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12.死のダンジョン

アラン・ギィズリードは自分の前世が日本の男子高生・新妻亜嵐だったこと、この世界が乙女ゲーム『おとせか』こと『聖女おとめは世界樹の花を咲かせる』の世界であったことを思い出した。


明日は悪役令嬢との婚約を破棄し、聖女との婚約を発表する断罪イベント。


だがアランの推しは悪役令嬢の兄なのだ。


アランは推しを幸せにするため、そして自分も幸せになるために奮闘する!


俺とロディの関係は…。

言い淀んでいると、ロディはぱっと前を向いた。


「ダンジョンが見えてきたよ!」


手綱を操って、ロディは馬を進めた。馬車にならんで、コンコンと馬車の窓をノックする。

それから中のバレリアナとアイコンタクトをして、手でダンジョンを示した。


あー…。

気を遣わせてしまった。

でも何て言えばいいんだ?もう将来の兄弟ではない。かつて同じ学園に通っていたから先輩後輩ではあるけど、それではあまりにも遠い。かといって友人かと言われると、それも違う気がした。


本当は、ロディは俺の推しだけど…。


でも、なんだか中途半端な関係で、ロディも接しにくいのかもしれない。だとしたら…婚約破棄しても推しを近くで見れるなんてラッキー!なんて思っていたのが申し訳ない。


おれはロディの後姿を見ながら、密かに反省した。ちょっと距離を置いた方がいいのかもしれない。


*死のタンジョン


「では、確認する。僕とアランが先に進むから、そのあとをアルカンナ嬢。そして最後はバレリアナに頼む。今日は時間の関係もあって、最高でも3階までしか進まないつもりだ。3階までの魔物はレベルも知能も低い。後ろから襲ってくるようなことはないと思う。魔物が現れたら、僕とアランで牽制し、アルカンナ嬢とバレリアナには近付けないようにする。その間にアルカンナ嬢が攻撃…という攻撃パターンで行こう。…問題ないかな?」

「はい、ありません」

「よ、よろしくお願いしますっ」

「しんがりはお任せくださいませ」


アルカンナはガチガチに緊張しているようだ。魔法の媒介となる小さなステッキをぎゅう、と握りしめている。


「アルカンナ嬢、そう硬くならないで。今日は肩慣らしだ。危険はないよ」


ロディが優しくそう言うが…。

正直この後どうなるかはわからない。

ゲーム通りオレが怪我をするのか、それともロディたちがパーティに加わったことによって俺の大怪我イベントは回避されるのか。怪我をした場合、俺と婚約していないアルカンナは俺をちゃんと癒せるのか。

いやそもそも大怪我をした時点でかなり痛そうだし…いやだけど…。


もちろんここまできて嫌ですとは言えない。俺は充分に注意を払いながら、前に進むしかないのだ。


ダンジョンの1階、2階は問題なく進んだ。

そしてここからだ。3階に上がる階段。ここで俺は…アランは襲われる。俺はみんなに気付かれないように周囲を今まで以上に警戒した。どんな小さな音も聞き逃さない。襲ってくる魔物がいたら、すぐに切る。アルカンナのステータスがゲーム通りに上がらない心配はあったが、さすがに死にたくない。


ところが、階段を登り切っても規格外の魔物は現れなかった。俺はほっと息をつく。

パーティメンバーが変わったことで、きっとストーリーが変わったんだろう。こうなったら普通にアルカンナのレベルを上げて帰るのがよさそうだ。


アルカンナはちゃんとついてこれているかな?


俺が後ろを振り返った時だった。

視界の端に黒い影が横切る。


「アラン!」


アルカンナが血相を変えて叫んだ。あぁ、また「様」が抜けている。バレリアナにまた怒られるぞ…。


次の瞬間。

ガツン、と強い衝撃が、俺を襲ったのだった。


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