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25.エンディング1

アラン・ギィズリードは自分の前世が日本の男子高生・新妻亜嵐だったこと、この世界が乙女ゲーム『おとせか』こと『聖女おとめは世界樹の花を咲かせる』の世界であったことを思い出した。


明日は悪役令嬢との婚約を破棄し、聖女との婚約を発表する断罪イベント。


だがアランの推しは悪役令嬢の兄なのだ。


アランは推しを幸せにするため、そして自分も幸せになるために奮闘する!


「おめでとう、アラン。これ、婚約祝い」

「あぁ、ありがとう。アルカンナ…」


ついこの間までかなり親しい間柄だった女の子に、満面の笑みで婚約祝いを渡される男。それが俺だ。淡い水色のポプリからは、落ち着くようないいかおりがした。


両家(?)の前で婚約発表をした翌日。

結局あまり話せなかったからと、バレリアナとアルカンナに呼び出された俺は再びバミッド家を訪れていた。

見事な庭を眺めながらの優雅なお茶だが、実際はいつものように俺がふたりに遊ばれている。


「わたくしからは、アランが以前から欲しがっていたわたくしの超大作のボトルシップを差し上げますわ。新居の用意が整いましたら、そちらに贈りますから」

「え、いいの?あのボトルシップ、かなりがんばって作ったんだろう?」


こんな状況だが、バレリアナのお祝いは単純に嬉しい。

バレリアナは、魔力のコントロールの練習もかねてボトルシップを作るのが趣味なのだ。大きくて繊細なボトルシップは、バレリアナの魔力の証明でもある。俺は剣術ばかりで魔力は強くないから、子供の頃からバレリアナのボトルシップがうらやましかったのだ。

どんなにほしいと言っても譲ってくれなかったのに…。


「もうお義兄様になるから、特別ですわ」

「……おにいさまになる…」

「あら、そうでしょう?アランお義兄様」


*エンディング1


俺は頭を抱えた。

ついこの間まで結婚すると思っていた女性の、義兄になるなんて。

ていうか推しと結婚って。夢?夢なのか?俺には夢属性はないはずなのに…。

ていうか、バレリアナはそれでいいのか?一方的に婚約破棄されて…その結果が自分の兄と婚約なんて…。


俺はちら、とバレリアナを見た。

すると、俺の顔を見て言いたいことを察したのか、バレリアナははぁ、と溜息をつく。


「あなた、変わりましたわね」

「え?」

「わたくしと婚約をしていた時とも、カンナと仲良くしていた時とも、違う顔をしていますわ」

「たしかに」


アルカンナもバレリアナの言葉にうなずく。


「私と一緒にいてくれた時のアランは、かっこよくて頼りになったけど、今みたいに優しい顔はしてなかったわ!」

「優しい…そうね。今が、一番優しい顔をしていますわ」


俺には当然、亜嵐としての記憶を思い出す前のアランの記憶もある。

あの頃の俺は、たしかに傲慢だった。自分が一番の男だと思っていたし、アルカンナを助けることこそがその証明になると思っていた。そのためには、バレリアナを傷付けてもかまわないと思っていた。でも、それも俺の一部だ。


「ふたりには、ひどいことをしたと思っている…」


だからこそ、俺は変な気持ちなんだ。

ふたりを北の森の調査に送り出すだけで、何もできない。俺の実力じゃ、それは仕方ないことだけど、あんなに威張り散らしてたのにこんなに無力なんて。

そのうえ…


「ひどいことをしたのに、ロディ様と婚約して幸せの絶頂で、申し訳ない~ってこと?」


アルカンナの言葉がズバッと俺の胸を貫いた。

そう言われればその通りだが、あまりにも情けないやつじゃないか。


「うぅ…っ」


胸を抑えて崩れ落ちた


「ほんと、ばかね~」


アルカンナは呆れたように言ってお茶をひとくち飲んだ。


「色々あったけど、アランって良い人だもん。幸せになってほしいよ、私」

「わたくしも同意見ですわ」


ふたりの言葉に、俺は顔を上げた。やさしい2対の目が、俺を見ている。


「でも私たち、今から忙しいから!勝手に幸せになってよ!」

「勝手に…って」

「それで、私たちも勝手に幸せになろうって思うの」


アルカンナは俺を見た。

でも、俺を見ているようで見ていない。そんなふうに感じた。


「ダンジョンで、傷ついたアランを見て、助けたいって…私、思ったんだ。それまでは聖女とか言われても、全然実感してなかったんだけど。助けなきゃって思った。これが私のやりたいことなんだって」

「アルカンナ…」

「だから、私もっとがんばって、みんなを助けるの!」


『だから、私もっとがんばって、みんなを助けるの!』


…『おとせか』の台詞だ。でも、ゲームじゃない。アルカンナが心から発したことだだった。

俺なんか、もうお呼びじゃないってことか。

俺のちっぽけな申し訳なさなんて、アルカンナにとっては取るに足らないことだ。だって、アルカンナは自分で前に進めるから。


「帰ってきたら、うちに招待させてくれ。大切な、友人として。」

「うん!」

「もちろん、バレリアナも」

「友人兼義妹として、ですわね。アランお義兄様」

「からかうなって…」


この後俺は、バレリアナに「今まで通りアランって呼んで」と頼み込んだ。


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