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第74話 そこはかとなく

 地上に降り、汽車道を通ってみなとみらいのビル群や遊園地を眺める。

 本当は夜景の方が綺麗なんだが、早朝も朝日のおかげで水面が反射し、独特の美しさを醸し出している。

 夜景も有名だが、俺は朝の景色も好きだ。人も少なくて静かだしな。



「どうだ? 上からも綺麗だけど、こっちから見ても良いだろ」

「……名状し難い、ます」

「難しい言葉知ってんな」



 翻訳してくれる宝石のお陰だとしても、そんな言葉が出てくるとは思わなかった。

 あっちを見たり、こっちを見たり、時にはチェーンの柵を乗り越えて水面を見たりと大忙しのリーファ。



「ツグミ、ツグミ。でっかい丸、ますっ」

「ああ、観覧車だ。あれに乗って、回りながらみなとみらいの街を見渡すんだよ」

「……乗る、ます? さっきのツグミみたいに、あれに登ればもっと見える、です。なんでそうしない、ます?」

「俺を基準に考えちゃダメです」

「??」



 リーファは首を傾げて、頭にハテナを浮かべる。

 ああ、そうか。リーファってこっちに来てから接してるのが、俺とリリーカさんとビリュウさんだもんな……基準がぶっ壊れてんだった。



「いいか、リーファ。俺は人類の中でも上澄みの力を持ってるんだ」

「ツグミが特別、ます?」

「ああそうだ。特別だ」



 男なのに魔法少女としての力が開花するくらいには、特別な才能を持ってると自負しています。もし俺が人類の基準と考えたら、この世は世紀末だ。



「他の人は俺みたいに300メートルもジャンプで登れないし、数十キロを数分で走れないし、魔法も使えないんだ。わかったか?」

「はい、ます。でも魔法を使えない、不便、です」

「あはは……まあ、人類には科学技術があるからな」



 魔法少女の使う魔法は、人類の技術に応用されていない。まだまだ解明されていないことの方が多いからな。俺の「クイーン・オブ・ハート――ストライク」も、どういう原理で出てるのか皆目見当もつかない。俺の技なのに。

 考えてみると恐ろしい力だよな、魔法少女の魔法ってのは。



「リーファ、魔法のない生活は考えられない、ます。でもそれと同じくらい、ツグミたちはかがくが大切、ます? あの建物も、観覧車を作ったのもかがく、ます?」

「ああ、そうだ」

「おぉ~……そこはかとなく感激、ます」



 建造物を見てパチパチ手を叩くリーファ。本当、子供みたいなリアクションをするよなぁ。可愛くていつまでも見ていられる。

 ほっこり眺めていると、急にリーファの動きが固まった。



「リーファ? ……あ」



 やべ、前から男の3人組が来た。まあ見るからに大人しそうな3人だから、絡まれたりすることはないだろうけど……リーファには関係ないよな。男は男だ。

 リーファは俺との約束を守り、フードを深く被り直して顔を伏せる。怖いのか、少し肩が震えていた。

 男たちはリーファのことをチラチラと見ている。彼女ほどの美貌だ。そりゃあ人目を引くに決まってる。俺だって逆の立場なら見ちゃうだろう。

 けどごめんな、今俺はリーファの味方なんだ。

 そっとリーファに寄り添い、男たちを睨みつける。

 まさか睨まれるとは思ってなかったのか、男たちは顔を背けて去っていった。

 美人が怒ると怖いんだぞー。逃げろ逃げろー。



「……リーファ、もう大丈夫だぞ」

「…………」



 去っていった男たちの背中を見て、リーファは首を傾げた。



「……男、怖くない……ます? 怒鳴らない、です?」

「え? まあ、怒る理由もないし……?」



 というか、出会いがしらでそんなことをする奴がいたら、それはもう不審者だ。即通報案件である。

 そんなことを気にするなんて……あ。



「向こうでの記憶を思い出したのか?」

「……まだわからない、ます。男見ると怖い、ます。でも……怒らないなら、平気かも……です」



 と、俺の手を少し強く握って来た。

 一体、向こうでどんな生活を送って来たんだ、この子は……?

 あ……もしかして、牢獄のような場所に捕まっていたあの夢は……本当に、リーファの記憶だったのか……? もしそれが本当だったら、あの時に……。

 嫌な考えが脳裏をよぎる。

 でも今はまだ、それを確認する手段がない。

 心のモヤモヤを払拭できないまま、俺とリーファは手を繋いで散歩を続けた。

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