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19.待つ者にできること

アラン・ギィズリードは自分の前世が日本の男子高生・新妻亜嵐だったこと、この世界が乙女ゲーム『おとせか』こと『聖女おとめは世界樹の花を咲かせる』の世界であったことを思い出した。


明日は悪役令嬢との婚約を破棄し、聖女との婚約を発表する断罪イベント。


だがアランの推しは悪役令嬢の兄なのだ。


アランは推しを幸せにするため、そして自分も幸せになるために奮闘する!


「アラン、明日の夜は空いている?」


俺の進路について打診された日から、ロディは毎日わが家に来るようになった。

勉強を頑張ると決めた俺のサポートをしてくれるのは、正直助かっている。

以前のように仕事を切り上げてまで来ることはなくなったから、その点は安心だ。夜遅くに来ることもあるから、そんな日は勉強の進み具合をチェックしてすぐに帰るだけになるけど、毎日チェックされると思うと手を抜けなくなるから勉強にも身が入る。


ロディの期待通りの成績であるとは言い難いだろうけど…この調子なら、卒業までにはある程度にはなるだろう。


*待つ者にできること


今日は珍しく早めに来たロディは、俺の課題を見て間違っている箇所を教えた後に軽食をつまみながら言った。


「特に予定はありませんが…」


明日は週末で、特に予定はない。

貴族の週末と言えばとにかくパーティだが、最近は王都にただよう不穏な雰囲気で自粛ムードが広がっている。

予定がないから、学園の図書館にでも行って勉強しようかと思っていたくらいだ。


「明日は王城で、アルカンナ嬢たちの壮行会なんだけど…」

「あぁ、父が出席すると言っていました」


いよいよだ。

これからアルカンナは、本当につらい旅に出る。俺にできることは、もう何もない。


「アルカンナもバレリアナも頑張っているのに、勉強ばかりしている自分が情けないです」

「そんなことはないだろう。国で待っている友人がいると思うと、きっとふたりもがんばれる」

「そうでしょうか…」


もともと、俺が魔王討伐についていくルートはないけど、実際にふたりを送り出すと思うと気が重い。俺よりも力を持っているとはいえ、ふたりとも俺と同い年の学生なのに。万が一のことなんか考えたくないけれど…。


「そんな顔をしないで。アルカンナ嬢もバレリアナも悲しむよ。…もちろん、僕も」


ロディは立ち上がって、俺の傍らに立った。俺の肩に手を置き、寄り添ってくれる。

伏せられた睫毛が長い。アイスブルーの美しく優しいまなざしが俺に向けられていると思うと、不思議と気持ちが安らぐ。


「それでね。バレリアナが、壮行会の後に内輪だけでささやかな食事会をしたいと言っているんだ」

「内輪だけで…ですか」

「そう。アランにも来てほしいと言っている」

「え?…いいんですか?」

「もちろん。主賓が呼びたいと言っているんだからね。どうかな?」

「それなら、もちろん出席します」

「良かった。ふたりも喜ぶよ」


ロディは安心したように微笑んだ。


「僕たちで、ふたりを励まそう。できるのはそれくらいだよ」

「…そうですね」


ロディの言う通りだ。

バレリアナも言っていたじゃないか。俺に、ロディを支えてほしいと。

俺ができることなんて本当に限られているけど、かわいがっている妹を送り出すロディの話し相手くらいはできる。

バレリアナが安心して旅立てるよう、笑顔で送り出そう。


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