24.婚約発表イベント・その後
アラン・ギィズリードは自分の前世が日本の男子高生・新妻亜嵐だったこと、この世界が乙女ゲーム『おとせか』こと『聖女は世界樹の花を咲かせる』の世界であったことを思い出した。
明日は悪役令嬢との婚約を破棄し、聖女との婚約を発表する断罪イベント。
だがアランの推しは悪役令嬢の兄なのだ。
アランは推しを幸せにするため、そして自分も幸せになるために奮闘する!
さっきまでくつろいでいた部屋の隣、ロディの部屋に案内される。一番手前は応接室。その奥には小さな私室。そして奥に、よりプライベートな大きめの私室。その奥の私室に通された。
ロディの部屋に来るのは初めてではないけれど、奥の私室に入るのは初めてだ。
手前の私室は、私室とは言え公的な部屋だったんだな、と奥の私室に通された思った。手前の私室には美しい湖の絵や、飾り用の分厚い背表紙の本が並んでいるけれど、奥の私室には馬の絵や何かの化石が飾られている。少し子どもっぽいが、こちらのほうがロディの本当に好きな物なんだろうなという感じがした。
*婚約発表イベント・その後
「さっきは、急にすまなかった」
ロディはふわふわのソファに深く座り込んだ。ゆったりと身体を預けている。さすがのロディも少し疲れているのかもしれない。けだるげなロディも、眼福だ。
テーブルを挟んで向かいのソファに座った俺は、思わず前のめりになる。
「いえ…でも、あの。正直、今どういう状況なのか、よくわかっていません。俺とロディが、その…」
婚約、って。
かぁ、と顔が熱くなる。そんなことあるのか。俺は推しは眺めていたいタイプなのに。
「…ごめんね。でも、僕は本気だ」
「ほ、ほんきって…」
本気で婚約するんですか。
俺はぱくぱくと口を開けたり閉めたりした。
「あ!その…バレリアナに、何か言われましたか?」
俺は思いついて手を叩いた。
そうだ、バレリアナは俺とロディをくっつけようとしていた。それで、かわいい妹の願いをかなえようと…そういうことになったのか。
俺はようやく納得できる答えを見つけて、うんうんとうなずいた。
「バレリアナを安心させてあげたかったんですね。さすが、ロディ様はやっぱりお優しい」
「…ん?あぁ…」
ロディは首を傾げた後、微笑んだ。
「そういうことに、したいのかな?」
そういうことに、させてくれ。
なんかそうじゃない雰囲気をひしひしと感じているけれど…キャパオーバーだ。
「断固拒否されないということは、そういうことでいいのかな」
「ロディ様。これだけは言っておきます」
「うん?なんだろう」
「俺って、あなたのことを拒否できない人間なんですよ」




