敵を作ってしまいますからね。あくまでも一線を引いた態度で接するのがよろしいですわよ」

「それが貴族ってことですよね。ごめんなさい、私今まで同年代の友達もいなかったから、嬉しくて…はしゃいじゃって」

「今からでも少しずつなおしていけば、そのうち皆さんわかってくださいますわ」

「ご指導お願いいたします、バレリアナ様…!」


なんか、バレリアナが熱血指導している…?

いや、ふたりが良い関係になれたなら、それでいいけど。

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