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第89話 初めての……

 その後の事後処理としては。

 1つ目。MTuberに配信を止めさせる。

 2つ目。魔法少女協会日本支部の公式声明として、メディアやSNSで魔物を倒したと公言する。

 3つ目。メディアに気取られないよう、リーファと母親を魔法少女の村に連れ帰る。

 ここまでは誰にも見られず、迅速に対応できた……のだが。



「うーん……さすがに魔物をこのままここにいさせる訳にはいかないんだよねぇ〜」

「でっすよねぇ〜」



 渋るキキョウさんの言葉に、俺も全力で同意する。うん、そりゃそうだ。来させてもらっただけありがたい。

 いつもの喫茶店で正座をさせられてる俺と、後ろに隠れている母娘。周りにはキキョウさんとビリュウさん、リリーカさんはもちろん、他の魔法少女たちも集まっている。

 みんなの視線はもちろん、後ろの母娘に注がれている。大半の感情は、恐怖と憎悪だ。



「ツグミ……リーファ、怖い、ます……」

「────」



 そうだよな、怖いよな。でも周りのみんなも、2人のことが怖いんだよ。

 どっちの感情もわかる身としては……板挟み過ぎて、どうすればいいのやら。



「モモチ曰く、あの穴を通ってきたら魔物認定されたってこと……それが本当なら、2人まとめて処理したいのは山々なんだけど」



 チラリ。キキョウさんが俺に意味深な目を向けてくる。



「2人に手を上げるようなら、私がこの場で暴れます」

「ぬはははは! そーなったらこの村は全滅だね! 今のアタシ、『無敵』が使えないから!」



 楽しそうに笑うなぁ、この人。

 みんなの目が徐々に俺に向いてくる。間違いなく、不信感と疑惑の目だ。

 その中には、リリーカさんも混ざっている。ビリュウさんは中立なのか、目を閉じて黙って聞いていた。



「ツグミ、聞きたいことがある」



 と……リリーカさんが1歩前に出た。



「なんでしょう?」

「なぜ危険な真似をした? 下手をすれば死んでいたかもしれないんだぞ。あそこまでして、その2人を守った理由はなんだ?」



 リリーカさんの質問に、周りの目が俺に集中する。

 これは……話してもいいんだろうか。2人のプライバシー……いや、トラウマについて話すことになる。

 言い淀んでいると、背中をリーファに引っ張られた。



「ツグミ……リーファとママ、大丈夫、ます。……全部思い出した、です」

「いいのか? 2人の過去を話すことになるぞ」

「ツグミ、リーファたちの為に困ってる、ます。リーファたちなら大丈夫、です」



 母親もこくこくと頷き、同意する。

 ……2人が許してくれるなら、話すべきだろうな。

 ゆっくり、言葉を選んで、2人に刺激が少ないように話し始めた。

 2人が異世界で、長年どんな環境にいたのか。男たちにどんなことされて来たのか。……最終的に母親を殺され、リーファが闇堕ちしたことも含めて、全てを話した。



「これが、この2人を守る理由です。……私には、これ以上リーファたちに攻撃することも、ましてや殺すことなんてできません」

「そう……か……すまない。酷なことを言わせてしまった」



 リリーカさんも今の話を聞いて、唇を噛み締める。

 言葉を選んだとは言え、余りのおぞましさに口を手で覆う子や、泣く子まで現れた。

 それもそうだ。ここにいるのは、多感な年頃の少女たち。地獄の様相に、耐えられるはずもない。

 キキョウさんも真剣な顔で聞き、小さく頷いた。



「2人の背景はよくわかった。でも……リーファちゃんはともかく、リーファちゃんのママをこのままにする訳にはいかないよ」

「そんな……!」

「落ち着いて、ツグミ。リーファちゃんは闇堕ちした魔物とは言え、まだ生きている。もしかしたら、闇堕ちから戻るかもしれない。だけどリーファちゃんのママは、1度完全に死んでる。それが生きてるように動いてるのは、不条理だよ」



 くっ……13歳のくせに口が達者だな。完全に論破されてしまった。反論できん。

 リーファが母親を抱き締めて、震えながらも守ろうとしている。そうだ。いくら死のうと、魔物になろうと、意志を持って動いてるなら守ろうとするのが愛だろう。俺も応援するぞ。

 敵だらけの店の中で周囲に圧を放つ。やるならやってやる。俺は本気だ。



「──ツグミ、ストップ。なんとかなるかもしれないわ」



 手を挙げたビリュウさんに、みんなの視線が集まる。

 なんとかなる? 何を根拠に……?



「……本当ですか、ビリュウさん?」

「よく考えてごらんなさい。この子の存在を」



 この子? ……あ。

 腕に抱えられたミニバハが、ゲップと共に小さい炎を吐く。



「龍神バハムート。今は私に使役されているとは言え、元を正せばこの子は魔物よ。契約した魔物なら、この世に存在してもおかしくはない。ですよね、キョウ様?」

「ん……まあね」



 それなら文句ないよ、と言うように肩を竦めた。まさかそんな裏道があるとは。



「ただし! まだアタシは、リーファちゃんたちのことは危険視してるから。よって、しばらくはこの村から外には出しません。ここにいる間、複数人の魔法少女が代わる代わる監視すること。特にツグミにはバリバリ働いてもらうから、そのつもりで! はい、解散!!」



 キキョウさんが何度か手を叩き、その場にいた魔法少女たちを解散させる。

 まだ警戒しているみたいだけど、敵意や憎悪と言った感情は消え、同情と哀れみが大多数を占めていた。

 後には俺、リーファ母娘、リリーカさん、ビリュウさん、キキョウさんが残された。



「んじゃ、びりゅー。リーファちゃんたちのことは頼んだよ。魔物との契約は、びりゅー以上に詳しい人はいないからさ」

「はい、お任せください」



 去っていくキキョウさんを見送ると、リーファが俺の服を引っ張ってきた。



「ツグミ。リーファとママ、許された、ます?」

「ああ、もう大丈夫。2人ともここにいていいってさ」

「!! ママ!」

「────!」



 嬉しそうに、満面の笑みで抱き合うリーファたち。母親は首が無いから、全身で喜びを表現していた。



「ほら、リーファ。まずはお母様と契約をしないといけないから、向こうに行くわよ。やり方を教えるわ」

「妻、ありがと、ます!」

「────!?」



 首が無いのに言いたいことが伝わった。『妻!?』って言ってるな、多分。その辺も後日説明しますんで。

 3人が去っていき、俺とリリーカさんの2人きりになり……はぁ〜、つっっっかれた……。



「ツグミ」

「はい? ほげっ!?」



 おぉぅっ……! の、脳天に拳……!?



「な、何すんですか……!」

「無茶をした罰だ。まったく、危ない橋を渡って……」

「ぅ……す、すみませんでした……」



 リリーカさんの言う通りだ。今回は危なかった。限界を超えた先の力でしか対抗できないとか……本当、死ぬかと思った。

 頭をさすって痛みを和らげていると……リリーカさんが、抱き締めてきた。



「リリーカさん……?」

「……お前が傷付いたら、悲しむ人がいる。その事は……覚えていてほしい」

「……はい。俺、もう無茶は──」



 ──チュッ。……え……?

 急に視界いっぱいに、リリーカさんの顔のドアップが広がる。

 柔らかく、少し湿った感触が、口角ギリギリに落とされる。

 が……すぐリリーカさんは俺から離れ、背中を向けた。



「私は桜木町の復興の手伝いに向かう。またな、ツグミ」

「あ……」



 返事をする前に、超特急で行ってしまった。

 今、俺……キス、された……??

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