表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/17

糸口

 フェクトはアンノウンを睨む。


「やべぇ……マジモンのビームかよ」

「扉が凍ってるから、氷属性のブレスだね」


 バッテリーを有効にする。電流が全身を流れ、一瞬だけ軽く痙攣するが、すぐに馴染む。


「ありがとうフェクトさん。降ろして」


 スマホを空中に浮かばせながらお願いをするとフェクトはゆっくりバミィを降ろす。


 離れた場所にいるアンノウンは様子見とばかりにこちらを睨んでいる。


 バミィはポーチから正方形のシールを取り出すとハンマーに貼った。それが燃えるとハンマーが炎をまとう。


 エンチャントシールと呼ばれるアイテムだ。そしてハンマーの尖った面を先にする。


「データにないモンスター。正直ランクがどのくらいかわからない。だからボクも戦う。素人連携なんてうまくいかないだろうから、ボクが先に仕掛けるからフェクトさんは様子見。いい?」

「了解」

「十分動きを見てから仕掛けに行ってね。フェクトさんの強さが頼りだから。それじゃ」


 Bランクのボスであればフェクトひとりにクリアしてもらう必要があるが、イレギュラーであれば二人で対処するしかない。出入り口となる扉は凍ってしまっている。選択肢は倒すか死ぬかだ。


「任せたよフェクトさん」


 バミィはハンマーを構えて正面から突っ込んだ。


 アンノウンは口を開き、ブレスを吐く。先ほどのような光線ではなく、火の玉のような小さなものだ。それでも人間からすれば上半身は吹き飛ばせる程の大きさではある。


 避ける。そして進む。


 怖い。怖いがそれが危機を最大限感知する。怯えて喰われるか戦うかなら断然戦う方だ。


 噛みつきに攻撃が切り替わる。覆いかぶさるような一撃がバミィを襲うが、右へ跳んで避ける。


「今!」


 地面に喰らいついて硬直したところを狙い、バミィはその頭を叩く。


 エンチャントによって爆炎が起こった。バミィはダメージを与えたかなぞ気にせず、鱗の隙間にハンマーの尖った部分を叩きつけ、爆発させながら首を登る。


 ハンマーは重く、己は軽く。重さを調整して、飛び上がり、引っ掛けるを繰り返しながら根本を目指す。


 金属音のような声を響かせ、首が振るわれる。バミィの体は投げ出され、そこに二本目の首が襲いかかる。


 バミィはポーチから釘を取り出すと下顎に向けて投げる。先端だけ刺さったそれに、ハンマーをひっくり返して向きを変えると叩きつけた。


 下顎が丸ごと爆発する。エンチャントの小規模な爆発ではなく、ダイナマイトでも爆発させたかのようなものだった。ネイルプロージョンという、強い衝撃と共に打ち付けられたら爆発するアイテムだ。


 バミィは最大限ハンマーと己を軽くし、爆風で吹き飛ばされるようにする。パワードスーツで多少の防御力は保証されている。


 体が地面に落ちる瞬間、重くしたハンマーを叩きつけて着地した。


 アンノウンを確認すると首が二つ、だらんと地面に接している。機能を失ったのだろう。


 この調子で残り七本、首の機能を停止させればいい。


 ──と思っていたのだが。


「げっ」


 生えた。破損した部分から新たな部位が生えて再生した。


 再び九つの首が持ち上がり、金属音を響かせる。


「きついなァ」


 ハンマーを構え直し、バミィは汗を拭った。


 ──それから三分。


 何度も首を破壊したが、破壊した先から再生するためキリがなく、エンチャントシールの効果が切れた。


「ぐっ」


 全力で稼働させていたバッテリーの中身がつき、襟部分のカバーが外れて排出される。発熱して煙を出しながらバッテリーが転がった。


 ポーチから再度エンチャントシールを出す。


 首が一本迫る。呑み込まれそうになる一瞬を狙ってエンチャントし、攻撃を──と思っていたが、目の前にフェクトが現れた。牙を掴んで首の動きを止める。


 あまりの怪力に驚く他ない。


「バミィさん。見ていてわかったことがあります」

「何?」

「それは……キリがないということです!」


 迫真の声で断言するフェクト。


「……あ、うん。そうだね」


 バミィが戦っていてもわかることだ。そこを強調されても困るしかなかった。


「生き物の急所は知ってるつもりですが木は別です」


 バキバキと音を立てながら首を捻り始めるフェクト。


「オラァ!」


そしてそのまま首をへし折って地面に叩きつけた。


「ダンジョン、モンスターに詳しいのはバミィさんの方です。だから俺が暴れ回るので動きを見て弱点を見つけてください」


 そう言うと首を踏み台にしてから他の首と戦い始めた。


 オーラのようなエフェクトを纏い、あらゆる首たちを足場のしつつ、殴る。


 バミィはフェクトが戦えそうであることを確認し、距離を取ることにした。


 あの巨大さと強さに圧倒されがちだが、冷静に観察する時間は確かに必要かもしれない。フェクトが何も見出だせなくとも、バミィなら何か気付くかもしれないし、何かしらギミックを見つけて攻略しなければならない以上、やれることはやるしかない。


 呼吸を整えながら新しいバッテリーを挿入し、バミィは考えることにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ