23.婚約発表イベント
アラン・ギィズリードは自分の前世が日本の男子高生・新妻亜嵐だったこと、この世界が乙女ゲーム『おとせか』こと『聖女は世界樹の花を咲かせる』の世界であったことを思い出した。
明日は悪役令嬢との婚約を破棄し、聖女との婚約を発表する断罪イベント。
だがアランの推しは悪役令嬢の兄なのだ。
アランは推しを幸せにするため、そして自分も幸せになるために奮闘する!
な…んか、一瞬、すごい聞き間違いをした?気がする。
「え…と、ロディ様、」
驚いて傍らのロディを見上げると、ぐい、と腰を抱き寄せられた。ぴったりとくっつくことになって、俺は一気に頭に血が上ってしまう。
「ろ、ロディ様!」
ひぃ、近い!
近すぎる!顔が良すぎる!
にこっと微笑みかけられて、冗談ではなく腰が抜けそうになる。
待ってくれ!無理すぎる!!
「……アラン」
「おめでとう、ローディアン、アラン」
「おめでとう!」
祝福の声と、拍手。
「大好きなお兄様と幼馴染のアランが婚約なんて、こんなにうれしいことはありませんわ。安心して家を離れられます」
「ローディアン様、アラン様とお幸せに!」
バレリアナとアルカンナの声に、俺はぎこちなく頷いた。
*婚約発表イベント
それからの記憶は、正直あまりない。
食事会は終始お祝いムードで、みんなニコニコしていた。いいことだ。
バレリアナとアルカンナはその中でも特にうれしそうで、ふたり(俺とロディのことのようだ)のためにも、絶対にこの調査を完璧に終わらせます!と意気込んでいた。やる気になったなら良いことだと思う。
いや待て。…なんて?
俺はなんども状況を確認しようとしたが、その度にロディに至近距離から微笑まれ、見惚れてしまって追及できなかった。
なごやかな雰囲気で食事会は終わった。
「アラン、少し良いかな」
両親と兄たちと一緒に帰ろうとすると、ロディに呼び止められる。
「ギィズリード伯爵、夫人。もう少しだけ、アランと話をしたいのですが…。帰りは、馬車を出しますので」
「あぁ、かまわないよ。それと、もう義父と呼んでほしいな」
「…ありがとうございます」
俺の意志のないところで俺の処遇が決定したようだ。
俺はロディに手をひかれるままについていくことしかできない。
ていうか、手をつないんでるんですけど!!もう待ってくれ。頭も心臓もやばい。
ロディは自分の顔の良さというか、破壊力をわかっているんだろうか…。
くん、と少しだけ手を引くと、ロディは振り返って微笑んだ。
うぅ…顔が良くて、何も言えない…。




