第94話 ラブコメ的展開
無事に魔法少女コメットの情報を手に入れ、放課後に魔法少女の村に帰ってきた。ここ最近、向こうの世界より村にいる方が長い気がするな。その分落ち着くというか。
「ふぅ……ん?」
え、あれ? リリーカさん? なんで装置の近くに?
前髪をちょちょいと弄っていたリリーカさんだったけど、俺の姿を見た瞬間バッと顔を逸らされた。
「お、遅かったな。ままままま待っていたぞ」
「え? あ、はい。すみません……?」
待ち合わせなんてしてたっけ? それなら、教室から一緒に出ればよかったんじゃ……?
いや、無理か。あんなことがあった後で、いつも通りでいろって方が無理があるな。
リリーカさんがチラチラとこっちを見てくる。
もちろん俺も意識しちゃっていて……か、体あっつ。火照ってきた……!
目を合わせ、背け、また合わせ、逸らし……ど、動悸が激しくなってきたぞ。
「えっと、その……り、リリーカさん。聞いても……?」
「ひゃっ、はいっ……!」
いつも毅然としたリリーカさんにしては珍しく、背筋ピーンで直立した。
「き、聞きますけど……こ、こ、この間のアレって、どういう意味……ですか?」
「ああああああああアレ? アレってどのキスのアレのどれだ??」
「言ってるじゃないですか」
「あ」
ギュギュギュンッ──。茹でガニ……いや、茹でダコを超えるくらい真っ赤になった。頭の上から湯気みたいなものが揺らいでるぞ。
き……気まずい。何を話したらいいんだ。
チラリ……チラリ……チラ……チラ、チラ、チラチラチラ……。
「えっちな気配を感じるわ」
「「キャアアアァァァッ!?!?」」
びびびびびビビったぁ! ビックリしすぎて女の子みたいな悲鳴あげちゃったわ! ……いや今は女の子だから、間違ってはないんだけど。
腰を抜かして見上げると、じとーっとした目で見てくるビリュウさんがいた。
「びっ、ビリュウさん。いきなり声掛けないでくださいよ……!」
「ごめんなさいね、たった今こっちに来たばかりだったから。……ところで、何やら淫らな気配を感じたのだけれど、私も混ぜてもらえるのかしら?」
「混ぜねーけど!?」
「複数プレイ、バッチ来い」
「サムズアップすんな……!!」
あと淫らな気配ってなんだ! そんな空気一ミリも出しとらんわ!
「そんなっ。旦那様、私との蜜月の日々は遊びだったと言うの……!?」
「蜜月の日々なんて送ってないし、そもそも結婚してないだろ」
「もうお腹にはあなたの子がいるのに……」
「嘘つけ嘘つけ嘘つけ! 俺はまだ童貞だぞ!?」
「あなたが認知しないなら、私1人でも立派に育ててみせるわ」
頼むから話を聞いてくれ!?
相変わらず話を聞かないビリュウさんに頭を抱えていると……後ろから、とんでもない圧力を感じた。他でもない、リリーカさんだ。
「り、リリーカさん、怒ってます……?」
「別に。蚊帳の外の私には関係のないことだからな。ふんっ」
激おこじゃないですか。
俺とビリュウさんがこんなやり取りをして、やきもち(?)を焼くなんて……やっぱり俺のこと、好きなんだろうか。キスまでされて勘違いも何もないと思うけど……これが勘違いだったら、死ぬほど恥ずかしいぞ。
その時、ビリュウさんが今の状況を察したのか、リリーカさんに近付き小声で話し始めた。
「ねえ、もしかして……って……ミの……き……?」
「えっ!? いいいいいや、私は……!!」
「私……ゆる……複……人……いいわ……」
「そ、それ……倫理……どうかと……!?」
……なんの話をしているんだろう。今度は俺が蚊帳の外だった。
目まぐるしく顔色を変えているリリーカさんと、楽しそうに笑っているビリュウさんを横目に、転移室から外に出る。いい加減、ここに溜まってると他の人の迷惑だからな。
「んっ! ツグミ、ますっ!」
「お? リーファ、キルリさん」
俺たちが来るのを待っていてくれたのか、こっちに気付いた2人が駆け寄って来た。
抱き着いて来たリーファを抱き留め、手を握って来たキルリさんの頭を撫でる。
「ツグミ、お帰りなさい、です!」
「ただいま。いい子にしてたか?」
「適度に、ます」
「素直でよろしい」
適度にいい子ってなんだってツッコミは置いておこう。
相変わらずのリーファのワードチョイスに苦笑いを浮かべていると、キルリさんの頭がもぞもぞ動き出した。なんだ?
『おかえりなさし』
頭の上に、黒のオーラで作り出された文字が浮かび上がった。歪で、少し間違っているけど。
「えっ。キルリさん、それ……?」
『べんきょ がばった』
「そうですかっ。すごいじゃないですか!」
『わたし すごし えへん』
少し誇らしげに胸を張るキルリさん。いや、本当にすごい。異世界と地球じゃ言語体系がまったく違うのに、それを一から学んでここまで身に着けるなんて。元から頭がよかったんだろうな。
2人の頭をなでなで、なでなで。直後、背後の転移室が光ってキキョウさんが外に出て来た。
「およ? やっほー、ツグミ。ナイスタイミングだね。コメットの情報は手に入れた?」
「こんにちは、キキョウさん。はい、バッチリ……って言いたいところなんですが、ちょっと問題がありまして」
「問題?」
「友人が集めていたコメットの写真や動画、情報なんですけど……書き写している最中に全部消えちゃったんです」
最初はスマホがバグったのかと思った。いきなりノイズが走って、挙動がおかしくなったから。
と思ったら、次の瞬間にはコメットの情報がすべて消えていたんだ。俺のスマホで画面越しに撮った写真まで、全部。
残ったのは、手で書き残したほんの少しの情報のみ。幸い、特徴や能力はメモしていたから、それは消えなくて済んだ。
優里は絶望して泣き叫んでいたけど……ごめんよ。でも俺のせいじゃないんだ。……違うよな……?
「ふーむ……それも、魔法少女の力なのかもねぇ。詳細はわからないけど、特定の人物に関する情報を世界から消す、とか」
「そんなこと可能なんですか?」
「わかんないよ。でも魔法少女の力は全部解明されていないからね。あってもおかしくはないんじゃないかな」
確かに、キキョウさんの言う通りかもしれない。
ここまで徹底した情報規制……もしかしたら俺たち、とんでもないものを相手にしているのかも……?
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