第95話 人探し
とりあえず喫茶店に移動し、集まった面々を見渡す。
ケーキを美味しそうに頬張るキキョウさん。口についたクリームを拭うビリュウさん。まだ顔を背けてるリリーカさん。楽しそうにお絵描きしているリーファ。それを愛おしそうに見つめるキルリさん。
まあ、これだけ揃ってたらいいだろう。
「ツグミ、早速コメットちゃんの情報教えてちょ」
キキョウさんはフォークで俺を指し、ニカッと笑みを見せた。
「はい。まずは外見的特徴から。と言っても、魔法少女姿のものしかわかりませんが……髪はウェーブがかったショートボブ。髪色と瞳の色は同じ、淡い水色。背は小さく全体的に華奢で、軍服のようなものを着ています。年齢は恐らく14から15歳程度……かなり幼く見えました」
外見の説明をすると、ビリュウさんが脚を組んで首を傾げた。
「軍服……軍の人間ということかしら?」
「そうとは限らないでしょ。アタシら魔法少女の服なんて、イメージひとつで何にでも変えられるんだもん」
キキョウさんが適当に指を振る。服が七色に光り、次の瞬間には濃紺色のスク水姿に変わった。ご丁寧に、ちいちゃな胸には『ききょー』という文字も入ってる。てかなんで旧スク?
「ではキョウ様。魔法少女協会の人間でしょうか?」
「んー。アタシも何度か向こうに行ってるけど、そんな人は見たことないよ。ま、今はどこに所属しているかは考えずに、話だけでも聞こうじゃない」
どうぞ、と促すキキョウさん。俺も咳払いを一つして、続きを話す。
「続いて能力に関してですが、主な技はオーラを身に纏った突撃ですね。それ以外だと、纏った何かで殴ったり蹴ったり……すみません、それ以上の情報は見る前に消えてしまいました」
本当はもっと多種多様な攻撃方法が書いてあったのに……不甲斐ない。
正気を取り戻したリリーカさんが腕を組み、小さく呟いた。
「まるで、ツグミのようだな……」
「え。お……私ですか?」
そんな馬鹿な。俺はもっとお上品に戦ってるぞ。そんな突撃やらパワーしか芸がないみたいに言わないでくれ。
が、そう思っているのは俺だけみたいで……みんな深々と頷いた。
「突撃が得意ということは、スピードにも自信があるのでしょうね」とビリュウさん。
「パワーもそーとーでしょ」とキキョウさん。
「ツグミ、お馬鹿力、ます」とリーファ。おを付けるな。
『ソックリンヌ』とキルリさん。なに、ンヌって?
え、ええ……? そんなに似てる……かなぁ。納得いかない。解せンヌ。
憮然とした顔をしていると、ビリュウさんが立ち上がり扉へ向かった。
「情報は少ないけれど、無いよりましよ。まずはこの情報から人相書きを描きましょう。絵が得意な人を連れてくるわ」
そう、だな……元から何も情報が無かった所から考えると、一歩前進だ。
あとは、この魔法少女が何を目的に日本にやって来たのか。それを知れたらいいんだけど。
今は、面倒事じゃないことを祈るのみだな。
◆◆◆
ビリュウさんの連れてきた人は絵が得意ということもあり、俺の記憶の中にある魔法少女コメットの姿と瓜二つだった。
まあ、普段は素の姿で生活をしているだろうから、見つけるのは至難だろうけど。
今人相書きは、全国の魔法少女たちへ通達されている。コメットを見つけた者は、直ちに魔法少女協会へ連絡するように、と。それまでは通常通りの生活を送るようにとも。
「つっても、捜しちゃうよなぁ……」
「そっ、そそそそそっ、そうでしゅね……!」
場所は秋葉原電気街。俺と凛々夏は、一緒にコメットを探索していた。魔法少女の姿だと目立つからな。素の姿はカモフラージュだ。
なぜアキバかというと、リリーカさん曰く。
『魔法少女は良くも悪くもオタク気質な者が多い。もしかしたら秋葉原や池袋に現れる可能性があるぞ』
ということらしい。いくらなんでもそんな単純じゃないだろうけど、日本全国を捜すより明確な場所があった方がわかりやすい。
で、言い出しっぺの凛々夏がそこを担当することになったが……素の姿のこの子が、まともに人捜しをできるとは思えないってことで、俺に白羽の矢が立った。
「…………」
「…………」
正直……気まずい。あのキスの真意も聞けてないし、注意散漫で人捜しどころじゃないぞ。
やっぱ聞いた方がいいよな……? でもリリーカさんでさえ言い淀んでたのに、凛々夏がちゃんと話してくれるだろうか。
「「……あの……あ」」
ぐっ、しまった。ハモった……!
凛々夏は余計顔を真っ赤にして俯いちゃったし、こんなんで人捜しなんて上手くいくのかよ……。
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