第96話 ムッツリ
「ご、ごめんっ。凜々夏、なんだ?」
「いいいいいえいえいえっ。わわわわわ私の方こそごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ……!!」
いやそんなに謝らなくても。ヘッドバンキングじゃないんだから。
あとそんなに大声出さないでくれ。俺たち超注目されちゃってる。
「え、何あれ……?」
「カツアゲ? 警察呼ぶ?」
「ポリスメーン!」
「ああああんな清純そうな子を狙うとは不届き千万……!」
俺たちじゃなくて、俺が注目されちゃってる!? しかも悪い方向に!?
いやいや、違うんですよ! 俺悪者じゃない! どっちかっていうと正義の味方!
ま、周りの視線が痛い……これ以上一ヶ所に留まるのはまずいな。早く移動しよう。
凜々夏も周囲の視線に気付いたのか、顔を真っ赤にして俯いてしまった。本当、魔法少女の時とは似ても似つかないよなぁ。
「凜々夏、こっち……!」
「ぁっ……」
凜々夏の手を引き、大通りから狭い路地に入る。あそこはさすがに人目に付きすぎる。
少しだけ走ると、かなり人通りは減った。ここなら、さっきみたいに騒がれることはないだろう。
「ふぅ……凜々夏、大丈夫か?」
「だっ、だだだだだだっ、だだっ、だ……!」
大丈夫じゃなさそうだ。うーん、やっぱり魔法少女姿になってくれないと話しが一向に進まないな。
けど、街中で魔法少女に変身するわけにもいかないし、どこかいい所は……お? カラオケ……仕方ない。ギリギリ人目はないし、入っちまおう。
「凜々夏、カラオケ入ろう」
「え!? あ、遊ぶ……んですか……? こ、コメットさん探しは……」
「それよりもまず、俺たちの空気をどうにかしないといけないだろ。あそこで一緒にぶちまけて、この関係をすっきりさせよう」
「ぶぶぶぶぶぶぶぶちまけ!? すっきり……!?」
ん? 俺、何か変なこと言った?
顔を真っ赤にして俯いてしまった凜々夏を連れて、カラオケ店に入る。
とりあえず二時間の枠を取り、個室に案内された。えっとここの店の防犯カメラは……あそこか。
防犯カメラの位置に物を置いて死角を作り、凜々夏には奥に座ってもらう。これでカメラには映らないだろう。
が、なぜかずっとかちこちになっている凜々夏。お行儀がいいのか、緊張しているのか、背筋を伸ばして自分のカバンを抱き締めていた。
「さて、凜々夏。早速だけど……」
「ま、待ってくだしゃぃ……! こ、こんなこと、ぉかしいですよっ。つつつつつ付き合ってない男女で、そんな……」
……何言ってんの? 例の件について話すだけなのに、なぜに男女の付き合いの話に?
あ、もしかしてキスの話をしたら……か、カップル関係になるかもって思ってるのか?
そりゃそうか。お互いの気持ちを確かめたら、そういう関係になる可能性は大いにある。半キスまでしちゃってるし。というか、世の中のカップルはそうやって誕生してるんだもんな。
でも……俺はそれを、是としていいんだろうか。
あのキスは、俺に対するものなのか。それともツグミに対するものなのか……。
「まあ確かに、話によってはそうかもしれないけど……」
「だ、だめっ……おおおおお友達同士で、そんな爛れた……!」
「いやいや。むしろちゃんと話すんだし、健全じゃない?」
「話せばなんでもしていいわけじゃないですよ……!?」
……?? なんか、話が噛み合ってないような気がする。
「待ってくれ。俺はこの間のキスの件で話がしたいんだ。凜々夏だと恥ずかしがるから、リリーカさんの姿になってもらえると助かるんだけど……ここなら一応人目はないしさ」
「…………………………………………ぁぅ……」
うおっ、頭から湯気!? だ、大丈夫か……?
「……死にたぃ……」
「いきなりなんで!?」
「ゎ、ゎ、ゎたし、とんだ勘違いを……穴があったら入りたい……」
ソファーの上で脚を抱え、落ち込んでしまった。これ、俺のせいじゃないよね?
脚を抱えたまま、凜々夏の体が光に包まれる。次の瞬間、凜々夏はリリーカさんに姿が変わった。
……あの、ロングスカートからミニスカになったから、思い切り中が見えてるというか白のおパンティが見えちゃってるというか……とにかく、脚を降ろしてくれると助かるんですが。
腕で顔を隠していたリリーカさんが、少しだけこっちをチラ見して……思い切り息を吐き、顔を上げた。
「い、いいぞ。あの時のこと……話そうじゃないか」
「う、うっす」
さすがリリーカさん。肝が据わったら、堂々としていらっしゃる。
「だからさっきの私の発言は忘れろ。私は普段あのようなことは考えていない。全部勘違いさせた、継武が悪いんだ」
「え? あ、はい……?」
……なんのこと?
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