26.エンディング2
アラン・ギィズリードは自分の前世が日本の男子高生・新妻亜嵐だったこと、この世界が乙女ゲーム『おとせか』こと『聖女は世界樹の花を咲かせる』の世界であったことを思い出した。
明日は悪役令嬢との婚約を破棄し、聖女との婚約を発表する断罪イベント。
だがアランの推しは悪役令嬢の兄なのだ。
アランは推しを幸せにするため、そして自分も幸せになるために奮闘する!
俺がバレリアナとの婚約を解消したことは一応秘密になっていたのだが、いつの間にかロディと婚約した話とセットになって学園に広まっていた。
貴族社会は狭い。大方どちらかの両親、あるいは両方がどこかでした話が広まったのだろう。
*エンディング2
学園ではすでに俺とバレリアナとの不仲が広まっており、かつ先日ロディが俺への過保護っぷりを見せつけたこともあってか、俺とロディの婚約はすんなり受け入れられていた。曰く、元は親の意向で同い年同士の俺とバレリアナが婚約していたけれど、兄のロディと愛情を深めていたのだろう、と。さらに最近はバレリアナとの仲が修復していたこともあり、円満に婚約解消&新しい婚約が行われたということになっていた。
婚約破棄後即その兄と婚約…というと、聞こえが悪い気もするのだが、少なくとも俺の周りでは好意的に受け入れられているようだ。
さらに。
「アラン。お疲れ様」
「…ロディ様。その、毎日迎えに来て下さるのは、嬉しいのですが…」
「喜んでくれるならよかった」
ロディって、こんなに強引な性格だったっけ?
なぜか婚約してから、ロディが毎日学園に迎えに来るのだ。
「その、お仕事は…いいのですか?」
「仕事は、きちんと終わらせてきているから心配ないよ。アランは優しいね」
ロディの笑顔に、周囲のギャラリーからきゃぁっと歓声が上がる。
なにせロディは目立つのだ。この美貌だから当然のことだし、その姿を少しでも視界に収めたいのはわかるが、毎日俺を迎えに来て美を巻き散らかしているというこの状況は、あまり喜ばしくない。
「ロディ様は、ご自分の人気を自覚していらっしゃいますか?」
「うん?」
「立っているだけでかっこよくて、生徒みんながロディ様に見とれているんですよ」
「…う~ん、おおげさだね」
「だから、もう迎えに来ないでほしいんです」
ロディはぱち、と目を瞬かせた。それからふんわりと微笑んで、首を傾げる。
「それって、やきもち?」
あ~…なんでこんなことに。




