10.これは…夢…?
アラン・ギィズリードは自分の前世が日本の男子高生・新妻亜嵐だったこと、この世界が乙女ゲーム『おとせか』こと『聖女は世界樹の花を咲かせる』の世界であったことを思い出した。
明日は悪役令嬢との婚約を破棄し、聖女との婚約を発表する断罪イベント。
だがアランの推しは悪役令嬢の兄なのだ。
アランは推しを幸せにするため、そして自分も幸せになるために奮闘する!
10.これは…夢…?
「ごめん、待たせたかなアラン」
「とんでもないです。ロディ様、わざわざご足労いただきありがとうございます」
「いや、こちらが言い出したことだからね。急にすまない」
いや~
今日も顔が良い俺の推し。
会うまでは色々ぐちゃぐちゃ考えてたけど、顔見るとどうでもよくなる。俺の推し。
推しが俺の家にいる。
というのも、先日バレリアナから受け取った手紙の件だ。ダンジョンに行く前に、まずは俺とロディで打ち合わせをしようという内容の手紙。俺はすぐに、ロディにすべて合わせる旨返事をした。それで、ロディが我がギィズリード家に来ることになったのだ。
「ロディ様。先日は…本当に、その、申し訳ありませんでした」
俺は改めて深く頭を下げる。そんな俺に、ロディはいや、とゆったり首を振った。
「…婚約破棄のことなら、残念だけど仕方がないよ。あの時は驚いたけど…実は最近、バレリアナはずっとふさぎこんでいたんだ。でもあの後からなんだかバレリアナが明るくなってね。吹っ切れたんだろう」
「私の力不足で…」
「いや、婚約者としてはうまくいかないけれど友人としては相性がいいということもあるだろう。それは見極められなかった我々が反省すべきことでもある。アランにも負担をかけてしまったね。きみを責めるようなことも言ってしまった。申し訳なかった」
「そんなまさか…ロディ様が謝るようなことは、なにも」
「じゃぁ…もう、この話は終わりにしよう。今まで通り。ね?」
顔を上げると、ロディが俺を見ていた。キラキラと輝くアイスブルーの瞳は、ずっと昔から変わらず優しい。俺はなんだか胸がじんわりと熱くなるのを感じた。
「俺は、弟にならなくてもアランのことが好きだよ」
10.これは…夢…?
好きだよ…。
好きだよ…好きだよ…。
「アラン?大丈夫?」
ロディの不思議そうな声で俺ははっと我に返った。
やばい。なんかめちゃくちゃ…夢みたいなことを言われた気がする…。いやいや、ぼーっとするな!しっかりしろ、俺!
「大丈夫です!ロディ様!はい!打合せしましょう!」
「ふふ…っそうだね」
バレリアナとの婚約を破棄したというのに、なんで俺はこんなに良い目に遭っているんだろう。もう本当に、死んでもいい…。
……いや、良くない。
これなら、まだまだロディの新規絵…じゃない、毎日の姿が見られる可能性があるじゃないか。死んでいる場合じゃない!
「アルカンナ嬢の聖女としてのパワーを伸ばせるよう、僕たちでしっかりサポートしていこう」
「はい!」
俺は推しの新規絵を一枚でも多く見るために生きることを決意した。




